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《65》とろける(2)
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「俺と本当に結婚してもいいなら、サインして欲しい」
コト、と置かれたボールペンを躊躇なく掴む。
「はい。もちろんです」
どうして用意周到に婚姻届が用意してあるのかとか、離れていた期間の間の出来事とか、海外での生活はどうだったのかとか。
話したいことはたくさんあったが、それよりも大和との強固な結びつきが欲しくてペンを走らす。
鞄から印鑑を取り出し、朱肉をつけて印を押した。
「大和、私と結婚してください」
花が咲いたようにふわりと微笑む。
もう逃げない。もう迷わない。自信のなかったちっぽけな深谷瑛美はもういないのだ。
「躊躇わない、んだな」
「だって、ずっと大和のことだけを愛していました」
「一年も離れていたのに? 連絡すらせず、再会してほとんど会話もしていないのに? 俺が海外で最低な男になっていたらどうする?」
「どんな大和でも、愛せる自信があります」
そう答える瑛美は真っ直ぐ視線を向けて、くしゃりと破顔した。
「それに、それを言うならお互い様ですよ。私がとんでもない悪女になっていたらどうするつもりだったんですか?」
「んー。再指導かな」
「あははっ」
大和のスパルタ指導を思い出して、肩を揺らして笑う。この一年間がむしゃらになって頑張っていたけれど、大和ほど厳しい指導者はいなかった。
「瑛美は……俺がいない間、どうしてた?」
「ずっと大和のことを考えて、大和のことを想って……大和を追いかけてました」
「俺を追いかける?」
「大和の隣に立って、胸を張れる自分になりたくて」
「…………それで今は?」
黒瞳が揺れている。そんな大和の憂いを断ち切るように、堂々とはっきりと言葉を紡いだ。
「世界中のみんなに、大和は私のものだーって言いふらしたいです! どんな美女でも、ギネス記録を持つ人でも、ノーベル賞を受賞した人でも、負けない自信があります」
「ふっ、なんだそれ」
大和の表情が明るくなる。それを見ていると、大和が喜ぶ言葉をたくさん言いたくなる。
「大和のことを大好きな気持ちは誰にも負けませんし、誰であっても勝ちます!」
「すごい自信だな」
「大和を好きになって、こんなに変わりたいと思ったのは初めてでした。……私、大和じゃないと駄目、みたいです」
「もう俺から逃げるなよ。……というか逃さないけど。婚姻届は俺の手の中だからな。もう瑛美は実質俺の妻のようなものだ」
指を絡めて手を握る。
もう身も心も全て大和に差し出したい、そんな気持ちになる。
「大和に私のすべてを捧げます」
「うん。俺も瑛美にすべてを捧げるよ」
コト、と置かれたボールペンを躊躇なく掴む。
「はい。もちろんです」
どうして用意周到に婚姻届が用意してあるのかとか、離れていた期間の間の出来事とか、海外での生活はどうだったのかとか。
話したいことはたくさんあったが、それよりも大和との強固な結びつきが欲しくてペンを走らす。
鞄から印鑑を取り出し、朱肉をつけて印を押した。
「大和、私と結婚してください」
花が咲いたようにふわりと微笑む。
もう逃げない。もう迷わない。自信のなかったちっぽけな深谷瑛美はもういないのだ。
「躊躇わない、んだな」
「だって、ずっと大和のことだけを愛していました」
「一年も離れていたのに? 連絡すらせず、再会してほとんど会話もしていないのに? 俺が海外で最低な男になっていたらどうする?」
「どんな大和でも、愛せる自信があります」
そう答える瑛美は真っ直ぐ視線を向けて、くしゃりと破顔した。
「それに、それを言うならお互い様ですよ。私がとんでもない悪女になっていたらどうするつもりだったんですか?」
「んー。再指導かな」
「あははっ」
大和のスパルタ指導を思い出して、肩を揺らして笑う。この一年間がむしゃらになって頑張っていたけれど、大和ほど厳しい指導者はいなかった。
「瑛美は……俺がいない間、どうしてた?」
「ずっと大和のことを考えて、大和のことを想って……大和を追いかけてました」
「俺を追いかける?」
「大和の隣に立って、胸を張れる自分になりたくて」
「…………それで今は?」
黒瞳が揺れている。そんな大和の憂いを断ち切るように、堂々とはっきりと言葉を紡いだ。
「世界中のみんなに、大和は私のものだーって言いふらしたいです! どんな美女でも、ギネス記録を持つ人でも、ノーベル賞を受賞した人でも、負けない自信があります」
「ふっ、なんだそれ」
大和の表情が明るくなる。それを見ていると、大和が喜ぶ言葉をたくさん言いたくなる。
「大和のことを大好きな気持ちは誰にも負けませんし、誰であっても勝ちます!」
「すごい自信だな」
「大和を好きになって、こんなに変わりたいと思ったのは初めてでした。……私、大和じゃないと駄目、みたいです」
「もう俺から逃げるなよ。……というか逃さないけど。婚姻届は俺の手の中だからな。もう瑛美は実質俺の妻のようなものだ」
指を絡めて手を握る。
もう身も心も全て大和に差し出したい、そんな気持ちになる。
「大和に私のすべてを捧げます」
「うん。俺も瑛美にすべてを捧げるよ」
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