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《40》おめかしは女の武器(4)

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「瑛美? なんでここに……?」
「わぁ、ひぃちゃんと瑛美ちゃん。振袖可愛いね~」

 普段下ろしている前髪を上げていて、精巧な顔立ちが露になった大和が格好良い。直視できなくて思わず視線を逸らしてしまった。

「私が瑛美を連れてきたの。このパーティーいつも暇だから」
「ちゃんと社長令嬢として仕事しろよ」
「嫌よ。毎回息子はどうだ、孫はどうだって紹介されて、断るのも大変なんだから」

 ひかりと大和が言い合っていると、文太郎に瑛美の腕を取られた。どうやら袖の文様を確認したかったらしい。

「檜扇の文様なんだね。瑛美ちゃんって古風な柄がとっても似合う。色もどの濃淡でも似合う肌をしているし」
「ありがとうございます、」

 ひかりがいる手前、褒められると多少の気まずさが生じる。

「今日は髪まとめちゃったんだー。僕的には瑛美ちゃんは編み下ろしてるのが一番だと思うな」
「文ちゃんっ!」

 瑛美ばかりを見つめる文太郎を咎めるようにひかりが声を挙げた。

「私も振袖着ているんだけど……っ」
「ひぃちゃんはいつも可愛いよ」

 ひかりをさらりと見て柔和に微笑む。瑛美とは違った雑な扱いに、ひかりは頬を膨らましていた。

(私いないほうがいいかな……)

 存在を消すように大和にそっと近寄った。ぐっと強く肩を引き寄せられて、体が密着する。

「俺たちちょっと向こう行ってくる」

 一言そう告げてさっさとその場を後にした。
 壁際に置かれていた椅子に並んで腰かける。

「せっかくのクリスマスイヴなのに、デートにも誘えなくてごめん」
「いえ。きっと着付けのお仕事だろうって思っていましたから」
「寂しい思いをさせていないか?」
「はい。それに最近は勉強漬けでしたから」
「頑張ってえらいな、瑛美は」

 温かくて大きな手が瑛美の頬を包む。じんわりとした熱に包まれて、多幸感が沸き上がった。

「パーティーの後って、お仕事ありますか?」
「……ない、けど」
「じゃああの……」

 なんて言おうか頭の中を逡巡する。なんとか言葉を絞り出した。

「二人きりに、なりたい、です」

 ざわざわとした会場の騒音にかき消されてしまいそうなか弱い声。だけど、大和はしっかりと聞き取ってくれた。

「俺も」

 そう微笑む大和の漆黒の瞳が獰猛に光った気がした。

「用は済ませたし、もう帰ろうか」
「え、でもひかりたちが……」
「いい大人なんだから放っとけばいい。俺が我慢できそうにないんだ、瑛美」

 欲情を含んだ声で囁かれて、下腹部がずくんと反応したのがわかった。

「行こう」
「……はい」

 差し出された大和の手をしっかりと握り返した。
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