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《23》どっちのペナルティ?(1)

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 お互い着物を脱いで下着姿になり、広いベッドの淵に腰掛ける。やっぱり胸は見られたくなくて、サラシは巻いたままだ。
 そんな瑛美の気持ちをおもんぱかってか、大和は瑛美を膝の上に乗せながら優しく囁く。

「サラシは瑛美が取っても良いと思ったときに取ればいい。俺はどんな形でもどんな傷があっても、瑛美への気持ちは変わらないから」
「私への気持ちって……」
「好きに決まってるだろ」

 さも当然のように言う大和に充てられて、顔が真っ赤になった。

「好きって、そんなこと、今まで一言も……」
「好きな人以外を抱くわけないだろう。俺がそんな遊び人に見えた?」
「そんなことはないですけど。でもそれが私だなんてにわかに信じられないです。会社でもそんな素振りもなかったですし」
「会社で部下に手つけられるわけないだろ。着付けの入会名簿に瑛美の名前を見つけたときは、チャンスだと思った。強引に担当講師の座を取ったんだからな」

 瑛美の波打った髪を優しく耳に掛け、頬に唇が落とされる。

「私の匂いが好きだからですか?」
「きっかけはそうだな。前に席が隣同士だったことがあるだろ。そのときに瑛美が隣にいるのがなんか居心地良く感じたんだ。あとは必死に仕事に食らいつく姿や、俺へ言い返したいのにぐっと唇を噛んで耐え忍んでいる姿が可愛くて」
「そ、そんなに前から、ですか?」
「前からもっと近づきたいとは思ってた。でも周りの社員の手前、態度を変えることなんてできないし、もしセクハラやパワハラになったらどうしようって」
「ふふっ、大和でもそんなこと考えたりするんですね」

 なんでも完璧にそつなくこなす印象の大和が、まさかこんなに尻込みしていたなんて。想像がつかなくてクスクスと笑ってしまった。

「瑛美にとって俺はどう見えてる?」

 瑛美の顔中にキスをしていた大和は、焦げ茶色の瞳をじっと覗き込んだ。

「会社での厳しい顔と、教室での品のある顔、それぞれ違っていて……でもどれも非の打ちどころがなくで。まさにパーフェクトな人という感じです」
「全然完璧じゃないけど……今だって瑛美に逃げられたらどうしようって、そんなことばっかり考えてる」
「そんな、嘘」

 くつくつと笑って、大和の瞳をじっと見つめる。

「今からするのに、ですか?」
「体じゃない。俺は瑛美の心が欲しいって言ってる」

 じわじわと温かいものが瑛美を包んでいく。甘くて幸せで、少しだけ苦しい何かに浸りながら、そっと目を伏せる。

「私、自分に自信がないんです。見た目もそうですし、中身……性格とかメンタルとかも、全部。だけど」

 勇気を出して顔をあげる。至近距離にある黒い双眸を見つめて、はっきりと意思を伝えた。

「大和が私のこと、たくさん……あ、あいして、くれたらっ。自信がつく、かもっ……」
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