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第四章

第33話 僕が迷宮で生きのびた理由を知りました

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 キーレとアーレに後について移動していると、やがてレンガ造りの小さな家が現れた。

 変わり者の魔道具師の家だからすごい変わった家を想像していたけど、思ったよりも普通だな。

 「うわ~懐かし~。アキーレ元気かな~」

 レヴィは昔の友達に久しぶりに会えると、すごく嬉しそうだ。


 家の入口まで到着すると、両開きの扉が勝手に開き始める。

 おお、すごい。これって建物自体、魔道具になっているのかな?

 キーレとアーレに続いて、レヴィ、セバスさん、そして僕、クイ、イジスさんの順に中に入った。

 中は外観からは想像できないほど広い造りになっている。

 これって魔法のテントと同じように、中を広くする空間魔法でも掛かけてあるんだろうか?

 「いらっしゃい。そんなにこの建物が珍しいのかしら?」

 突然声を掛けられ振り向くと、そこには歳の頃は20代後半だろうか? 褐色の肌に艶のある長い黒髪の美女が、10歳くらいの金髪と銀髪の猫耳美少女を両脇に従え立っていた。

 「やっほ~。アキーレ、久しぶり」

 「アラアラ、エルナじゃない。それにセバスにイジスまで。ホント久しぶりね」

 3人の知り合いって事は、この人もセバスさん達が言っていた知性魔道具インテリジェンスアイテムなんだろか。しかし、すごい美人だ。こういう人の事を絶世の美女って言うんだろうな。

 「そちらの2人は初めて見るわね」

 僕とクイの事だ。
 
 「僕はクラウドといいます。そしてこの娘はクイです」

 「君は人間なのね。それにそちらのエルフは私達と同じ知性魔道具インテリジェンスアイテムのようね」

 やっぱりアキーレさんも知性魔道具インテリジェンスアイテムなんだ。しかし、アキーレさんは見ただけで人間か知性魔道具インテリジェンスアイテムか分かるんだな。というよりセバスさんもそうだけど、知性魔道具インテリジェンスアイテムの人たちは同族を見ただけで分かるのかな?

 「その通りです。よく分かりますね」

 「ウフフ、なんとなく分ちゃうのよね。それより、人間1人に知性魔道具インテリジェンスアイテムが4人同行しているという事は……」

 そこまで言うとアキーレさんは僕の方をみる。

 「はい。ここにいる4人と僕は契約をしています」
 
 「やっぱりね。そうすると、ここに来た目的も分かるわね。言い出したのはセバス辺りでしょうけど」

 正解です。

 「それでアキーレ達はどうしますか? 私たちに付いて来ますか?」

 セバスさん。単刀直入と言うか、そんな言い方だと、断って下さいって言ってるような感じじゃないですか?

 「そうね。最近刺激が無いから、付いて行くのもちょっと面白そうではあるのだけれど……、この子がマスターになるのよね……」

 そう言いながら僕の方を見る。

 うっ! やっぱ頼りなさそうですよね……。

 「そう言えば、なんでセバスやエルナ、イジスは彼と契約したの?」

 そりゃ、疑問に思うよね。

 「それは、クラウドが封印されたボクたちを開放してくれたからだよ」

 「そうですね。クラウド様がいなければ、今でもS級迷宮の中で封印されたままだったでしょう」

 「拙者も、主がいなければ未だ迷宮の100層という深層で動けぬままであった」

 レヴィが最初に説明し、2人はそれに同意するように答えた。

 「へぇ、この子がね……。とてもS級迷宮の深層にたどり着けるように見えないけど」

 深く同意します。

 「アハハ、運がよかったと言いますか……」

 そこから迷宮の飛ばされてから脱出するまでの話を、アキーレさんにする事になった。

 途中、「だからこれからは、ボクの事をレヴィって呼ぶように」など、レヴィやセバスさんが補足をしながら何とか説明を話し終えると。

 「レベル4でよく生きて迷宮から脱出、出来たわね」

 と目を丸くしてアキーレさんが驚いていた。両脇にいる2人の猫耳少女達は意味が分からないのか、僕達とアキーレさんの事を不思議そうに交互に見ている。あれ? この娘達、なんかさっきここまで案内してくれた子猫に雰囲気が似ているような。

 「僕もそう思います。みんなに会えた事も含め、ホントに奇跡だったとしか言いようが無いです」

 しみじみ本気でそう思う。

 「それは少し、違います」
  
 と突然セバスさんが話し始めた。

 「確かに運はよかったと思いますが、クラウド様が迷宮の魔物に襲われなかったのには、明確な理由があるのです」

 え? 初耳です。

 「それは?」とアキーレさんも興味津々のご様子。

 「その理由は、レベルが4だったからで御座います」

 へ? どういう事?

 「レベルとはその生物の強さを表します。延いてはその生物の魔力の存在値を表しています。そして高レベルの魔物は漂う魔力を感じながら獲物を探します。つまり、S級迷宮に棲息しているような高レベルの魔物にとって、クラウド様のレベルは極端に低く、却って見つける事が出来なかったと思われます」

 そんな理由が……。それなら、

 「途中遭遇した大蛇の魔物には、僕の居場所が分かっていたようなのですが」

 そう、あの時、曲がり角で大蛇に遭遇した時、大蛇は最初から僕の事に気が付いていたように見えた。

 「蛇系の魔物には熱を色として感知出来るものが多くいます。確実とは言えませんが、おそらくその大蛇にも熱を感知する能力があり、クラウド様の居場所が分かったのでしょう」

 だから、覗く前から僕の事が分かっていたんだ。色々疑問に思っていた事が分かった気がする。

 「ちなみにどれくらいのレベルだったら危険だったんでしょうか?」

 「おそらくレベル7以上だと一気に危険度が増したでしょう。そして10を超えていたら確実、命はなかったと思われます」

 うわぁ、本当にギリギリだったんだ。レベル低くて本当によかった。

 「ウフフ、クラウド君だっけ。あなた面白いわね。それにこの前までレベルが4だったにも拘らず、今の君から感じる気配は既に一流の戦士と言ってもいいくらいよ」
 
 「本当ですか?」

 今まで、レヴィに負けてばかりであまり実感がなかったけど、僕は既に一流クラスの実力になっていたんだ。

 「S級迷宮ならすぐ死んじゃう実力だけどね」とレヴィが一言。

 くっ! 基準が高すぎるよ。

 「フフ、それより一つ気になったんだけど。アナタ達、私たちと別れた後、ちっとも顔を見せないと思っていたら魔族に封印されていたのね。アナタ達ほどの者がどうしてそんな事になったの?」

 「うっ!」

 話の対象が急に僕から自分達の事になり、レヴィが言葉をつまらせる。

 そんなレヴィを見て、セバスさんが一つため息をはき、

 「今後同様の事があるかもしれませんので、一応何があったかご説明させていただきます」

 と事情を話し始めた。
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