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第九話
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詮索されたくない様子を察したのか、2人は話題を振ることはなく、私は好きなだけ物思いに耽ることができた。
(ゆっくり考えられると思ったけど、そうでもないみたい)
彼から物理的に距離をおいても、人里離れた宿には人里離れた宿ならではの人の目がある。都市部や大規模なホテルなら関心を持たれなくても、20室もない小規模なホテルや宿は違う。
(折角、ここに来たのに・・・。――でも、ハトガヤさんの言うように過ごすのも、手かも)
自然を楽しんで、お風呂を楽しんで、彼のことは一旦、棚に上げることもできる。
(彼のことを忘れて、贅沢な時間の使い方をするのもいいかもしれない)
彼と別れるかどうか、冷静に考えようと思った旅だったけど、彼のこと自体を考えない時間にするのも一つの考え方だ。一時的に忘れることで、彼との関係も客観的に見えるようになるかもしれない。
今のままでは、旅先ですら、彼に縛られているようなもの。
(別れたいと思っているのに、彼のことを考えているなんて。なんて、馬鹿らしいんだろう。生まれ変わっても、都合の良い女になったのは、当たり前かもしれない)
エンジン音とタイヤの摩擦音。それにハトガヤさんとミノベさんの話す声。
路線バスで向かっても変わらないだろう、BGM。
明かりが少ないせいか、眠気が襲ってくる。
・
・
・
「・・・さん、・・・タナカさん」
「? ん? はい?」
ミノベさんの声で目が覚める。
「着きましたよ」
天柳旅館に着いたらしい。
窓から見える天柳旅館はライトアップもされておらず、玄関や門の明かり以外は、中の光が漏れているだけだった。日本旅館が暗闇の中にポツンと立っているように見える。その暗闇は山であり、森である木々だ。
(ゆっくり考えられると思ったけど、そうでもないみたい)
彼から物理的に距離をおいても、人里離れた宿には人里離れた宿ならではの人の目がある。都市部や大規模なホテルなら関心を持たれなくても、20室もない小規模なホテルや宿は違う。
(折角、ここに来たのに・・・。――でも、ハトガヤさんの言うように過ごすのも、手かも)
自然を楽しんで、お風呂を楽しんで、彼のことは一旦、棚に上げることもできる。
(彼のことを忘れて、贅沢な時間の使い方をするのもいいかもしれない)
彼と別れるかどうか、冷静に考えようと思った旅だったけど、彼のこと自体を考えない時間にするのも一つの考え方だ。一時的に忘れることで、彼との関係も客観的に見えるようになるかもしれない。
今のままでは、旅先ですら、彼に縛られているようなもの。
(別れたいと思っているのに、彼のことを考えているなんて。なんて、馬鹿らしいんだろう。生まれ変わっても、都合の良い女になったのは、当たり前かもしれない)
エンジン音とタイヤの摩擦音。それにハトガヤさんとミノベさんの話す声。
路線バスで向かっても変わらないだろう、BGM。
明かりが少ないせいか、眠気が襲ってくる。
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「・・・さん、・・・タナカさん」
「? ん? はい?」
ミノベさんの声で目が覚める。
「着きましたよ」
天柳旅館に着いたらしい。
窓から見える天柳旅館はライトアップもされておらず、玄関や門の明かり以外は、中の光が漏れているだけだった。日本旅館が暗闇の中にポツンと立っているように見える。その暗闇は山であり、森である木々だ。
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