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第七章

第84話 部屋の中は

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『入口が閉ざされたもようです』

 部屋に入って5メートルほど進んだところでセバスさんから報告が入る。

 後ろを振り返ると、今入ってきて入口が消え、薄暗く何もない空間が広がっている。

「亜空間……、どうやら閉じ込められたみたい、ですね」

 見た感じ邪神が創った結界の中と言うよりも別の亜空間に隔離された感じがする。

『奥から邪神の強力な魔力を感じますから恐らくこの先にいるのは間違い無いと思われます。ただ、このまま邪神の所まで何も無い、ということはないでしょう』

「……ですよね」

 セバスさんの意見に賛同しならが僕は奥に進んで行く。


 そして警戒しながら進む事約10分。それは唐突に始まった。

 目の前の地面から影のような黒いモヤが湧き上るように突如現れたのだ。

 それは瞬く間に巨大化していき、小さな城程の大きさまで膨れ上がった。そして肥大化が止まると今度はその黒いモヤはゆっくりとある形を形成していく。

「――!? まさか……」

 そのモヤが形勢していく形には見覚えがあった。そいつは当時、レヴィ達に修行と称して無茶苦茶な条件で何度も何度も対戦させられた相手だ。嫌でも忘れる訳が無い。

 それは鋭く巨大な牙と爪を持っていた。城を思わす巨大な体躯は漆黒の鱗で覆われていた。眼光鋭く睨む目は金色の光を放っている。その姿はまさに巨大なドラゴン、そして以前修行で潜っていた『羅刹迷宮』で何度となく戦った相手。

 そいつは『羅刹迷宮』最深階層守護者、――漆黒の巨竜――邪竜帝アジ・ダハーカだった。



『んー、なんか今更って感じだね』

 確かにレヴィの言う通りだ。半神人デミゴッド化する以前の僕ですら、1分あればこのアジ・ダハーカを倒す事が出来ていたのだ。半神人デミゴッド化した僕にとってはハッキリ言いて相手にもならない。まさにレヴィが言うように今更と言った感じの相手だ。

『クラウド様。どうやら以前戦った邪竜帝アジ・ダハーカと言う訳ではなさそうです』

『それはどういう事ですか?』

『レベルが以前よりも格段に上がっております』

 レベルか……、確か以前戦ったアジ・ダハーカのレベルは470弱くらいだったはずだけど……

『いくつですか?』

『550程かと、ただ正確なレベルは分からないようです。恐らく強さの上昇に関してもそうですが邪神が影響していると思われます』

 ……なるほど、だけど、だからと言ってレベル550程度のアジ・ダハーカなら正直全く問題無い。その程度ならダメージを受けるどころか体力を消耗する事も無いだろう。
 一体何で? そう思った時だった。

 それは突如いたるところで始まった。
 アジ・ダハーカがその姿を完全に現すのとほぼ同時に、黒いモヤがいたるところで噴き出し始めたのだ。やがてその黒いモヤは次々と形を変化させていき、ついには異形の化物達へとその姿を変える。

『あっ、あれケルベロスだね。懐かしぃ』

 レヴィさん、なんでこの状況でテンションが上がるのですか? 中々スゴイ事になっているこの状況で……

 周りには既に無数の魔物で埋め尽くされている。そのどれもがレベル400を超える強力な魔物ばかり。正直半神人デミゴッド化する前の僕だったらヤバかったかもしれない。

『総数421体で御座います』

 流石セバスさん確認が早くそして正確だね。

『間違い無くクラウド様を消耗させるのが目的でしょう』

 確かに幾ら強力な魔物を多数そろえたとはいえ、この程度なら僕がやられる事はまず無いだろう。ただ、これだけ強力の魔物がそろえば、流石に全く消耗無しで、と言う訳には行かないとも思う。

「はぁ、相手の目的が分かっていてもやるしかないよね」

 剣を抜き正面のアジ・ダハーカを見据える。

「今回はボク達も戦うよう」

 レヴィの声が剣からではなく、背後から聞こえる。

 僅かに視線を後方に向けると、そこには、白い鎧を纏ったレヴィを始め。純白の魔道士姿のセバスさん、蒼く輝く弓を構えたクイ、白銀のフルプレートを装備したイジスさん、更には同じく白銀の鎧を纏ったアキーレさんに金と銀の毛並みをした巨大猫姿のキーレとアーレが円形に陣形を組み、周囲の魔物を睨みつつ戦闘態勢に入っている。

 こうしてみんなと肩を並べて戦うのは久しぶりだ。自然と笑みがこぼれて来てしまう。

「了解。じゃあ、みんな始めようか」

 それほど大きな声では無かったが僕がそう宣言すると、示し合わせたように全員が同時に魔物を殲滅するべく動き出す。

 僕の最初のターゲットは――漆黒の巨竜――邪竜帝アジ・ダハーカ。先ずはこのデカブツに消えて貰う。

 僕は剣を構え、邪竜帝アジ・ダハーカに向け走り出した。

 こうして邪神との前哨戦が盛大に始まったのだ。
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