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過ぎいく夏

店長、酔っ払いに絡まれてんですけどーーー!!

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 花火大会の日はすごい人出だった。花火が上がる何時間も前から駅は人でいっぱい。隣りの梅木町駅でもこれは変わらないと思う。
 というより、駅前に広場とかがあるあっちのほうがすごいことになっているかもしれない。
 とにかく、他のイベントの時と同じようにコンビニの前に臨時で販売用のスペースを設置して販売しているのが怖いぐらいの人出だった。

 一段落付いたのは花火大会が始まって、30分くらいたった頃。花火大会直前に駅に着いた人がようやく港側まで移動できて、遅れてきた人も少なくなった駅前のコンビニ前はいつもよりは人通りがある程度になった。
 店長の指示で花火大会が終わる30分前まで交代で少し休憩を入れて戻ってくると、また駅前は混雑しはじめていた。
 その多くは鹿(か)の子ちゃんよりも小さな子どもを連れた親子連れで、鹿(か)の子ちゃんは今頃どうしているんだろうと思った。
 マンションの高い階に住んでたら、花火は家から見えることもできる。今までは友達や幼馴染とそうして見ていたこともある。
 冬野さんと鹿(か)の子ちゃんが隣り同士だということしか知らないから、彼らの家がマンションなのか一戸建てなのかも知らないし、鹿(か)の子ちゃんの家から見えるかどうかすら知らない。

 今年は彼氏と花火大会行きたかったなあ、と思いつつ、呼び込みをする。
 子どもたちにはフランクフルトやアメリカンドッグやジュース。お父さんお母さんには缶ビール。

 売りながら、見知った姿が目に入った。周りが子ども連れの家族ばかりということで、どう見ても親の世代じゃないからすごく目立つ。
 柔らかそうな髪をした爽やか青年は白の薄手の長袖パーカーに細い紺のボーダーが入ったカットソー。それに紺のズボンという格好だった。

 なにで夏川先輩がここに?

 花火見物にしたって、夏川先輩のマンションからは花火が見える位置のはずだ。
 だけど、見かけたと思ったら、すぐに見えなくなったから、見間違いかと思った。一緒にいる冬野さんもお客の対応をしていて、夏川先輩を見たかどうか聞けない。

 花火の音がクライマックスに向かっていく中で、次第に客層も変わっていく。混雑で子どもが愚図る前に帰ろうとする家族連れから、動かない人混みになる前に帰ってしまおうとする人々になっていった。
 仲間連れの人々なので、既にお酒が入っている人から友達同士で来ている小学生まで様々だ。
 でも、花火大会が終わる時間帯なのでまだマシなほう。
 遅くなるにつれて、駅までの進まない人の流れにイライラしている人や酔いが回っている人が増えてくる。
 今までは花火見物の客の立場だったからよかったけど、機嫌が悪い客や酔っ払いの相手をしないといけない立場になってみたら、これは怖い。
 バイトをはじめた頃にもそんな客はいたから、店長が高校生に酔っ払いが多くなる時間帯まで対応させていられないからと、21時で上がるようにシフトを組んでくれたのは本当に助かった。
 オーナーからのプレッシャーで病んでるけど、店長グッジョブ!な、はずなんだった。

「ねえ~、ねえ~。大学生(JD)~? 高校生(JK)~? バイト終わんのいつ~?」

 只今絶賛、酔っ払い(若い男)に絡まれている最中。

 店長、酔っ払いに絡まれてんですけどーーー!!

 私は店内で休憩中の店長に心の中で叫んでしまった。
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