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ウォルト
兄がデレた・・・
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「リーンネットが出かけたのは、僕の誕生日プレゼントの為だとウォルトに聞いた。そんなものの為に、なんで出かけたんだ?」
オスカーは半分伏せられた目を細める。柳眉の間に皺も寄せられていて不機嫌そうだ。
あ、目の下にホクロ発見。
いつも距離があったから気付かなかったけど、オスカーって泣きボクロがあるんだね。
なんて思っていても、叱られている状況は変わらない。
疑問:無関心なはずの兄が私のベッド脇の椅子にいる理由は?
答え:目覚めたらすぐに問い詰める為
なんてことだ。
オスカーとの兄妹関係を少しでも改善しようとしたら、反対に悪化しているんですけど。
なんでこう、行動が裏目裏目に出るの?!
ゲーム通りにしなかったせい?
今まで通り、関心をあまり持たないように暮らしていたら、悪化しなかったってわけ?
詰問されただけでなく、実の兄でもこんな間近で話されると顔面偏差値が高いだけあって、くる。精神的にガリガリと削られて、また倒れそうだ。
流石、妖艶な一族。
いらないところで精神力を削ってくれる。
妖艶じゃなかったら、もう少しは耐えられた。
ドッと疲れが出てくる。
「私はただ、オスカーと仲良くなりたかっただけなのに・・・」
答える気もなく、いつの間にか思っていたことを呟いていた。
「リーンネット」
オスカーが私の髪を撫でる。撫でられて伸びた巻き毛が元に戻ろうとした反動で揺れている。
「誕生日プレゼントなんかどうでもいいんだ。仲良くしたかったら、そう言ってくれればよかったんだよ」
私とほとんど話そうとしないくせに「仲良くしたかったら、そう言ってくれ」って、無茶振りしないで欲しんだけど・・・。
オスカーの無関心って、天然だったの?
あれ、素だったの?
とるに足りないとか、私のことを見下していたわけじゃなくて、ただ単に用があれば話しかけてくるだろうからってことなの?
話しかけなかった私が悪いっていうの?
「だって、オスカーと話す機会もないし・・・」
「言ってくれたら、話す機会なんていくらでも作る。そんなものの為にリーンネットが外に出るのなら、僕は誕生日を喜んで捨てるよ」
「誕生日を捨てるって、何、言ってんの?!」
私はできるはずもないことを言いだすオスカーの正気を疑った。
無関心の件からしても、うちの兄は天然というか、ちょっと考え方がおかしいだけだったようだ。
紛らわしい。
紛らわしすぎるよ、オスカー。
そんな性格だから誤解されるんだよ!
「リーンネット。外は危険がたくさんある。それを呼び寄せるのが僕の誕生日なら、そんなものはいらないだろう? 今回だって、危険なものを拾ってきてしまったじゃないか」
確かに。
ロリコンを拾ってきてしまった。
「・・・ごめんなさい」
「わかってくれたらそれでいい。ジェニングスはウォルトが馬車でこのあたりを一周してくるとばかり思っていたんだ。お前が外に憧れていたのは知っているから、それくらいは許したらしい。だが、紳士用品店に行くなんて、何を考えているんだ?!」
「紳士用品店?」
そんな名称、初めて聞いた・・・。
言われてみれば、ウォルトが連れて行ってくれたあの店にはドレスも女性用の小物もなかった。リボンや布もないし、バケツや小物入れとかもなかった。
女性用でもなく、道具類でもなく、ウォルトのお父様が持っているようなものが売っている店は、紳士用品店かもしれない。
「女性が行くような場所じゃない。あそこに行くは男だけだ。そんな場所に一人で入るのは非常識すぎる」
女性一人では行ってはいけない場所でも、エスコートしてくれる相手がいればいいんじゃないの?
「一人って言っても、ウォルトがいたわ」
ウォルトが連れて行ってくれたことを兄は忘れているのかしら?
「ウォルトじゃ、あてにならない。本当は馬車に乗せることすら駄目だ」
ウォルトがあてにならない?
それに馬車に乗るのも駄目なの?
乗馬の練習もさせてもらったことはないのに、どうして馬車にも乗ってもいけないの?
「どうして? ジェニングスは馬車に乗せることはいいって思ったんでしょ?」
「馬車に乗せることと店に入ることは違う! それにこの屋敷の敷地の外に出るというだけで、リーンネットがどれほどの危険に晒されるのか、ウォルトはわかっていない」
過保護すぎる。
無関心だと思ったのが、話しかけてくるのを待っていただけとは思えないくらいオスカーは過保護だ。
馬車に乗るだけで危険って、オスカーは何を考えているんだろう?
それに敷地の外に出るのが危険って、私とウォルトが屋敷の外に出る時にはウォルトの護衛が付いてくるのに、どうしてそんなことを言うんだろう?
「でも、オスカー。ウォルトの護衛もいたのよ?」
ウォルトだって伯爵家の嫡男なのに、その護衛が役に立たないと言うオスカーの言葉が理解できなくて私は聞いた。
王族じゃないんだから、子ども二人に護衛が何人もいたら過保護すぎるよ。
「いくらウォルトの護衛がいたとしても、それはウォルトの護衛だ。お前の護衛じゃない。そもそも、あんな護衛でお前を守りきれるとは到底思えない。その証拠がアライアス・ロクスだ。ジェニングスに聞いた話では、体調を崩していたお前をアライアス・ロクスが抱えて馬車から降りてきたそうじゃないか。ウォルトもウォルトの護衛もお前に不審人物を近付けているのに、何が護衛だ」
「・・・」
それを言われると何も言えない。
ウォルトはロリコンに私を預けることに何も危機感を持っていなかった。
私だって、好きであのロリコンに抱えられたわけじゃない。
その上、ロリコンは私を抱えて家まで来た。
移動中もずっと抱えられていたことを思い出いしただけで身体が震える。
「大丈夫か、リーンネット。お前が思っているよりも、外は危険が多いのがわかってくれただけで、今回はいい経験になったと思う」
その通りだ、兄よ。
ロリコンとか、ロリコンとか、ロリコンとか。今回のことで、私も外に出たらロリコンと遭遇する危険があることを知った。
よっぽど頭に来ているらしい。オスカーは険しい顔で吐き捨てるように言う。
「だが――初対面のくせにお前と結婚したいから父上にお会いしたいとか言い出すとは、アライアス・ロクスめ! 寝言は寝て言えばいいものを!!」
「!!!」
ちょっと待てーーー!!!
オスカーの言う通り、初対面で何、考えてんだ。あのロリコン!!!
これ以上、目を開けられないほど見開いて驚いた。といっても、ちょっと目を見張ったように見えるくらい。前も言ったけど、この目は長くて量の多い睫毛の重みで大きく開けられない。
10歳の時点でゲームとは違う展開が多すぎなんですけど?!
ゲームでウォルトの婚約者だったのは、ロリコン避けだったの?!
攻略対象を避ける為に別の攻略対象と婚約してるって、『かげろう狂詩曲~蝶は檻の中~』は私にとって積みゲーならぬ、詰みゲーじゃない!
ウォルトと婚約破棄した時期にロリコンがヒロインに攻略されていないと私に危険があるのかもしれない。私はとりあえず個別ルートと本物のシルヴィアが出てくるエンディングしかやろうと思わなかったけど、逆ハーエンディングを目指していればこのあたりはわかったかもしれない。
そうは言っても、こんなゲスな乙女ゲーで逆ハーなんか誰がしたがるって言うの?!
これは学校に行く羽目になったら、偽シルヴィアがロリコンルートか、逆ハーを目指すことを祈るしかない。
だって、ヒロインはどう見てもゲームの中の私より胸があるんだもん。
偽シルヴィアが積極的にロリコンを攻略してくれないと、ロリコンがこっちにやってくるじゃない!!
身体が勝手にガタガタと震え始める。ロリコンに抱きかかえられていたことを思い出した時は一瞬だったけど、今度の震えは止まらない。
「父上が戻るまでは傍にいてやるからな、リーンネット。父上にこのことを報告するまでは僕も眠れない」
「・・・」
ありがとう、オスカー。
無関心でいてもいなくてもいい兄だと思った私が間違っていた。
なんていい兄なんだ。
ちょっと天然すぎて困るところがあるけど。
「怖い思いをさせたお詫びに今度、市場(マーケット)に一緒に行こう」
「怖い思いって、オスカーはそんなことさせていないよ」
市場ってどんなとこかわからないけど、屋敷の外に一緒に出かけてくれるらしい。
それは嬉しいけど、兄は自分を責めすぎている。
「僕の誕生日プレゼントを買った為に、あんなのに目を付けられてしまったじゃないか」
本当になんていい兄なんだ。
涙が出そうになる。
これで誤解を招くような悪いほうに作用する天然でなければよかったのに。
「オスカーのせいじゃないよ」
「僕のせいだ。僕がお前に心配をかけたせいだ。僕のせいでお前に怖い思いをさせてしまった」
オスカーは何も悪くないのに。
私が勝手に外出して、怖い思いをしたのに、自分のせいだって言う。
悪いのは私なのに、自分を責める兄はまた私の巻き毛を撫でる。
変な感じだ。兄とは思えなくて、幼馴染だと思うくらい縁遠い存在だと思ったのに安心する。
身体の震えはいつの間にか止まっていた。
「違うよ。私がウォルトと一緒に黙って外に出たからいけないの。ジェニングスに相談すればよかったのに、それもしないで出かけたからあんなことになっちゃったんだよ。オスカーは何も悪くない」
「自分を責めなくていいんだ、リーンネット。お前は何も知らされていなかったんだから、気にしなくていい。そんなに自分を責めたいなら、次からは外出してもいいかどうかジェニングスに相談してくれたらいい。そうすれば、護衛も付けられる」
外出したくなったら護衛を付ける為にジェニングスに相談したらいいって、外はあんなに危険だと言っていたのに・・・どう考えても対応が甘いよね?
もしかして、オスカーがデレた?
仲良くなったのはあまり実感ないけど、いきなりデレですか?!
無関心に見えたのは天然(+どう接していいのかわからない)だとしても、一気にここまで甘やかしてくれなくてもいいよ。
「オスカー・・・」
なんか面映(おもは)ゆい。
「僕は父上が帰るまでここにいる。だから、今はお休み」
恥ずかしかった私はオスカーの心遣いに感謝して目を閉じる。
その後に見た夢はあの店で買い物をしているものだった。現実と違ったのはウォルトだけじゃなくてオスカーも一緒にいたこと。
オスカーは半分伏せられた目を細める。柳眉の間に皺も寄せられていて不機嫌そうだ。
あ、目の下にホクロ発見。
いつも距離があったから気付かなかったけど、オスカーって泣きボクロがあるんだね。
なんて思っていても、叱られている状況は変わらない。
疑問:無関心なはずの兄が私のベッド脇の椅子にいる理由は?
答え:目覚めたらすぐに問い詰める為
なんてことだ。
オスカーとの兄妹関係を少しでも改善しようとしたら、反対に悪化しているんですけど。
なんでこう、行動が裏目裏目に出るの?!
ゲーム通りにしなかったせい?
今まで通り、関心をあまり持たないように暮らしていたら、悪化しなかったってわけ?
詰問されただけでなく、実の兄でもこんな間近で話されると顔面偏差値が高いだけあって、くる。精神的にガリガリと削られて、また倒れそうだ。
流石、妖艶な一族。
いらないところで精神力を削ってくれる。
妖艶じゃなかったら、もう少しは耐えられた。
ドッと疲れが出てくる。
「私はただ、オスカーと仲良くなりたかっただけなのに・・・」
答える気もなく、いつの間にか思っていたことを呟いていた。
「リーンネット」
オスカーが私の髪を撫でる。撫でられて伸びた巻き毛が元に戻ろうとした反動で揺れている。
「誕生日プレゼントなんかどうでもいいんだ。仲良くしたかったら、そう言ってくれればよかったんだよ」
私とほとんど話そうとしないくせに「仲良くしたかったら、そう言ってくれ」って、無茶振りしないで欲しんだけど・・・。
オスカーの無関心って、天然だったの?
あれ、素だったの?
とるに足りないとか、私のことを見下していたわけじゃなくて、ただ単に用があれば話しかけてくるだろうからってことなの?
話しかけなかった私が悪いっていうの?
「だって、オスカーと話す機会もないし・・・」
「言ってくれたら、話す機会なんていくらでも作る。そんなものの為にリーンネットが外に出るのなら、僕は誕生日を喜んで捨てるよ」
「誕生日を捨てるって、何、言ってんの?!」
私はできるはずもないことを言いだすオスカーの正気を疑った。
無関心の件からしても、うちの兄は天然というか、ちょっと考え方がおかしいだけだったようだ。
紛らわしい。
紛らわしすぎるよ、オスカー。
そんな性格だから誤解されるんだよ!
「リーンネット。外は危険がたくさんある。それを呼び寄せるのが僕の誕生日なら、そんなものはいらないだろう? 今回だって、危険なものを拾ってきてしまったじゃないか」
確かに。
ロリコンを拾ってきてしまった。
「・・・ごめんなさい」
「わかってくれたらそれでいい。ジェニングスはウォルトが馬車でこのあたりを一周してくるとばかり思っていたんだ。お前が外に憧れていたのは知っているから、それくらいは許したらしい。だが、紳士用品店に行くなんて、何を考えているんだ?!」
「紳士用品店?」
そんな名称、初めて聞いた・・・。
言われてみれば、ウォルトが連れて行ってくれたあの店にはドレスも女性用の小物もなかった。リボンや布もないし、バケツや小物入れとかもなかった。
女性用でもなく、道具類でもなく、ウォルトのお父様が持っているようなものが売っている店は、紳士用品店かもしれない。
「女性が行くような場所じゃない。あそこに行くは男だけだ。そんな場所に一人で入るのは非常識すぎる」
女性一人では行ってはいけない場所でも、エスコートしてくれる相手がいればいいんじゃないの?
「一人って言っても、ウォルトがいたわ」
ウォルトが連れて行ってくれたことを兄は忘れているのかしら?
「ウォルトじゃ、あてにならない。本当は馬車に乗せることすら駄目だ」
ウォルトがあてにならない?
それに馬車に乗るのも駄目なの?
乗馬の練習もさせてもらったことはないのに、どうして馬車にも乗ってもいけないの?
「どうして? ジェニングスは馬車に乗せることはいいって思ったんでしょ?」
「馬車に乗せることと店に入ることは違う! それにこの屋敷の敷地の外に出るというだけで、リーンネットがどれほどの危険に晒されるのか、ウォルトはわかっていない」
過保護すぎる。
無関心だと思ったのが、話しかけてくるのを待っていただけとは思えないくらいオスカーは過保護だ。
馬車に乗るだけで危険って、オスカーは何を考えているんだろう?
それに敷地の外に出るのが危険って、私とウォルトが屋敷の外に出る時にはウォルトの護衛が付いてくるのに、どうしてそんなことを言うんだろう?
「でも、オスカー。ウォルトの護衛もいたのよ?」
ウォルトだって伯爵家の嫡男なのに、その護衛が役に立たないと言うオスカーの言葉が理解できなくて私は聞いた。
王族じゃないんだから、子ども二人に護衛が何人もいたら過保護すぎるよ。
「いくらウォルトの護衛がいたとしても、それはウォルトの護衛だ。お前の護衛じゃない。そもそも、あんな護衛でお前を守りきれるとは到底思えない。その証拠がアライアス・ロクスだ。ジェニングスに聞いた話では、体調を崩していたお前をアライアス・ロクスが抱えて馬車から降りてきたそうじゃないか。ウォルトもウォルトの護衛もお前に不審人物を近付けているのに、何が護衛だ」
「・・・」
それを言われると何も言えない。
ウォルトはロリコンに私を預けることに何も危機感を持っていなかった。
私だって、好きであのロリコンに抱えられたわけじゃない。
その上、ロリコンは私を抱えて家まで来た。
移動中もずっと抱えられていたことを思い出いしただけで身体が震える。
「大丈夫か、リーンネット。お前が思っているよりも、外は危険が多いのがわかってくれただけで、今回はいい経験になったと思う」
その通りだ、兄よ。
ロリコンとか、ロリコンとか、ロリコンとか。今回のことで、私も外に出たらロリコンと遭遇する危険があることを知った。
よっぽど頭に来ているらしい。オスカーは険しい顔で吐き捨てるように言う。
「だが――初対面のくせにお前と結婚したいから父上にお会いしたいとか言い出すとは、アライアス・ロクスめ! 寝言は寝て言えばいいものを!!」
「!!!」
ちょっと待てーーー!!!
オスカーの言う通り、初対面で何、考えてんだ。あのロリコン!!!
これ以上、目を開けられないほど見開いて驚いた。といっても、ちょっと目を見張ったように見えるくらい。前も言ったけど、この目は長くて量の多い睫毛の重みで大きく開けられない。
10歳の時点でゲームとは違う展開が多すぎなんですけど?!
ゲームでウォルトの婚約者だったのは、ロリコン避けだったの?!
攻略対象を避ける為に別の攻略対象と婚約してるって、『かげろう狂詩曲~蝶は檻の中~』は私にとって積みゲーならぬ、詰みゲーじゃない!
ウォルトと婚約破棄した時期にロリコンがヒロインに攻略されていないと私に危険があるのかもしれない。私はとりあえず個別ルートと本物のシルヴィアが出てくるエンディングしかやろうと思わなかったけど、逆ハーエンディングを目指していればこのあたりはわかったかもしれない。
そうは言っても、こんなゲスな乙女ゲーで逆ハーなんか誰がしたがるって言うの?!
これは学校に行く羽目になったら、偽シルヴィアがロリコンルートか、逆ハーを目指すことを祈るしかない。
だって、ヒロインはどう見てもゲームの中の私より胸があるんだもん。
偽シルヴィアが積極的にロリコンを攻略してくれないと、ロリコンがこっちにやってくるじゃない!!
身体が勝手にガタガタと震え始める。ロリコンに抱きかかえられていたことを思い出した時は一瞬だったけど、今度の震えは止まらない。
「父上が戻るまでは傍にいてやるからな、リーンネット。父上にこのことを報告するまでは僕も眠れない」
「・・・」
ありがとう、オスカー。
無関心でいてもいなくてもいい兄だと思った私が間違っていた。
なんていい兄なんだ。
ちょっと天然すぎて困るところがあるけど。
「怖い思いをさせたお詫びに今度、市場(マーケット)に一緒に行こう」
「怖い思いって、オスカーはそんなことさせていないよ」
市場ってどんなとこかわからないけど、屋敷の外に一緒に出かけてくれるらしい。
それは嬉しいけど、兄は自分を責めすぎている。
「僕の誕生日プレゼントを買った為に、あんなのに目を付けられてしまったじゃないか」
本当になんていい兄なんだ。
涙が出そうになる。
これで誤解を招くような悪いほうに作用する天然でなければよかったのに。
「オスカーのせいじゃないよ」
「僕のせいだ。僕がお前に心配をかけたせいだ。僕のせいでお前に怖い思いをさせてしまった」
オスカーは何も悪くないのに。
私が勝手に外出して、怖い思いをしたのに、自分のせいだって言う。
悪いのは私なのに、自分を責める兄はまた私の巻き毛を撫でる。
変な感じだ。兄とは思えなくて、幼馴染だと思うくらい縁遠い存在だと思ったのに安心する。
身体の震えはいつの間にか止まっていた。
「違うよ。私がウォルトと一緒に黙って外に出たからいけないの。ジェニングスに相談すればよかったのに、それもしないで出かけたからあんなことになっちゃったんだよ。オスカーは何も悪くない」
「自分を責めなくていいんだ、リーンネット。お前は何も知らされていなかったんだから、気にしなくていい。そんなに自分を責めたいなら、次からは外出してもいいかどうかジェニングスに相談してくれたらいい。そうすれば、護衛も付けられる」
外出したくなったら護衛を付ける為にジェニングスに相談したらいいって、外はあんなに危険だと言っていたのに・・・どう考えても対応が甘いよね?
もしかして、オスカーがデレた?
仲良くなったのはあまり実感ないけど、いきなりデレですか?!
無関心に見えたのは天然(+どう接していいのかわからない)だとしても、一気にここまで甘やかしてくれなくてもいいよ。
「オスカー・・・」
なんか面映(おもは)ゆい。
「僕は父上が帰るまでここにいる。だから、今はお休み」
恥ずかしかった私はオスカーの心遣いに感謝して目を閉じる。
その後に見た夢はあの店で買い物をしているものだった。現実と違ったのはウォルトだけじゃなくてオスカーも一緒にいたこと。
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