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《47》ほんの少しの自信(7)

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「瑛美起きて」

 大好きな人の声に呼ばれて、意識を覚醒させる。
 なんだか体が重くて、寝起きは良いほうなはずなのに二度寝をむさぼりたくなってしまう。

「やまと……」
「おはよう。そろそろ起きないと会社に遅れるぞ」

 ゆっくりと体を持ち上げて時間を確認すると、確かにそろそろ支度を始めないと始業時間に遅れてしまう。

「うん……良い眺め。でも時間がないときに見るのは目に毒だなぁ」
「ん? ……あぁあっ!」

 胸を曝け出していたことに気がついて、慌てて布団を抱きかかえた。
 今まではずっとサラシを巻いていたから、油断してしまった。

「まじまじと見ないでくださいっ!」
「いや見るだろ、普通。こんなに綺麗なのになんでそんなに見られたくないわけ? むしろ見せつけても良いくらいだと思うんだけど」

 大和の綺麗な顔に枕を押しつけながら、瑛美は過去の嫌な記憶を白状した。

「胸が大きくて『乳深谷』ってあだ名をつけられて馬鹿にされてたんです……っ!」
「なんだそれ。そんなこと言う馬鹿の口、縫いつけてやりたくなるな」
「もういいんです。それに、大和にしか、見せないし……」
「確かにそうだな」

 大和が枕ごと覆いかぶさってきてぎゅうっと力強く抱きしめられる。

「それに名字なんてすぐ変わる。そうしたら、もう何も悩む要素なんてなくなるから」
「みょう、じ……」
「うん。清澄になればいい」

(それ、って……)

 首まで真っ赤になっていく。
 枕の端から見える大和の眼差しが、真剣さを物語っていて、更に熱が高まった。

 遠回しの言い方だが、瑛美に大和の本意はよく伝わった。

「いつか結婚しような、瑛美」

 蕩けるような口づけを交わす。
 好きな人から結婚の約束をしてもらえるなんて、奇跡みたいな確率だ。瑛美は思わず涙ぐんでしまった。

「ごめん。急いでる朝にする話じゃなかったな。まぁだけど、俺の意思は変わらないから」

 愛おしそうに微笑んで、目尻の涙を拭ってくれた大和に抱きつく。

「大好きですっ」
「俺も大好きだ」

 昨夜何度も交わした言葉を、確認し合うように伝えた。
 名残惜しそうに、最後にもう一度だけ口づけをして、会社へ向かう準備を始めた。

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