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アライアス

ごめんよ、ウォルト

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 もうすぐお菓子を買ってもらえると大喜びの私ですが、今、ちょっと現実に帰ってきました。

「・・・。ところで、オスカー。どうして、私はオスカーの膝の上に座らされているの?」

 馬車に乗った時は一人で座っていたはずなのに、何故か今、オスカーの膝の上に抱えられて座っている。ロリコンと遭遇して、ハルスタッド一族の館まで拘束されていた時と同じように。
 今とあの時が違うのは兄かロリコンの違い。
 兄(オスカー)はいい。
 だけど、ロリコン。お前は駄目だ。
 私の家族でもなければ、ゲームでもオスカーの生死が不明になって、ウォルトと婚約を解消した私(リーンネット)はロリコンと結婚するのだ。
 どんな経緯があったかは知らないけど、私はロリコンとなんか結婚したくない。
 少しでもロリコンと結婚しそうになるフラグがあれば、全部壊す。そうしないと、駄目なような気がする。

「帰りの馬車でアライアス・ロクスに抱きかかえられていたそうじゃないか。あいつがしていたってことは、僕がしたっていいじゃないか。それとも、リーンネットはあいつにしかして欲しくなかったのか?」

 オスカーも私と同じことを考えていたようだ。
 さっきも思ったように、兄(オスカー)はいい。
 だが、ロリコン。お前は絶対、駄目だ。

 それにしても、どうしてオスカーがロリコンに抱えられていたことを知っていたのか?
 ウォルトから聞いた? それとも、館で出迎えたジェニングスから?
 多分、ジェニングスから聞いて、一人では座っていられなかった状態だからと推測したんだろう。

 あの時のことを詳しく思い出したら、ロリコンと遭遇したあの時の恐怖まで甦って来て、急に寒気がしてくる。

「ヤだ。ロリコンだけはヤだ。絶対ヤだ。ヤだって、言ってんのに、やめてくれなかったし、ウォルトも助けてくれなかった」
「あの野郎、お前が嫌がっているのをわかっていてやってたのか。それにウォルトもお前が嫌がっているのをわかっていて、それを許していたんだな」

 私の頭の上にあるオスカーの目がどんどん凶悪になっていく。緑柱石のような目が細められ、ギラギラと暴力を含んだ昏い光を宿す。
 怖い。
 滅茶苦茶、怖い。
 膝の上に抱きかかえられているという、至近距離でそんな目をされているからとっても怖い。
 怖くて返事に戸惑う。
 正直に話してしまえば、ウォルトがどんな目に遭わされるか考えたくない。
 ロリコンに私を任せてしまって、助けてくれなかったのは本当のことだ。だけど、今のオスカーの様子からして、それを言ってしまったらオスカーがウォルトに何をするかわかったもんじゃない。
 できれば、ウォルトが怪我をしない程度にして欲しいけど、私もオスカーが怖くてかばえるほどの勇気が出ない。

「あ、・・・う、うん」

 ウォルトを売ってしまった私は更に昏くなった目を見ないように、頭ごと動かして馬車の扉を見た。

「ウォルトの奴、殺す」

 私はオスカーという名の凶暴な獣の唸り声を聞こえなかったことにした。

 ごめん、ウォルト。日頃のオスカーとの友情でどうにか乗り切って。
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