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《26》どっちのペナルティ?(4)

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 サラリとした肌触りのシーツが心地良い。
 全身がぽかぽかと温かくて、ずっとこのままでいたくなる。

 ゆっくりと目を開けるとそこには整いすぎた顔があって、その後光がさしたかのような眩しさにとっさに手のひらで両目を覆った。

「おはよ。今日は逃げられなくてよかった。……瑛美どうした?」
「いえ何もないです……おはようございます……」

 美形が心臓によくないというのは、まさにこのことを指すのだろうな……なんて思いながら指の間から大和を窺う。
 寝癖がついた黒髪を無造作に掻きあげる仕草ですら、うっとりするほどの大人の色気を纏っている。

(こんな素敵な人が私のことを好き、って……)

 今でも信じられないが、昨日の告白はしっかりと脳と身体に覚えこまされた。

(私も、自信をもって好きって言いたい。堂々と、隣に立ちたい……)

 やる気に似た力が胸の奥から湧き上がってくるのを感じた。

「あの、大和にお願いがあるのですが」
「ん?」
「着付けの本とか指南書とか、おすすめを教えてほしいです」
「あぁ、それならもう使わないのがあるから、俺のあげるよ」
「良いのですか?」
「もちろん。生徒が学ぼうと頑張っているのを、拒む先生は居ない」

 えらいなとでも言うように、頭をわしゃわしゃと撫でられる。
 瑛美は今の気持ちを忘れないように、覚悟を示すように口にした。

「私、自信を持ちたいです。私にできることをとにかくやってみます」
「良い心がけだな」

 じんわりと涙がせりあがってくるような感覚をぐっとこらえる。

「そうしたら……大和の隣に立つ勇気ができたら、私から告白しても良いですか?」
「うん。待ってる。だけど早めにな」
「ふふっ。それは期限厳守じゃないんですね」
「人の気持ちに期限なんてないからな」

 会社では「締切! 時間厳守!」が口癖の鬼部長なのに、二人きりになると甘くなる。それが嬉しくて少しこそばゆい。

「もう金曜日の夜だけの恋人なんて無理だ。限定じゃなくて、ちゃんと俺の彼女になってほしい」
「でも……良いのですか? 私、こんなんですけど……」

 優柔不断でうじうじ言っているにもかかわらず、変わらず好意を向けられて素直に嬉しい。顔を伏せつつも、内心は心臓が爆ぜそうになった。

「俺が我慢ならない。他のやつにとられたくないし。だから瑛美は俺の恋人な」

 慈しむように頬を撫ぜられてきゅうっと胸がときめく。

「わかりました。でも誰も私なんてとらないと思いますけど」

 そういうと何故か顔をじっと見つめられながら溜め息をつかれた。

「瑛美は本当にわかってない」
「何をでしょう……? 着物の知識なら、これからちゃんと勉強するので」
「そういうことじゃない。……あ、そうだ。瑛美今日時間ある? 五階で展示会をやっているんだ。着物や帯はもちろん、小物とか着付け道具の販売もあるはず。職人も来ているし、勉強になると思うんだ」
「楽しそう、行ってみたいです!

 大和の提案に喜んで起き上がる。眠っている間にサラシが緩んで、胸元がはだけそうになったのをとっさに腕で隠した。

「あぁ残念。見えそうだったのに」
「~~~っ! へんたいっ」

 大和の顔に枕を押し当てて、寝室から抜け出した。
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