心霊現象相談事務所

藤野 朔夜

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春、出会い、そして……

第三章 ②

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  村越勇は、突然の地震に驚いていた。が、直後にかかった放送に、手際が良すぎねぇか?と疑問を持つ。
  しかし、他の生徒や教師、保護者たちが何の疑問も抱かずに、体育館へと移動をはじめてしまい、それに従うしか術はなかった。
  地震の場合の避難は、体育館等の屋内で良かったのか?と疑問を抱きながらも、ゆっくりとその場から皆について体育館へと向かう。
  自然とゆっくりになる足が、勇を最後尾にして行った。
  勇を追い抜かしていく人々は、何の疑問もなく動いている。我先に、と言う者も出ず、速やかに移動は行われた。
  体育館に入った勇は、とりあえず扉付近に待機する。
  携帯で調べた者たちが、疑問を上げているが、それよりも勇は再度扉が開き、入って来た生徒へと目を吸い寄せられていた。
  彼は、何かを窓へと飛ばし、暫くするとその何かは発光して消えた。
  何だ?勇は疑問を浮かべたまま、彼を凝視してしまった。
  ふと、彼がこちらを見て微笑んだ。
「村越勇君だだよね?一緒に来てくれるかな?」
  簡単に、彼の口から自分の名前が飛び出して、勇は疑問に目を見開く。
「あんたは……」
  それきり黙ってしまう。あきらかに上級生と分かる彼へ、この言葉遣いはまずかったか、とは思うものの、どうしようもない。
「うーん、説明すると長くなるから、できればここを出てから説明したいかな。あ、そうそう。沙久羅さんについて、わかるかもしれないよ」
  純は、勇が動いてくれるだろうと確信を持って、彼の母親の名を口にする。
  勇は更に目を見開く。
「行きます」
  母の事がわかるかもしれない、という言葉は、本当に彼を動かした。
  すぐに純の傍へと彼は移動してくれる。
  純は、ホッと安堵に息をつく。ここで時間を取られたのでは、意味がないのだ。
「ありがとう。じゃあ、行こうか」
  そう言って、勇を連れて体育館から出る。
  出た時に、勇に少し待ってもらい、扉への最後の呪符を張って、力を注ぎ、結界を完成させる。
「さっきも、窓にやってましたよね、それ何ですか?」
  勇は率直に疑問を純にぶつける。
  純は勇を促し、校庭へと向かいながら答える。
「呪符だよ。俺が使ったのは結界の呪符。体育館にいる彼らに、そこにいる疑問を少しだけなくさせる。それと結界を張ることで、外からの侵入を不可にして、彼らを守る。もっとも、中にいる彼らも出られないけど」
  簡単な説明だ。呪符を使わずとも結界は張れるけれど。
  多分章は呪符を使わず結界を張っているはずだ。
  力については様々すぎて、全てを話すことは難しい。得意不得意もあるのだし。
  勇自身が自分にも力があるのだと認知し、自分の力を扱えるようにならなければ、説明は難しいのだ。自分が使う力については熟知している。けれど、他の力についてはそこまで多く語れるほどわかっていない。それが今の純や章、秋人である。
  中条家や柚木家の人々は、家の特殊性から小さな頃から勉強と言う名の特訓を受けているらしいから、彼らは色々と知っているのだろうけど。
  勇と純は会話なく、校庭へと歩く。


  屋上。秋人は、相手を見ながらも、時おり体育館を気にしていた。
  章からもらった守護札のおかげで、自分で身を守らずとも、札が勝手に動いてくれるのがありがたい。
  体育館を見ているのは、純と村越勇が出てくるのを待っている為。
  攪乱するために、相手への攻撃を怠ってはいないが、秋人は慣れない戦闘を一人で行うことへ苦痛を感じてきだしていた。
  いつも隣には章がいた。無意識に、章から手渡された守護札を握り締める。
  校庭にいる聖の方が、攻撃を容赦なく行っている様で、秋人へ来る攻撃は少ないように感じてはいるのだが。
「純さん、早くしてくれ」
  焦りからか、ぽつりとこぼしてしまう言葉。
  秋人は、章がいないとこんなにも不安になるものなのだ、と初めて気付いた。
  弱いこんな自分じゃ、章を守ってやれない。守られているのは自分の方だと、秋人は感じる。
  体育館から出てくる人影が二つ見えた。
  純と村越勇だ。
  見慣れている純を、見間違うはずもなく、秋人はそう断言できた。
  瞬間、秋人の体は地面を蹴って、屋上の柵を飛び越える。飛び越えた後に、もう一度地面を蹴る。地上へと降りる為に。


  校庭、聖の後ろにつく形で、章が立っている。
  校舎への結界を強く補強した後は、章は聖のサポートにまわっていた。
  聖も相手からの攻撃をうまく避けたり、自らの力で霧散させたりしているが、屋上の秋人へ負担がかからないように攻撃を多く繰り出しているので、守りは少々疎かになりがちだ。そこを、うまく章がサポートする。
  さすが、正さんが育てただけはあって、うまいな。そう聖は感じていたが、先程のように簡単に褒め言葉を発してはやらない。
  力はまだまだ伸びる可能性があるのだ。褒めて伸ばす役割は、自分ではなく別の人間、と聖は考えている。
「聖さん、純さんたち、体育館から出てきました」
  校舎に張った結界からか、章の感知能力故か、気付いた章から聖に声がかかる。
「わかった」
  短い聖の返事。
  そのすぐ後に、上から秋人が降ってきた。
  屋上から、最短距離で校庭へ行こうと思えば、一番楽な方法である。
「秋人、走るぞ」
  校庭にはいるものの、校舎の比較的近くにいる章。
  その少し前へと降り立った秋人。
  さらに前に聖。
  聖は秋人を振り返ることなく、下に来たのがわかった時点で秋人に声をかけ、校庭の真ん中の方へと移動する。
  いくら章の結界があるとはいえ、校舎の近くはやりにくい。
  秋人は何も言わずに、聖へと続く。ただ一瞬、章を見て、安堵したが、すぐに気を引き締めて。
  章も、少しだけ校舎の傍から移動する。
  校舎の結界保持は、もう手が離れても問題なかった。
  敵は、当初の目的を忘れたのか、邪魔者を始末することを優先と思ったのか。聖と秋人に、攻撃を繰り返している。空に漂う黒い靄のようなモノは、波打ちながら、下へと攻撃の手を差し向けてくる。
  しかし、それらは聖によって、または秋人によって、叩き伏せられていた。
  だが、数が多い。このままでは、本体へと攻撃ができないままだ。本体は一切傷ついていない。
  靄はいくらでも攻撃できるのか、躊躇わずに数多くの攻撃を繰り返してくる。
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