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第二話

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 彼と会った次の金曜日、私はスマホの電源を切って、会社からそのまま電車に飛び乗って旅に出た。

 スマホにはいつものように待ち合わせの連絡が入ってきていた。直前になって行けなくなった、と連絡すらせずにすっぽかされる約束の連絡だ。
 仕事が長引いた、急な仕事が入った、と後で言い訳を言われる待ち合わせの連絡。本当は・・・・・・・・・。

 スマホの電源を切っていても、帰宅してしまえば、彼が会いに来れば元の黙阿弥。また会ってしまう。
 一度、彼のいない静かなところで今後のことを決めたいと思った。

 飛び乗った電車は帰宅ラッシュで混んでいた。途中で乗り換えた路線も、まだ混んでいる。でも、終点に近付けば、ポロポロと人が降りていって、かなり過ごしやすくなる。
 行先は電車の終着駅で更にバスを乗った最終停留所にある旅館。所謂、秘境の温泉郷だ。

 会社から遠のくにつれ、本当にこれでよかったのか、迷いが頭を過る。

(生まれ変わっても、愛されていない都合の良い女でいて、どうするの)

 何度も、スマホの電源を入れそうな自分に言い聞かせる。
 終着駅に着くまで、それの繰り返しだ。

 終着駅に着き、改札口に吸い込まれていく人の波を追いかけるように出口に向かう。
 一日の仕事を終えて帰宅の途に就く人々の足は早い。駅のロータリーはタクシーも、迎えに来た車もなく、バスも発車したばかりなのか人気はまるでなかった。
 とっくに日の暮れていて、近くに見える山と薄手の長袖一枚には肌寒い空気。駅前は店も少なく、閉まっていて暗い。駅と街灯の明かりだけだ。
 見知らぬ場所の、人気のない駅は私を不安にさせる。
 ここから更にバスを探さなければいけない、というのに、後悔が押し寄せてくる。

(旅に出たことは間違いだった)
(なんで、彼と話し合わなかったんだろう?)

 別れる判断は間違っていないはずだった。生まれ変わってまで、愛してくれない彼と付き合う理由などないはずだ。

 それでも、見知らぬ土地にたった一人でいる今は、彼が恋しい。
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