【R18】御曹司とスパルタ稽古ののち、蜜夜でとろける

鶴れり

文字の大きさ
上 下
81 / 84

《65》とろける(2)

しおりを挟む
「俺と本当に結婚してもいいなら、サインして欲しい」

 コト、と置かれたボールペンを躊躇なく掴む。

「はい。もちろんです」

 どうして用意周到に婚姻届が用意してあるのかとか、離れていた期間の間の出来事とか、海外での生活はどうだったのかとか。
 話したいことはたくさんあったが、それよりも大和との強固な結びつきが欲しくてペンを走らす。
 鞄から印鑑を取り出し、朱肉をつけて印を押した。

「大和、私と結婚してください」

 花が咲いたようにふわりと微笑む。
 もう逃げない。もう迷わない。自信のなかったちっぽけな深谷瑛美はもういないのだ。

「躊躇わない、んだな」
「だって、ずっと大和のことだけを愛していました」
「一年も離れていたのに? 連絡すらせず、再会してほとんど会話もしていないのに? 俺が海外で最低な男になっていたらどうする?」
「どんな大和でも、愛せる自信があります」

 そう答える瑛美は真っ直ぐ視線を向けて、くしゃりと破顔した。

「それに、それを言うならお互い様ですよ。私がとんでもない悪女になっていたらどうするつもりだったんですか?」
「んー。再指導かな」
「あははっ」

 大和のスパルタ指導を思い出して、肩を揺らして笑う。この一年間がむしゃらになって頑張っていたけれど、大和ほど厳しい指導者はいなかった。

「瑛美は……俺がいない間、どうしてた?」
「ずっと大和のことを考えて、大和のことを想って……大和を追いかけてました」
「俺を追いかける?」
「大和の隣に立って、胸を張れる自分になりたくて」
「…………それで今は?」

 黒瞳が揺れている。そんな大和の憂いを断ち切るように、堂々とはっきりと言葉を紡いだ。

「世界中のみんなに、大和は私のものだーって言いふらしたいです! どんな美女でも、ギネス記録を持つ人でも、ノーベル賞を受賞した人でも、負けない自信があります」
「ふっ、なんだそれ」

 大和の表情が明るくなる。それを見ていると、大和が喜ぶ言葉をたくさん言いたくなる。

「大和のことを大好きな気持ちは誰にも負けませんし、誰であっても勝ちます!」
「すごい自信だな」
「大和を好きになって、こんなに変わりたいと思ったのは初めてでした。……私、大和じゃないと駄目、みたいです」
「もう俺から逃げるなよ。……というか逃さないけど。婚姻届は俺の手の中だからな。もう瑛美は実質俺の妻のようなものだ」

 指を絡めて手を握る。
 もう身も心も全て大和に差し出したい、そんな気持ちになる。

「大和に私のすべてを捧げます」
「うん。俺も瑛美にすべてを捧げるよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました

入海月子
恋愛
有本瑞希 仕事に燃える設計士 27歳 × 黒瀬諒 飄々として軽い一級建築士 35歳 女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。 彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。 ある日、同僚のミスが発覚して――。

恋に異例はつきもので ~会社一の鬼部長は初心でキュートな部下を溺愛したい~

泉南佳那
恋愛
「よっしゃー」が口癖の 元気いっぱい営業部員、辻本花梨27歳  ×  敏腕だけど冷徹と噂されている 俺様部長 木沢彰吾34歳  ある朝、花梨が出社すると  異動の辞令が張り出されていた。  異動先は木沢部長率いる 〝ブランディング戦略部〟    なんでこんな時期に……  あまりの〝異例〟の辞令に  戸惑いを隠せない花梨。  しかも、担当するように言われた会社はなんと、元カレが社長を務める玩具会社だった!  花梨の前途多難な日々が、今始まる…… *** 元気いっぱい、はりきりガール花梨と ツンデレ部長木沢の年の差超パワフル・ラブ・ストーリーです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される

永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】 「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。 しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――? 肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!

【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~

蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。 嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。 だから、仲の良い同期のままでいたい。 そう思っているのに。 今までと違う甘い視線で見つめられて、 “女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。 全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。 「勘違いじゃないから」 告白したい御曹司と 告白されたくない小ボケ女子 ラブバトル開始

処理中です...