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第六章
第61話 タイムアタック?
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漆黒の扉は、その重厚そうな造りとは裏腹に、片手で軽く押すだけで音もなく開いていく。
扉の隙間から覗く部屋の中は暗く、中がどのようになっているか一切見えない。
やがて扉が開き切ると、突然部屋の天井に仄かな青い光が灯され、部屋を青白く照らし始める。
天井を見るとそこには、巨大なシャンデリアが飾られており、そのシャンデリアより青白い炎が1つ、また一つと部屋を照らす為、点灯されていく。
少しずつ青白く照らされていく部屋の中、その最奥で、それは姿を現し始める。
それは城のような大きさの生物だった。漆黒の鱗に覆われ、鋭く巨大な牙と爪を持ち、金色の眼光は侵入者である僕を拒絶するように睨みつけている。
――グゥオオオォォォ――
鼓膜を激しく震わす咆哮。それと戦うだけの資格が無い者はそれだけで発狂し、死を迎える事になるだろう。
それは巨大な両翼を広げ、明らかにこちらを威嚇する体勢をとる。自分が何者であるか主張するように……
そしてそれは青白い光の中、その全貌を現す。
――漆黒の巨竜――邪竜帝アジ・ダハーカ――
竜族最強の称号である竜帝を冠するドラゴンの1体。邪竜の帝王。レベル465の魔物だ。
正直、これを1分で倒せとか、あの装備達は頭がおかしいんじゃないかと思う。
そんな事を思っていると、どうやら戦闘が開始されたようだ。
邪竜アジ・ダハーカの口から突如黒い光が溢れ出す。――そして、溜めこんだエネルギーをアジ・ダハーカは咆哮を上げるように漆黒のブレスとして撃ちだした。
視界いっぱいに広がる漆黒の閃光。喰らった者を一瞬で消滅させるほどのエネルギーの塊。それが僕を消滅させようと襲い掛かってくる。
それはアジ・ダハーカの必殺の先制攻撃。所謂初見殺しだ。だが僕にとっては見慣れた光景、既に13回も同じ攻撃を見ている。今回で14回目だ。
僕は魔剣レヴィに薄く魔力を纏わせると、アジ・ダハーカが撃ちだした黒い閃光に向けレヴィを振り下ろした。
――キーン――
剣を振ると耳鳴りのような音が聞こえる。そしてそれと同時に眼前に迫った、黒い閃光は真っ二つに分かれ、僕の両脇を通り過ぎていく。
――ドッゴーン!! ――
遅れて部屋中に響く大音量の爆発音。
その爆風を背に受けるように僕はアジ・ダハーカに向け突撃した。
アジ・ダハーカに向かう僕の身体や手に持つレヴィは薄く白く輝き始める。――これは『オーラソード』や『闘鬼魔装』のような装備達の固有能力では無く、純粋に僕の魔力を使った強化技で、一流と呼ばれるハンターなら誰でも使える、本物の戦士の嗜みみたいなものだ。
ちなみに装備達の固有能力はアジ・ダハーカ戦8戦目から使用禁止になっている。自力で倒せという事らしい。伝説級の邪竜を相手にだ。……まあ、出来たんだから文句は言えないが……
それはさておき、アジ・ダハーカに突撃した僕は、魔力の身体強化により急加速すると、そのまま巨大なアジ・ダハーカの足元をすり抜けざまにレヴィを一閃。途轍もない強度を持つはずの竜鱗ごと、深く肉を斬り裂く。
――ギャヤヤヤャャャァァ――
傷口から大量の黒い血を吹き出しながら、アジ・ダハーカは怨嗟の咆哮を上げる。
僕は更に追撃を掛けるべく、風魔法を身体に纏い一気に高く飛びあがる。そしてアジ・ダハーカの後方に浮遊すると、両手を上空に掲げ火魔法の上位魔法に当たる核魔法と土魔法に上位魔法に当たる鉱石魔法を同時展開する。
アジ・ダハーカは僕の姿を見失っているらしく、自分の足元を必死に僕を探しているようだ。
「残念だけど僕はそこには居ないんだよね。では、時間が無いから次いくよ」
僕はそう宣言すると。自分の頭上に出来あがった、真っ赤に燃えた巨大な岩石をアジ・ダハーカの頭部に向けて撃ちだした。
それはまさに隕石だ。――かつて世界最高の魔導士と言われた男が、人生を掛けて生み出した伝説の魔法『メテオ』――僕が初めてこの魔法を使った時、セバスさんから聞かされた事だ。しかし僕はそんな事は知る由も無く、ただ思いついて試しに撃ってみたら出来たそれだけの魔法だった。
巨大な燃える隕石は、寸分違わずアジ・ダハーカの頭に直撃する。巨大な隕石は砕け散り、中から赤く燃えたぎる溶岩をぶちまけ、アジ・ダハーカの体中に降り注ぎ、身を焼く。
――グラァァアア――
アジ・ダハーカは全身から煙を噴き上げながらこちらを睨むと、自分の周辺に黒い炎を上げた球体を複数創り出す。
アレも僕にとってはお馴染みの物だ。途轍もない負のエネルギーの塊で、触れる物全て崩壊させる死の球だ。――だが、当たらなければどうという事も無い。それに……
迫りくる黒い炎球を次々と魔剣レヴィで斬り飛ばしていく。――それに神器であるレヴィは、それくらいの攻撃ではビクともしないからね。
アジ・ダハーカは自分の攻撃が一切効いていない事に戸惑いを覚えているようだ。
ちなみに僕とアジ・ダハーカは今回で14度の対戦をしているが、どうやらアジ・ダハーカは倒されると、以前の記憶を失くすらしく、僕の事を毎回初対戦と思って戦っているようだ。もしかしたら、倒した時に消滅しているようだし、別の個体なのかもしれないが……
『お~い、45秒過ぎたよ~、もたもたやっていると1分過ぎちゃうよ~』
レヴィが相変わらずの軽さで、残り時間を告げてくる。
「了解!!」
返事を一言で済ませると僕は風魔法で一気にアジ・ダハーカに向かい加速して突っ込んでいく。アジ・ダハーカはあまりの急加速に反応が遅れ僕を懐に入れてしまう。
そして僕は次に風魔法をレヴィに纏わせると、アジ・ダハーカの肩口に振り下ろした。
――!!!!!――
アジ・ダハーカは声にならない叫びを上げる。肩から先に有ったはずの巨大な腕は無くなり、代わりの黒い血が翼を創るように噴き出している。
「悪いけど、余り時間がないからそろそろ終わりにさせてもらうよ」
僕はそう言って、トドメに向かう。
だがしかし、アジ・ダハーカはここで終わるつもりは無いようだ。トドメに向かう僕に、向け大口を開けると、近距離で僕に向け黒い閃光を吐き出したのだ。
黒い閃光は一瞬僕を完全に飲み込んだように見えた。だが次の瞬間、黒い閃光はレヴィの一振りで再び斬られ僕の両脇を通り過ぎていっただけだった。
「それは僕に効かないって分かってなかったのかな?」
『クラウド様、残り5秒で御座います』
いよいよタイムリミットが近づいて来ている。
「じやあ、これで本当に最後だ」
レヴィに雷魔法と風魔法を纏わせると、僕はアジ・ダハーカの頭に向けて振り下ろした。
◇ ◇ ◇
体を真っ二つにされたアジ・ダハーカは、光の粒子となって消えていく。
『討伐タイムは59秒で御座いました。クラウド様、おめでとうございます』
残り1秒って、ギリギリだったね。
『オーバーしたらお仕置きだったのにね』
レヴィよ。そんな話は出ていなかったはずだが?
『クラウド君も強くなったわね。これで迷宮特訓も一応卒業って事ね』
アキーレさん、一応ってどういう事でしょうか?
『主なら当然です』
イジスさんは相変わらず僕に対して盲目だな。
『もう、わたしのサポートは要ら無さそうですね』
それとこれは話しが別です。これからが本番なんでサポートはして欲しいです。
『お兄ちゃん、おめでとう。カッコイイ』
『兄様、おめでとうございます。素敵でした』
やっぱりアーレとキーレだけが僕の癒しだよ。
こうして僕の最終調整と言う名の無茶ぶり戦闘は終了し、この『羅刹迷宮』から旅立つ事になったのだ。
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漆黒の扉は、その重厚そうな造りとは裏腹に、片手で軽く押すだけで音もなく開いていく。
扉の隙間から覗く部屋の中は暗く、中がどのようになっているか一切見えない。
やがて扉が開き切ると、突然部屋の天井に仄かな青い光が灯され、部屋を青白く照らし始める。
天井を見るとそこには、巨大なシャンデリアが飾られており、そのシャンデリアより青白い炎が1つ、また一つと部屋を照らす為、点灯されていく。
少しずつ青白く照らされていく部屋の中、その最奥で、それは姿を現し始める。
それは城のような大きさの生物だった。漆黒の鱗に覆われ、鋭く巨大な牙と爪を持ち、金色の眼光は侵入者である僕を拒絶するように睨みつけている。
――グゥオオオォォォ――
鼓膜を激しく震わす咆哮。それと戦うだけの資格が無い者はそれだけで発狂し、死を迎える事になるだろう。
それは巨大な両翼を広げ、明らかにこちらを威嚇する体勢をとる。自分が何者であるか主張するように……
そしてそれは青白い光の中、その全貌を現す。
――漆黒の巨竜――邪竜帝アジ・ダハーカ――
竜族最強の称号である竜帝を冠するドラゴンの1体。邪竜の帝王。レベル465の魔物だ。
正直、これを1分で倒せとか、あの装備達は頭がおかしいんじゃないかと思う。
そんな事を思っていると、どうやら戦闘が開始されたようだ。
邪竜アジ・ダハーカの口から突如黒い光が溢れ出す。――そして、溜めこんだエネルギーをアジ・ダハーカは咆哮を上げるように漆黒のブレスとして撃ちだした。
視界いっぱいに広がる漆黒の閃光。喰らった者を一瞬で消滅させるほどのエネルギーの塊。それが僕を消滅させようと襲い掛かってくる。
それはアジ・ダハーカの必殺の先制攻撃。所謂初見殺しだ。だが僕にとっては見慣れた光景、既に13回も同じ攻撃を見ている。今回で14回目だ。
僕は魔剣レヴィに薄く魔力を纏わせると、アジ・ダハーカが撃ちだした黒い閃光に向けレヴィを振り下ろした。
――キーン――
剣を振ると耳鳴りのような音が聞こえる。そしてそれと同時に眼前に迫った、黒い閃光は真っ二つに分かれ、僕の両脇を通り過ぎていく。
――ドッゴーン!! ――
遅れて部屋中に響く大音量の爆発音。
その爆風を背に受けるように僕はアジ・ダハーカに向け突撃した。
アジ・ダハーカに向かう僕の身体や手に持つレヴィは薄く白く輝き始める。――これは『オーラソード』や『闘鬼魔装』のような装備達の固有能力では無く、純粋に僕の魔力を使った強化技で、一流と呼ばれるハンターなら誰でも使える、本物の戦士の嗜みみたいなものだ。
ちなみに装備達の固有能力はアジ・ダハーカ戦8戦目から使用禁止になっている。自力で倒せという事らしい。伝説級の邪竜を相手にだ。……まあ、出来たんだから文句は言えないが……
それはさておき、アジ・ダハーカに突撃した僕は、魔力の身体強化により急加速すると、そのまま巨大なアジ・ダハーカの足元をすり抜けざまにレヴィを一閃。途轍もない強度を持つはずの竜鱗ごと、深く肉を斬り裂く。
――ギャヤヤヤャャャァァ――
傷口から大量の黒い血を吹き出しながら、アジ・ダハーカは怨嗟の咆哮を上げる。
僕は更に追撃を掛けるべく、風魔法を身体に纏い一気に高く飛びあがる。そしてアジ・ダハーカの後方に浮遊すると、両手を上空に掲げ火魔法の上位魔法に当たる核魔法と土魔法に上位魔法に当たる鉱石魔法を同時展開する。
アジ・ダハーカは僕の姿を見失っているらしく、自分の足元を必死に僕を探しているようだ。
「残念だけど僕はそこには居ないんだよね。では、時間が無いから次いくよ」
僕はそう宣言すると。自分の頭上に出来あがった、真っ赤に燃えた巨大な岩石をアジ・ダハーカの頭部に向けて撃ちだした。
それはまさに隕石だ。――かつて世界最高の魔導士と言われた男が、人生を掛けて生み出した伝説の魔法『メテオ』――僕が初めてこの魔法を使った時、セバスさんから聞かされた事だ。しかし僕はそんな事は知る由も無く、ただ思いついて試しに撃ってみたら出来たそれだけの魔法だった。
巨大な燃える隕石は、寸分違わずアジ・ダハーカの頭に直撃する。巨大な隕石は砕け散り、中から赤く燃えたぎる溶岩をぶちまけ、アジ・ダハーカの体中に降り注ぎ、身を焼く。
――グラァァアア――
アジ・ダハーカは全身から煙を噴き上げながらこちらを睨むと、自分の周辺に黒い炎を上げた球体を複数創り出す。
アレも僕にとってはお馴染みの物だ。途轍もない負のエネルギーの塊で、触れる物全て崩壊させる死の球だ。――だが、当たらなければどうという事も無い。それに……
迫りくる黒い炎球を次々と魔剣レヴィで斬り飛ばしていく。――それに神器であるレヴィは、それくらいの攻撃ではビクともしないからね。
アジ・ダハーカは自分の攻撃が一切効いていない事に戸惑いを覚えているようだ。
ちなみに僕とアジ・ダハーカは今回で14度の対戦をしているが、どうやらアジ・ダハーカは倒されると、以前の記憶を失くすらしく、僕の事を毎回初対戦と思って戦っているようだ。もしかしたら、倒した時に消滅しているようだし、別の個体なのかもしれないが……
『お~い、45秒過ぎたよ~、もたもたやっていると1分過ぎちゃうよ~』
レヴィが相変わらずの軽さで、残り時間を告げてくる。
「了解!!」
返事を一言で済ませると僕は風魔法で一気にアジ・ダハーカに向かい加速して突っ込んでいく。アジ・ダハーカはあまりの急加速に反応が遅れ僕を懐に入れてしまう。
そして僕は次に風魔法をレヴィに纏わせると、アジ・ダハーカの肩口に振り下ろした。
――!!!!!――
アジ・ダハーカは声にならない叫びを上げる。肩から先に有ったはずの巨大な腕は無くなり、代わりの黒い血が翼を創るように噴き出している。
「悪いけど、余り時間がないからそろそろ終わりにさせてもらうよ」
僕はそう言って、トドメに向かう。
だがしかし、アジ・ダハーカはここで終わるつもりは無いようだ。トドメに向かう僕に、向け大口を開けると、近距離で僕に向け黒い閃光を吐き出したのだ。
黒い閃光は一瞬僕を完全に飲み込んだように見えた。だが次の瞬間、黒い閃光はレヴィの一振りで再び斬られ僕の両脇を通り過ぎていっただけだった。
「それは僕に効かないって分かってなかったのかな?」
『クラウド様、残り5秒で御座います』
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「じやあ、これで本当に最後だ」
レヴィに雷魔法と風魔法を纏わせると、僕はアジ・ダハーカの頭に向けて振り下ろした。
◇ ◇ ◇
体を真っ二つにされたアジ・ダハーカは、光の粒子となって消えていく。
『討伐タイムは59秒で御座いました。クラウド様、おめでとうございます』
残り1秒って、ギリギリだったね。
『オーバーしたらお仕置きだったのにね』
レヴィよ。そんな話は出ていなかったはずだが?
『クラウド君も強くなったわね。これで迷宮特訓も一応卒業って事ね』
アキーレさん、一応ってどういう事でしょうか?
『主なら当然です』
イジスさんは相変わらず僕に対して盲目だな。
『もう、わたしのサポートは要ら無さそうですね』
それとこれは話しが別です。これからが本番なんでサポートはして欲しいです。
『お兄ちゃん、おめでとう。カッコイイ』
『兄様、おめでとうございます。素敵でした』
やっぱりアーレとキーレだけが僕の癒しだよ。
こうして僕の最終調整と言う名の無茶ぶり戦闘は終了し、この『羅刹迷宮』から旅立つ事になったのだ。
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