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《39》おめかしは女の武器(3)
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「ところで、ひかりの好きな人ってどの人?」
こそこそと耳打ちをして、ひかりの指した方向へ視線を向ける。
そこには同じ年代の男性が二人。男性の第一礼装である羽織袴を着て、グラスを片手に談笑をしている――
「えっ? 大和と、文太郎さん……?」
「瑛美、文ちゃんのこと知っているの?」
「文ちゃん?」
お互いポカンとして顔を見合わせる。
「私と大和くんと文ちゃんは幼いころから幼馴染なの。家も近かったし、私は兄弟がいないから、よく遊んでもらっていたの」
「そう、だったんだ。ということは、ひかりの好きな人って文太郎さん?」
「ぅん……」
頬に手を添えながら目を伏せるひかりは、完全に恋する乙女だった。
「瑛美も大和くんと付き合っているんでしょう?」
「うん、実はそうなんだ」
「大和くんから聞いていたよ」
今度は瑛美が頬を染めた。胸を張って言えるようになったら、ひかりには自分の口から報告するつもりだった。
「黙っててごめんね。大和の彼女だって胸を張れるようになってから、ひかりに言いたかったの」
「それはそれで瑛美らしいけど、もっと自信を持っていいと思うよ。瑛美は私の自慢の友達だから」
「えへへっ。ひかりに言われるとすごく嬉しい」
顔が緩みそうになる。完璧な美女であるひかりにそう言われるとは思ってもみなかった。
「文太郎さんに声かけなくて良いの?」
「今は挨拶しているみたいだから。邪魔したくないし、落ち着いたころに行こうかな」
「そっか。そのほうが良いね」
「じゃあひとまず腹ごしらえをしようか!」と二人は意気揚々とビュッフェコーナーへ向かった。
こんな豪華な食事なんて見たことがない。キャビアやフォアグラなどの、テレビや雑誌で見るような高級食材が使われており、野菜の飾り切りも美しくて食べるのをためらってしまうほどだった。
「こんな贅沢をして、罰が当たったらどうしよう……っ」
「そんなことないから。大丈夫よ」
給仕係の人に取り分けてテーブルまで運んでもらった。カトラリーを使って食事を始める。
(ナイフとフォークって、これで使い方合ってるよね?)
内心ひやひやとしながら食事をする。
マイクを持って誰かが話し出したときは食事を中断して話を聞き(実際は聞いているふりだけれど)、それが終わると各々自由に食事をしたり会話を楽しむ。
格式のあるクリスマスパーティーだが、内容は思っていたよりも自由でほっと安堵した。
しっかりとデザートまで平らげる。振袖を着ているからお腹が締めつけられてあまり食べられないと思っていたが、意外とすんなりと胃に収まった。着付け師の腕が良いからかもしれない。
「あ。終わったみたい」
大和と文太郎が壁際で談笑している。挨拶回りがようやく終わったようだ。
「私、待ってたほうが良い?」
「ううん。できたら一緒に来てほしい……」
「わかった」
席を立ち、大和たちのいるほうへと向かう。
こそこそと耳打ちをして、ひかりの指した方向へ視線を向ける。
そこには同じ年代の男性が二人。男性の第一礼装である羽織袴を着て、グラスを片手に談笑をしている――
「えっ? 大和と、文太郎さん……?」
「瑛美、文ちゃんのこと知っているの?」
「文ちゃん?」
お互いポカンとして顔を見合わせる。
「私と大和くんと文ちゃんは幼いころから幼馴染なの。家も近かったし、私は兄弟がいないから、よく遊んでもらっていたの」
「そう、だったんだ。ということは、ひかりの好きな人って文太郎さん?」
「ぅん……」
頬に手を添えながら目を伏せるひかりは、完全に恋する乙女だった。
「瑛美も大和くんと付き合っているんでしょう?」
「うん、実はそうなんだ」
「大和くんから聞いていたよ」
今度は瑛美が頬を染めた。胸を張って言えるようになったら、ひかりには自分の口から報告するつもりだった。
「黙っててごめんね。大和の彼女だって胸を張れるようになってから、ひかりに言いたかったの」
「それはそれで瑛美らしいけど、もっと自信を持っていいと思うよ。瑛美は私の自慢の友達だから」
「えへへっ。ひかりに言われるとすごく嬉しい」
顔が緩みそうになる。完璧な美女であるひかりにそう言われるとは思ってもみなかった。
「文太郎さんに声かけなくて良いの?」
「今は挨拶しているみたいだから。邪魔したくないし、落ち着いたころに行こうかな」
「そっか。そのほうが良いね」
「じゃあひとまず腹ごしらえをしようか!」と二人は意気揚々とビュッフェコーナーへ向かった。
こんな豪華な食事なんて見たことがない。キャビアやフォアグラなどの、テレビや雑誌で見るような高級食材が使われており、野菜の飾り切りも美しくて食べるのをためらってしまうほどだった。
「こんな贅沢をして、罰が当たったらどうしよう……っ」
「そんなことないから。大丈夫よ」
給仕係の人に取り分けてテーブルまで運んでもらった。カトラリーを使って食事を始める。
(ナイフとフォークって、これで使い方合ってるよね?)
内心ひやひやとしながら食事をする。
マイクを持って誰かが話し出したときは食事を中断して話を聞き(実際は聞いているふりだけれど)、それが終わると各々自由に食事をしたり会話を楽しむ。
格式のあるクリスマスパーティーだが、内容は思っていたよりも自由でほっと安堵した。
しっかりとデザートまで平らげる。振袖を着ているからお腹が締めつけられてあまり食べられないと思っていたが、意外とすんなりと胃に収まった。着付け師の腕が良いからかもしれない。
「あ。終わったみたい」
大和と文太郎が壁際で談笑している。挨拶回りがようやく終わったようだ。
「私、待ってたほうが良い?」
「ううん。できたら一緒に来てほしい……」
「わかった」
席を立ち、大和たちのいるほうへと向かう。
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