【完結】何度ループしても私を愛さなかった婚約者が言い寄ってきたのですが、あなたとの白い結婚は10回以上経験したので、もう信じられません!

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何度ループしても私を愛さなかった婚約者が言い寄ってきたのですが、あなたとの白い結婚は10回以上経験したので、もう信じられません!

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「ヘンリエッタ。今、話題のパティスリーに行かないか? パティシエはリリシア人で本場の味らしいぞ」
「お断りします」

 美味しいものや綺麗なもの、すべての発信地であるリリシアから来たパティシエの店に誘われましたが、速攻で断わりました。
 身分が気に食わなかったのではありません。彼は親が決めた私の婚約者です。身分も財産も釣り合う家の出です。
 容姿が気に食わなかったのでもありません。金髪碧眼の彼は容姿も整っていて、それはもう女性におモテになる方でしたから。次から次へと女性のほうから声をかけてきますので、婚約者の私になど声をかけなくても不自由なことなどないのです。

「殿下。婚約者とはいえ、親しくないので、レディ・ヘンリエッタとお呼びください」
「しかしだな――」
「レディ・ヘンリエッタとお呼びください」

 取り付く島もない?
 当たり前です。彼とは何度も結婚しましたが、その度に白い結婚でした。彼は王子で美男子だったので、何度、同じ人生を繰り返しても、必ず、マリーやらデイジーやらマーガレットやらを愛妾にするのです。愛妾にしなくても、未亡人やら人妻の所に泊まりに行っていました。
 白い結婚のまま、夫の帰りを一人、寝室で待つこと十年×10回以上。
 愛想なんて尽きます。
 結婚する前から彼は別の女しか愛せないのだ、と諦観してしまうのも仕様がないでしょう。
 白い結婚十年目に自害で終わる人生歩むくらいなら、婚約解消したほうがマシだと思いました。
 実際、修道院に行ったり、別の殿方と結婚したり、彼との結婚を我慢しなかっただけで非常に幸せになりました。
 ですから、輝ける未来への第一歩である婚約解消を目指す今は塩対応です。
 愛?
 別の殿方と何度も結婚しておりますから、とっくの昔に枯れ果てて養分となりましたが、何か?

 その養分で育った愛で結ばれた夫も、時が経つにつれて嫌な面が目に付くようになりました。
 次から次へと人生を繰り返したので、次はあの人、次はこの人と変えていったので、生憎、彼のことは毎回通る通過点としか見えません。

 でも、せっかく、振り向いてくれたのだから、今回は彼にしたらどうか?
 笑えない冗談です。
 今まで決められた交流以外、一度も誘ってきませんでした。
 今回のお誘いも、酒の上での悪ふざけでした賭けに違いません。
 私が結婚した夫の中にも、賭けで求婚してきた殿方がいました。賭けだと知って、婚約解消ではなく、結婚まで持ち込んで地獄の結婚生活を差し上げました。白い結婚と、浮気は絶対に許さない監視体制と行動制限による軟禁生活。王子との結婚でされた仕打ちを賭け夫にしてやれば、十年も経たずに自殺されました。
 好意をそれほど持っていない相手ですら自殺する結婚生活だったかと思うと、十年耐えた私は愚かしいほどに彼を愛していたようです。

「何様のつもりだ! 名前すら呼ばせないとは、それでも俺の婚約者か!」
「どうぞ、名前で呼んでくださる幼馴染のレディ・イリスやメイドのマーガレットをお誘いください。可愛い男爵令嬢でも構いませんことよ」
「っ・・・!」

 非常に驚かれましたが、10回以上、寝取られていますからね。初めの3~4回は気付きませんでしたが、何度もループする人生、寝取られないように調べるようになったのですが、この王子、愛妾にする相手と愛妾にできないレディ・イリスと同時期に付き合っているんです。結婚後までに飽きられなかったら、愛妾にしてやるという、超上から目線。婚約者が居ても浮気して、相手をヤリ捨てにする性格です。
 淑女なら多少の浮気など目を瞑ります。波風立てて、面倒な女性だと思われないようにする術です。
 婚約解消したい私は波風立てまくります。
 これまでの婚約解消も彼のこの浮気を持ち出して有責で押し切りました。
 婚約解消を殿方から申し出されれば、女性側に結婚できない重大な欠陥があると思われますが、女性側から申し出れば傷は残りません。
 問題は同時期に結婚できそうな子孫が居たら結婚させようと約束した場合と、それなりに好意を持ったから婚約したという場合です。政略結婚なら、事情が変わっただけだと問題にもなりませんが、この二つは女性側に殿方を繋ぎとめて置ける魅力がないと公表しているようなものです。彼が幼馴染のレディ・イリスと付き合っているように、何年も付き合いがありながらそれなりの情を抱いてもらえなかった婚約者など、女性として欠点があると考えられてしまうのでしょう。
 十年間、白い結婚をして自害する人生×10回以上を歩んできた私に言わせてみれば、無理なものは無理。殿方が歩み寄る気がなければ、女性側から婚約解消しないと、責任押し付けられるのは、コップを倒しておいて、コップにミルクが入っていないのはお前のせいだと言っているようなものです。

 彼は顔を歪めました。

「これだから、お前のような気位だけは高い女は嫌いなんだ」
「気位が低すぎる女性は王族と婚約などできませんから。王家の血を引かない子が跡継ぎになるなど、笑い話にできませんもの」
「なんだと! マーガレットを馬鹿にするのかっ!!」
「マーガレットではないわ。婚約者が居ながら、浮気なさってるレディ・イリスよ。殿下と婚約していても浮気するわ、あの性格なら」
「イリスがそんなことをするはずがない!」
「今、留学されているレギセン王国のブレイド王子は大国の王子ですし、タッセルロウム帝国のステファノ皇子も凛々しいと社交界で人気です。レディ・イリスがクラっときても、おかしくありませんわ」

 大国の王子に、武に秀でた皇子。レディ・イリスがクラっときて追い掛け回して、激怒した彼に捨てられたことがあります。今はまだ起きていないけど、実際にあったこともあるので、ないとは言い切れません。
 その点、マーガレットは目移りせずに、彼に飽きられて捨てられるまで目移りしません。いつ、捨てられるかはわからないけど、捨てられなかったこともあるので、捨てられないように祈っています。レディ・イリスと違って、マーガレットは一途なので。

「俺と親しいイリスに嫉妬して、貶めるようなことを言うな! そもそも、可愛げのない自分が悪いのに、イリスを悪く言うその性根、俺の妃に相応しいと思っているのか?!」
「殿下にお似合いの妃はマーガレットですわ。私が嫉妬するのも、彼女よ。間違っても、レディ・イリスに嫉妬はしないわ」

 同じ浮気相手でも、尻軽に嫉妬するほど暇ではありません。貞操概念の軽いレディ・イリスは勝手にどこか行きますが、一途なマーガレットは厄介な強敵です。
 婚約解消目指している今は違いますが。

「なんだと!! イリスを悪く言うお前なんか、婚約破棄だ!! 二度と俺の前に顔を見せるな!!!」
「婚約解消、ありがとうございます!」

 嬉しすぎて自然な笑顔でそう言いました。

「婚約解消ではない! 婚約破棄だ!」
「円満解消ですわ。浮気相手を悪く言われて婚約破棄したのなら、笑いものですわよ」
「この女狐が~~~!!!」

 怒鳴られましたが、私は一途なマーガレット推しなので、こう言っておきました。

「マーガレットとお幸せに~」

 マーガレットに足りないのは身分だけです。私とは正反対ですが、彼女には好感が持てますので、応援しています。
 顔を真っ赤にして、彼は去って行きました。
 私も早速、お父様に婚約解消の件を連絡しに行きましょう。
 そのあとは可愛い弟とお茶を飲もうかしら。あの子は勉強を頑張りすぎるところがあるから、休憩させないと。

 彼との婚約解消。そこから私の新しい人生が始まるのです。
 今度は誰と結婚しようかしら?
 それとも、独身生活謳歌する?
 ウフフフフ・・・





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