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【4】初めての友人(4)

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 知ってしまったのは、偶然だった。

 フラミーニアはいつものように自作の人形に魔力を転移させ遊んでいた。つい興味本位でいつもより多く魔力を移動させてみると、人形から見える景色や音が魔力を通して感じることが出来たのだ。

「【魔力転移】ってこんなことも出来るんだ。ただ……ちょっと魔力を使いすぎちゃったな」

 短くなった髪の毛先を掬いながら、小さく息を吐く。

 自由に動き回る小さな人形を窓から外に出す。

「へぇ。この屋敷、こんなに広かったんだ。庭もお花が沢山咲いていてとても綺麗……」

 人形と連結した魔力から頭に映像が流れてくる。屋敷の周りを一周した後は屋敷の中に入った。
 沢山いる使用人にバレないよう、換気口に入ったり絨毯の下に隠れて時をやり過ごす。

 そして一際重厚感のある扉の中に入った。
 他の部屋とは明らかに意匠が異なる部屋。分厚い本が所狭しと並び、真ん中には大きな執務机が鎮座している。
 そこには髭を蓄えた初老の男性と、成人前と思われる男の子が居た。

「父上、本当にこの計画を進めるのですか」
「ああ。上手くいけば国家を揺るがす大発見になる」

 歳の異なる二人の男性はいずれも銀髪で鮮やかな緑瞳をしていた。
 見た目の特徴から、初老の男性は公爵家当主デレッダ公爵であり、男の子はフラミーニアの異母弟であると思い至った。

「まさか使用人が孕んだ子供が【魔力転移】を持って生まれるとは思ってもみなかった。やはり子は多いに越したことはないな。コルンバーノもよく覚えておきなさい」
「……その、異母姉はどうするのですか。魔法を有するのならば、もちろん代償もあるのでしょう?」

 デレッダ公爵は手にしていた羽根ペンを置くと、ゆったりと椅子に背を預けた。
 人形の魔力を通して聞こえてくる会話に、まさか自分が登場すると思ってもいなかったフラミーニアは体を硬くした。

「代償は"体の一部が退化する"ようだ。適度に休養を与えれば何も問題はない」
「異母姉を閉じ込めて【魔力転移】の実験をさせるなんて無理があるのでは? 異母姉とて一人の人間です。強制に従わせるのには限界があります」
「勿論説得はするがそれでも応じない場合は一本一本爪を剥ぐことも致し方ない。私の血を引いて世に生まれ落ちたのだ。唯一貴族のみに与えられる女神の祝福を、公爵家に還元することは当然の責務だ」

 実験。爪を剥ぐ。当然の責務。
 会話の単語が脳に張り付き、ぞわりと背に冷たい汗が伝った。

 机に肘をつき、鋭く威圧する視線に耐え難くなったコルンバーノが下を向く。

「魔力転移のメカニズムの解明ができたら、魔法界でのヒエラルキーが一変することになる。遠からぬ未来、代償を払わず魔法を行使出来るようになる日が来るかもしれないのだ」

 父の言葉は淡々として落ち着いている。まるで当たり前のことを説明しているかのように。
 皺を伸ばすように指で眉間を押し、再び前を向いた。

「魔力が安定する十八歳になるまでは、フラミーニアには今まで通り屋根裏部屋で過ごしてもらう。実験についてはコルンバーノも携わってもらうから、そのつもりでいなさい」
「父上、もし仮に実験が失敗に終わって異母姉の魔力が尽きてしまったら……勿論公爵家の娘として面倒を見るのですよね?」
「フラミーニアには一切令嬢教育を学ばせていない。貴族の娘として生きていくのは不可能だ。用済みとなれば、市井に降りて貰う」
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