【R18】御曹司とスパルタ稽古ののち、蜜夜でとろける

鶴れり

文字の大きさ
上 下
4 / 84

《4》地味アラサー女は穏やかに過ごしたい(4)

しおりを挟む
「では本日は初回ですので長襦袢ながじゅばんの着方と着物の着方をお教えします」

 おろおろと視線が泳いでしまう瑛美をよそに、淡々と授業が進んでいく。

 大和の指導はわかりやすい。装飾語を省き、簡潔な言葉で説明してくれるのですんなりと頭に入っていく。
 会社で指導してくれる時は威圧感があってただただ怖かっただけなのに、着付け教室では終始穏やかで物腰柔らかい。少しずつ瑛美の緊張が解けていく。

衣紋えもんと言って、女性はうなじ部分に空白を作ります。およそ指四本分の隙間が美しいとされています」
「襟合わせは全て左側が上です」
「長襦袢はしわなく身にまとわせて。長襦袢が乱れていると、上にまとう着物も乱れてしまいます」

 和室の壁の片一面が全て鏡になっており、自分の着姿を確認しながら教わった通りに手を動かしていく。

「次に着物を着ていきましょう。女性と同じように着付けていくので、手の動きをよく見てください。一緒にやりましょう」

 大和はそう言って男帯をほどき、腰に結ばれていた紐を解いた。
 もちろん男性も下に長襦袢を着ているのだが、襟合わせから除く肌が艶めかしくて。指導を受けているにもかかわらずドクンと胸が高鳴った。
 きっちりと着こなされた長襦袢の上からでも、大和の猛猛しい体つきがわかる。

(今まで全く意識したことなかったけど、意外と筋肉ある……ってだめだめ、集中しないと!)

 邪念を振り払うように軽く頭を振る。

「裾を合わせた後は腰紐を結びます。この紐一本で着物の全てを支えることになるので、しっかりと強く結びます。そうしないと緩んで着物がズルズルと脱げていきますからね」

 大和の見本通りに腰紐をあて、後ろへ回し、交差して引き締める。

「本来は片なわ結びという結びをするのですが、今日は一回目なので普通に蝶結びにしましょう。まず一度自身で着てみることが大切ですから」
「えっと……あっ」

 着物は意外と重量があって、結んでいる最中に紐が緩んでしまう。

「焦らずに。ここで交差した紐を一度手で押さえて。そうするともう一方の手は放しても緩みません……そう上手」
「ありがと、ございます……」

 手が触れて至近距離で目が合って、顔が熱くなった。
 なんだか頭もクラクラしてくる。

「瑛美さん?」
「あれ……大丈夫、です……」

 足がもつれてふらついてしまい、大和の長い腕に支えられる。なんだか地震が起きたように、ぐらぐらと視界が揺れている。
 なぜだろう。疲れが溜まっているのだろうか。慣れない着付けに体が追いついていないのだろうか。

「……ちょっと失礼」

 長襦袢の襟元に指をかけ、緩められる。のぼせた頭では拒むこともできず、ただぼうっと大和の男らしい喉仏を見つめていた。

「きつく締めすぎだ、馬鹿」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

クリスマスに咲くバラ

篠原怜
恋愛
亜美は29歳。クリスマスを目前にしてファッションモデルの仕事を引退した。亜美には貴大という婚約者がいるのだが今のところ結婚はの予定はない。彼は実業家の御曹司で、年下だけど頼りになる人。だけど亜美には結婚に踏み切れない複雑な事情があって……。■2012年に著者のサイトで公開したものの再掲です。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される

永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】 「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。 しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――? 肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!

甘い束縛

はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。 ※小説家なろうサイト様にも載せています。

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...