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アライアス
兄はいったい何者なんだろう?
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室内戦闘なんかを私の部屋の居間でするもんだから、お気に入りの絨毯はペーパーナイフが何度も刺さってボロボロ。絨毯も直せるかどうかわからないけど、一族の棟に行って相談するしかない。
「なんで、ペーパーナイフを落とすまでやるの? そんなことするなら、私の部屋以外でやって」
と言ったら、私の部屋では実技(室内戦闘の訓練)じゃなくて座学に切り替えられたけど――
オスカーがそれはもう、流暢に毒について話し始めた。
特性やら治療法などなら引いたりはしないけど、どの石や草木から取れるとか、配分とか、作成方法までこと細かく話すのよ? 誰だって、引くわよね。
「どうして、毒の説明なんかしているの?」
貴族がこんなことも知っていないといけないものなのか、わからない私はこれ以上、毒について詳しいことを聞きたくなくてオスカーに聞いた。
与えられた限られた情報とおぼろげな前世の知識しかない私にわかるはずがない。
でも、毒薬についてオスカーがウォルトやフレイに教えている時点で何かがおかしいと思う。
オスカーが学校で教えて貰ったなら、ウォルトやフレイも学校に通った時に教えて貰える。それを前倒して勉強していない限り、教えて貰う必要はない。
室内戦闘のようにウォルトやフレイが教えて貰える環境ではないもの=ハルスタッド一族特有のものかもしれない。
そうだとしたら、ハルスタッド一族は特殊な一族と言える。
フレイは騎士を輩出する武門の名家に生まれていて、ウォルトはそうじゃないけど宰相を務めることの多い伯爵家の生まれだ。
その両家が有しない知識を持っている兄。その一つはオスカー自身が我が家が得意としているって言ってたし、屋外戦闘の訓練しか他家や学校では行われていないとも言っていた。
ゲームの知識が甦る前には普通だと思っていたことが、どんどん普通のことじゃなくなってくる。
ハルスタッド一族って、いったい何なの?
そんな疑問が浮かんでくる。
オスカー先生が私の質問に答える。今、兄は教える立場だから先生って呼んでいる。
「毒の耐性なら王族や高位貴族なら幼い頃からつけている。それは伯爵令嬢であるお前だって同じだ、リーンネット。ただ、耐性を付けている毒の種類は違うから、自分たち以外の耐性が付いていない人物や耐性を付けていない毒への対処方法は、宰相になる可能性のあるウォルトや騎士を率いる立場になるフレイは知っておいたほうがいいんだよ」
私にも毒の耐性がついているんだ。
宰相になるかもしれないからって、ウォルトまで毒に関する知識をつけないといけないのか。
でも、デリカシーがないウォルトが毒の知識を持ってても、症状に気付かないような気もするんだけど・・・。
「へえ~、私も毒の耐性を付けられていたんだ。ウォルトやフレイは生まれた家の役割から必要な知識なんだろうけど、家で教えて貰えないの?」
だって、学校に通っているオスカーが教えることじゃないよね?
「貴族の家で教えられている毒の種類や数はその家にとって必要最低限のものだけなんだよ。宰相を務めることの多いウルスタッド家は毒を盛られることを想定した内容で、武門のホルボーン家は武器に塗る毒や体調不良を起こすものが教えられる。とは言っても、医者や薬師が持つ毒の知識とは違って、毒の生成や毒を摂取する前に判別する方法、解毒が主になる。症状から毒の特定をするのは医師や薬師と同じだが、実際に自分が使うことを前提にしているんだよ」
「じゃあ、ウォルトもフレイもそれを使うってこと?」
各家では必要最低限の毒の種類しか教えて貰えないのか――って、それを教えられる我が家ってどうなってんの?! 我が家の必要最低限の毒の種類って、ウルスタッド家やホルボーン家以上にあるってこと?!
ハルスタッド家は伯爵家だけど、ウルスタッド家やホルボーン家みたいに派手な役割はゲームでも出てこなかったし、現実でも知らされていないから、私は普通の伯爵家だと思っていた。
もしかして、我が家に関する情報も私には教えてはいけないことかもしれない。
それにしても、毒を盛られることを想定って、宰相家怖い。
ウォルトの家には呼ばれても行かないようにしないと。招かれたこともないし、外出したのはこの前が初めてだし。
ホルボーン家には行っても毒は盛られそうにないけど、フレイとは挨拶くらいしかしたことがないからお呼ばれしないだろうな・・・。
「そうだよ」
オスカーの言うことが本当かウォルトとフレイを見たら、ウォルトは何か苦いものでも食べたように顔を顰め、フレイは「卑怯な方法だから使う気はないけど、相手はそう考えてくれる人間ばかりじゃないから」と頷いた。
「誤解しないで欲しいんだが、フレイのような騎士が相手にするのは騎士道を重んじる相手ばかりではないんだ。時には後ろ暗い犯罪者や山賊、盗賊、海賊と言った輩はなりふり構わず、平気で毒も用いる。そんな時の応急処置や、数で大きな差がついてしまっている時に部下の被害を少なくする為に使うんだよ。卑怯な手を使ってでも勝たないといけない時もあるから」
騎士って、毒使われるの?
騎士も宰相と同じように危険な職業だったんだ・・・。
貴族に毒の知識や耐性が必要なのも仕方ないのかも。
「貴族って、毒が使えないといけないんだ。知らなかった」
「怖がらせて悪かった。貴族の家で毒の教育をしているほうが珍しいから、気にしなくていいんだよ、リーンネット」
流石、ウォルトとフレイ。乙女ゲームの攻略対象に選ばれるエリート。生まれた家まで貴族の中でエリートで毒について勉強するほど、特別な家。
でも、我が家のほうが毒の知識があったり、室内戦闘なんて技術がある。陥れられる悪役令嬢の家なのに。
ゲームよりも今の現実のほうが知れば知るほど怖い。
ハルスタッド一族って、いったい何なんだろう?
兄が毒が使えないことを気にしなくていいと言ってくれているけど、私には我が家が特殊なことが気になった。
「なんで、ペーパーナイフを落とすまでやるの? そんなことするなら、私の部屋以外でやって」
と言ったら、私の部屋では実技(室内戦闘の訓練)じゃなくて座学に切り替えられたけど――
オスカーがそれはもう、流暢に毒について話し始めた。
特性やら治療法などなら引いたりはしないけど、どの石や草木から取れるとか、配分とか、作成方法までこと細かく話すのよ? 誰だって、引くわよね。
「どうして、毒の説明なんかしているの?」
貴族がこんなことも知っていないといけないものなのか、わからない私はこれ以上、毒について詳しいことを聞きたくなくてオスカーに聞いた。
与えられた限られた情報とおぼろげな前世の知識しかない私にわかるはずがない。
でも、毒薬についてオスカーがウォルトやフレイに教えている時点で何かがおかしいと思う。
オスカーが学校で教えて貰ったなら、ウォルトやフレイも学校に通った時に教えて貰える。それを前倒して勉強していない限り、教えて貰う必要はない。
室内戦闘のようにウォルトやフレイが教えて貰える環境ではないもの=ハルスタッド一族特有のものかもしれない。
そうだとしたら、ハルスタッド一族は特殊な一族と言える。
フレイは騎士を輩出する武門の名家に生まれていて、ウォルトはそうじゃないけど宰相を務めることの多い伯爵家の生まれだ。
その両家が有しない知識を持っている兄。その一つはオスカー自身が我が家が得意としているって言ってたし、屋外戦闘の訓練しか他家や学校では行われていないとも言っていた。
ゲームの知識が甦る前には普通だと思っていたことが、どんどん普通のことじゃなくなってくる。
ハルスタッド一族って、いったい何なの?
そんな疑問が浮かんでくる。
オスカー先生が私の質問に答える。今、兄は教える立場だから先生って呼んでいる。
「毒の耐性なら王族や高位貴族なら幼い頃からつけている。それは伯爵令嬢であるお前だって同じだ、リーンネット。ただ、耐性を付けている毒の種類は違うから、自分たち以外の耐性が付いていない人物や耐性を付けていない毒への対処方法は、宰相になる可能性のあるウォルトや騎士を率いる立場になるフレイは知っておいたほうがいいんだよ」
私にも毒の耐性がついているんだ。
宰相になるかもしれないからって、ウォルトまで毒に関する知識をつけないといけないのか。
でも、デリカシーがないウォルトが毒の知識を持ってても、症状に気付かないような気もするんだけど・・・。
「へえ~、私も毒の耐性を付けられていたんだ。ウォルトやフレイは生まれた家の役割から必要な知識なんだろうけど、家で教えて貰えないの?」
だって、学校に通っているオスカーが教えることじゃないよね?
「貴族の家で教えられている毒の種類や数はその家にとって必要最低限のものだけなんだよ。宰相を務めることの多いウルスタッド家は毒を盛られることを想定した内容で、武門のホルボーン家は武器に塗る毒や体調不良を起こすものが教えられる。とは言っても、医者や薬師が持つ毒の知識とは違って、毒の生成や毒を摂取する前に判別する方法、解毒が主になる。症状から毒の特定をするのは医師や薬師と同じだが、実際に自分が使うことを前提にしているんだよ」
「じゃあ、ウォルトもフレイもそれを使うってこと?」
各家では必要最低限の毒の種類しか教えて貰えないのか――って、それを教えられる我が家ってどうなってんの?! 我が家の必要最低限の毒の種類って、ウルスタッド家やホルボーン家以上にあるってこと?!
ハルスタッド家は伯爵家だけど、ウルスタッド家やホルボーン家みたいに派手な役割はゲームでも出てこなかったし、現実でも知らされていないから、私は普通の伯爵家だと思っていた。
もしかして、我が家に関する情報も私には教えてはいけないことかもしれない。
それにしても、毒を盛られることを想定って、宰相家怖い。
ウォルトの家には呼ばれても行かないようにしないと。招かれたこともないし、外出したのはこの前が初めてだし。
ホルボーン家には行っても毒は盛られそうにないけど、フレイとは挨拶くらいしかしたことがないからお呼ばれしないだろうな・・・。
「そうだよ」
オスカーの言うことが本当かウォルトとフレイを見たら、ウォルトは何か苦いものでも食べたように顔を顰め、フレイは「卑怯な方法だから使う気はないけど、相手はそう考えてくれる人間ばかりじゃないから」と頷いた。
「誤解しないで欲しいんだが、フレイのような騎士が相手にするのは騎士道を重んじる相手ばかりではないんだ。時には後ろ暗い犯罪者や山賊、盗賊、海賊と言った輩はなりふり構わず、平気で毒も用いる。そんな時の応急処置や、数で大きな差がついてしまっている時に部下の被害を少なくする為に使うんだよ。卑怯な手を使ってでも勝たないといけない時もあるから」
騎士って、毒使われるの?
騎士も宰相と同じように危険な職業だったんだ・・・。
貴族に毒の知識や耐性が必要なのも仕方ないのかも。
「貴族って、毒が使えないといけないんだ。知らなかった」
「怖がらせて悪かった。貴族の家で毒の教育をしているほうが珍しいから、気にしなくていいんだよ、リーンネット」
流石、ウォルトとフレイ。乙女ゲームの攻略対象に選ばれるエリート。生まれた家まで貴族の中でエリートで毒について勉強するほど、特別な家。
でも、我が家のほうが毒の知識があったり、室内戦闘なんて技術がある。陥れられる悪役令嬢の家なのに。
ゲームよりも今の現実のほうが知れば知るほど怖い。
ハルスタッド一族って、いったい何なんだろう?
兄が毒が使えないことを気にしなくていいと言ってくれているけど、私には我が家が特殊なことが気になった。
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