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第七章

第73話 転移した先は……

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 目覚めると、僕は真っ白な部屋で真っ白なベッドに寝かされていた。

 ここは何処だろう? まさか天国って事は無いだろうけど……

 周りを見るが、部屋には小さな白いテーブルと椅子が置かれている以外何も無い。

 窓から見える外の風景には深い緑の森と、深く澄んだ雲一つ無い空が広がっている。


 ここがどこか分からないが、どうやら僕は助かったらしい。あの邪神から無事逃げ果せ、且つ転移で即死する事も無かったようだ。
 
 
 セバスさんに声を掛けようと腕を見るが、セバスさんの腕輪が見当たらない。他にもレヴィやイジスさんは勿論の事、アキーレさんやキーレ、アーレの姿も見えない。

 ……みんな何処にいったんだ? 

 この現実味の無い部屋と相まって、此処があの世ではないのかと一瞬不安が過ぎる。

 いや、そんな事は無いはず……、兎に角先ず部屋の外に出てみよう。外にレヴィ達が居るかもしれない。

 
 白い扉に手を掛け部屋の外に出ると、部屋と同じように真っ白な廊下が真っ直ぐに伸びている。

 ホントに此処は何処なんだろう? 歩き始めた廊下は、どこかお城や神殿を思わせるような荘厳な雰囲気を醸し出している。

 いくつか扉が並ぶ廊下を抜けると、巨大なホールが現れた。

 そこは白一色に統一された豪華な神殿のような造りだった。

 壁には、天使や天馬、それに竜など多くの彫刻が彫られており、その豪華さをより演出している。

 天井はステンドグラスになっており、天神様の絵が描かれている。

 そして開かれた巨大な白い扉には、それぞれ十二枚の翼を持った熾天使が描かれている。


……ここはエントランスなのか? しかしなんて立派な造りなんだろう……

 まるで神話に出て来るような、神が住まう神殿のようだ。

 僕は開かれた扉から外に出てみる。



 ――なんなんだここは?

 そこには白に統一された石畳が広がっていた。

 周り一面真っ白の光景。そして扉から真っ直ぐに平行して白い石柱が整然を並んでいる。

 まるでこの世の光景とは思えない。何より先ほどから人の気配が一切無い。

「いったいここは……」

「ここは神が住まう地、ヴァルハラで御座います」

 僕のつぶやきに突如答えが返って来た。振り向くとそこには見知った男が立っていた。

「セバスさん!」

「クラウド様、お目覚めになられたのですね。お加減はいかがですか」

「はい、たぶんもう大丈夫です。それより、神が住まう地ヴァルハラとはいったい何なんですか?」

「ここはかつて、天神様が現世におられた時、住まわれていた地で御座います」

 ……天神様が住んでいた地。

「な、なんでそんな所に……」

「転移結晶で御座います。転移結晶で転移した場所がこの地で御座いました」

 転移結晶で……、しかしまたとんでもない所に飛んでしまった……

「僕がこんな所にいて大丈夫なんでしょうか?」

「ここは既に主である天神様はおられません。ですので特に問題無いかと」

 問題無いんだ……、まあ、セバスさんが言うのだから本当に問題無いのだろう。そうだ――

「セバスさん、あれから時間がどれくらい経ちましたか?」

 前回レヴィ達の力を解放した時は半月弱、意識を失っていたはずだけど……

「あれから約一ヵ月経っております」

「え!?」

 今なんて言った!? 一ヵ月って言わなかったか? いくらなんでも経ち過ぎじゃないか?

「……なんでそんなに?」

「クラウド様のレベルが上がり、解放時のエネルギーの上昇が今までよりもはるかに高くなったのに対し、クラウド様自身の肉体の強度は、エネルギー値の上昇ほどには上がっていなかった事が原因でしょう」

 この一年の僕の肉体改造はかなり進んで相当耐久力のある身体にしたつもりだったけど、能力解放の上昇値はそれ以上だったようです。

 これって、使い処難しすぎるでしょ……

「そうだ! 一ヵ月経っているって、現在世界はどうなっているんですか?」

 僕が眠っていた一ヵ月。ここヴァルハラでは邪神の気配は感じないが、現在の状況はどうなっているのか気になる。まさか滅んだりしてないよね。

「分かりません」

「へ!?」

 今、セバスさんから殆ど聞いた事のないセリフを聞いたぞ!

「それはどういう……」

「この地は神が住まう地。この地は下界とは違う空間に位置しています。その為、私の力でも下界の様子を見る事は出来ません」

「え!?」

 セバスさんでも見られないって……

「あの……、元の世界に戻れますよね?」

 恐る恐る聞いてみた。

「可能です。方法は2つ御座います」

 2つしかないんだ……、

「一つは転移結晶を使用したランダム転移。運が良ければ生きて下界に降りられます」

 いきなり運任せですか……

「2つ目の方法は神殿にて神の因子を受け入れる方法です」

 神の因子を受け入れる? なんか嫌な予感しかしない。きっと、いや、絶対危険極まる方法に決まっている。そうとしか思えません。
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