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ウォルト
ウォルト効果がすごすぎる
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「リーンネット!」
館の外に出かける用意をしていた私の部屋にウォルトが飛び込んでくる。相変わらず、先触れや案内を必要としていないところが怖い。
私の部屋はまず居間を通らないと寝室に入れない作りだからいいけど、着替え中に来られたらと思うと本当に怖い。
婚約させられる。
無理矢理、婚約させられる。
ゲーム通り婚約者になってしまう。
ゲームで婚約者同士だったのって、ウォルトにデリカシーも他家に来ている遠慮もないせいだったのかも・・・。
でも、今は「私たち10歳だから」でどうにかなるよね?
大丈夫。
私の部屋の作りも着替えているところに飛び込んで来られるようなものじゃないし、着替えは寝室で行っているし、大丈夫。
気のし過ぎに決まってる。
笑顔を浮かべようと努力するけど、顔が強張ったまま。
「なあに、ウォルト」
平静を装って声を出す。
「迎えに来たぞ! さあ、行こう!」
ウォルトはウォルトだった!
私が引き攣った顔をしているのも気付かない。
だからデリカシーがないって言われるのよ・・・。
「ええ。わかったわ・・・」
これから出かけるのに、その前に疲れた・・・。
私の返答に気を良くしたウォルトが部屋を飛び出していく。私はウォルトを追いかけるように玄関へと向かう。
迎えに来て、ほったらかしにしてしまうなんて・・・ウォルトだから仕方ないか。
よく考えれば、私とウォルトってこんな感じだから、ゲームの私も達観してしまって「つんとお高くとまっている」とか言われちゃったんだろうな。
なんか、ゲームの私って、ウォルトに関わって形成された部分のせいで損してない?
ウォルトぐらいしか親しくしている人物が描写されていないからそう思うけど、アイリーンやマリーンがいたらもう少し人と付き合うのがうまくなっていると思う。
階下に降りたら、アンを見つけた。
「アン!」
私が呼びかけるとアンがこちらを驚いて振り向く。
「・・・お嬢様!」
「昨日は大丈夫だった?」
「おぼえていて下さったんですか? ええ。大丈夫でした」
「よかった~。私と話していたせいで、クラウスに見つかっちゃったから、本当にごめんなさい」
「そんな。お嬢様がお気になさるようなことじゃありませんよ」
私たちが話していると中々やって来ない私に痺れをきらしたウォルトが迎えにやってきた。
置いていかなければ、こうやってまた迎えに来なくていいのに。
「リーンネット! 行かないのか?」
「行く! じゃ、またね。アン」
「行ってらっしゃいませ、お嬢様」
置いていかれては堪らないので、ウォルトに駆けよる。
ウォルトは困ったやつだとばかりに私を見ていて、なんかムカつく。
「ほら、行くぞ」
「リーンネット様」
ウォルトに連れられて玄関ホールを横ぎると、執事のジェニングスに呼び止められた。
「ジェニングス」
「ウォルト様もどちらへ? 外でお遊びになるのでしょうか?」
昨日の一族の棟で話していたことが頭をよぎり、お店に出かけることは言えないような気がした。
一生、館の中にいることを定められているアイリーンとマリーンに後ろめたい気持ちと、私に与えられている情報が制限されていること。
どうして、制限した情報しか与えて貰えないのか?
ウォルトと違ってその理由を知っているだろうジェニングスに直接聞けない私は、今日の外出のことも口にできないような気がした。
ジェニングスは両親の次にこの館の権力を持っている人物だ。
私の世界の広さに制限をかけていてもおかしくない。それどころか、男性の使用人をまとめる立場のジェニングスは私の世界を作り上げているもの以外を排除している可能性のある立場の人物だ。
館から出て敷地内で遊ぶことはウォルトとやっているし、そう言おうか?
でも、後でお店に言ったことが発覚したら、とんでもないことになりそうだけど。
「リーンネットを馬車に乗せてやるんだ」
ウォルトーーー!
言っちゃったよ!
言っちゃ駄目だよ!
ジェニングスが許してくれないよ!
「そうですか。楽しんでいらしてください」
許された!!
あっさり、許された!
なんで、そう簡単に許されるの?!
昨日のアイリーンやマリーンの会話からすると、こんなに簡単に許されるとは思えないんですけど?!
私に対する情報制限とかどこ行った?!
私は外に出てもいいってこと?!
ジェニングスにどう言おうか悩んだ時間返して!
これも全部、ウォルト効果なの?!
ウォルトがこの家の家族だと思われているからなの?!
ウォルト効果、恐るべし。
「ああ」
「馬車にお乗りになられることになって、よろしゅうございましたね。リーンネット様」
「・・・ハイ」
もう、疲れて出かけたくない。
出かける前だけど、出かけたくない。
館の外に出かける用意をしていた私の部屋にウォルトが飛び込んでくる。相変わらず、先触れや案内を必要としていないところが怖い。
私の部屋はまず居間を通らないと寝室に入れない作りだからいいけど、着替え中に来られたらと思うと本当に怖い。
婚約させられる。
無理矢理、婚約させられる。
ゲーム通り婚約者になってしまう。
ゲームで婚約者同士だったのって、ウォルトにデリカシーも他家に来ている遠慮もないせいだったのかも・・・。
でも、今は「私たち10歳だから」でどうにかなるよね?
大丈夫。
私の部屋の作りも着替えているところに飛び込んで来られるようなものじゃないし、着替えは寝室で行っているし、大丈夫。
気のし過ぎに決まってる。
笑顔を浮かべようと努力するけど、顔が強張ったまま。
「なあに、ウォルト」
平静を装って声を出す。
「迎えに来たぞ! さあ、行こう!」
ウォルトはウォルトだった!
私が引き攣った顔をしているのも気付かない。
だからデリカシーがないって言われるのよ・・・。
「ええ。わかったわ・・・」
これから出かけるのに、その前に疲れた・・・。
私の返答に気を良くしたウォルトが部屋を飛び出していく。私はウォルトを追いかけるように玄関へと向かう。
迎えに来て、ほったらかしにしてしまうなんて・・・ウォルトだから仕方ないか。
よく考えれば、私とウォルトってこんな感じだから、ゲームの私も達観してしまって「つんとお高くとまっている」とか言われちゃったんだろうな。
なんか、ゲームの私って、ウォルトに関わって形成された部分のせいで損してない?
ウォルトぐらいしか親しくしている人物が描写されていないからそう思うけど、アイリーンやマリーンがいたらもう少し人と付き合うのがうまくなっていると思う。
階下に降りたら、アンを見つけた。
「アン!」
私が呼びかけるとアンがこちらを驚いて振り向く。
「・・・お嬢様!」
「昨日は大丈夫だった?」
「おぼえていて下さったんですか? ええ。大丈夫でした」
「よかった~。私と話していたせいで、クラウスに見つかっちゃったから、本当にごめんなさい」
「そんな。お嬢様がお気になさるようなことじゃありませんよ」
私たちが話していると中々やって来ない私に痺れをきらしたウォルトが迎えにやってきた。
置いていかなければ、こうやってまた迎えに来なくていいのに。
「リーンネット! 行かないのか?」
「行く! じゃ、またね。アン」
「行ってらっしゃいませ、お嬢様」
置いていかれては堪らないので、ウォルトに駆けよる。
ウォルトは困ったやつだとばかりに私を見ていて、なんかムカつく。
「ほら、行くぞ」
「リーンネット様」
ウォルトに連れられて玄関ホールを横ぎると、執事のジェニングスに呼び止められた。
「ジェニングス」
「ウォルト様もどちらへ? 外でお遊びになるのでしょうか?」
昨日の一族の棟で話していたことが頭をよぎり、お店に出かけることは言えないような気がした。
一生、館の中にいることを定められているアイリーンとマリーンに後ろめたい気持ちと、私に与えられている情報が制限されていること。
どうして、制限した情報しか与えて貰えないのか?
ウォルトと違ってその理由を知っているだろうジェニングスに直接聞けない私は、今日の外出のことも口にできないような気がした。
ジェニングスは両親の次にこの館の権力を持っている人物だ。
私の世界の広さに制限をかけていてもおかしくない。それどころか、男性の使用人をまとめる立場のジェニングスは私の世界を作り上げているもの以外を排除している可能性のある立場の人物だ。
館から出て敷地内で遊ぶことはウォルトとやっているし、そう言おうか?
でも、後でお店に言ったことが発覚したら、とんでもないことになりそうだけど。
「リーンネットを馬車に乗せてやるんだ」
ウォルトーーー!
言っちゃったよ!
言っちゃ駄目だよ!
ジェニングスが許してくれないよ!
「そうですか。楽しんでいらしてください」
許された!!
あっさり、許された!
なんで、そう簡単に許されるの?!
昨日のアイリーンやマリーンの会話からすると、こんなに簡単に許されるとは思えないんですけど?!
私に対する情報制限とかどこ行った?!
私は外に出てもいいってこと?!
ジェニングスにどう言おうか悩んだ時間返して!
これも全部、ウォルト効果なの?!
ウォルトがこの家の家族だと思われているからなの?!
ウォルト効果、恐るべし。
「ああ」
「馬車にお乗りになられることになって、よろしゅうございましたね。リーンネット様」
「・・・ハイ」
もう、疲れて出かけたくない。
出かける前だけど、出かけたくない。
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