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深まりいく秋

でも、私が二人が付き合うのを邪魔してもいい?

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 それはその日の昼休みのことだった。
 飲み物がきれたから、速攻でお弁当を食べた。自販機は教室から離れているから行くのは時間がかかる。それに一階の食堂にしかないから、昼休みは順番待ちもするのだ。

 急いで向かった食堂で、あいつを見かけた。来なくなったんだと思ったら、ここで食べていたのか。
 だけど、それだけじゃ終わらなかった。
 あいつと一緒にいたのは私も知ってる人物で。それは夏川先輩の初代浮気する彼女だった。


 ショックでそのまま何も買わずに教室に戻ってきてしまった。

「実花。どうしたの?!」

  きららに聞かれても、さっき見たことが衝撃的過ぎて、言葉がうまく出てこない。

「え、あ、うん・・・」
「飲み物買ってくるって言ったんじゃなかったの?」

 ペットボトルを持っていないのを不審に思ったきららの質問には簡単に言葉が出た。

「・・・うん。なんかそんな気がしなくなって」

 あいつが夏川先輩の初代浮気する彼女が付き合ってるとこを見たおかげで、飲み物なんか買う気は吹っ飛んでいた。

 あいつとはとっくに別れたんだし、つきまとわれて迷惑していたんだし、新しい彼女ができたって、いいじゃない。それが夏川先輩の初代浮気する彼女だったってだけで。それだけで。

『春原がいなくなって寂しくない?』

 夏川先輩に言われた言葉が思い浮かんだ。
 もう気にしていないと思ったけど、今でも私はあいつのことを彼氏だと思っていて、吹っ切れていなかったのかもしれない。
 私のほうが別れたんだから、それじゃいけないのに。
 それなのに、感情はそう思えない。
 夏川先輩に強引に付き合わされても、鹿の子ちゃんたちと遊んでも、それでもまだ、あいつのことを引きずっている。

 あいつが付き合っているのが初代浮気した彼女だからって、私が口出ししていい問題じゃないし。
 私はもう、元がついているんだから、気にしちゃいけない。
 友達にもなれない別れ方をしたんだし、ただのクラスメイトなんだ。
 やり直す機会を夏川先輩だけじゃなくて、自分でも潰したんだし、それを今更、新しい彼女が問題ありすぎだって口を出す権利はない。
 口を出したら、夏川先輩の元彼女たちと同じだ。自分がしでかしたことがわかっていない、自分勝手な人たちになってしまう。

 それにまだ彼女かどうかもわからないし。
 そうだよ。
 まだ彼女じゃないかもしれない。一緒にいただけだし。

 でも、私が二人が付き合うのを邪魔してもいい?
 よくないよね?

 夏川先輩に初代浮気した彼女のことをあいつに言ってもらう?
 だけど、夏川先輩は初代浮気した彼女のことを避ける為に彼女を途切れないようにしているくらいだから、あいつと初代浮気した彼女が付き合っていることは好都合だろう。言ってくれないかもしれない。

 どうしよう。
 付き合っていなかったら、余計なことを言うだけになるし・・・。

「・・・」

 その時は自分のことでいっぱいで、そこに夏川先輩がいたことを私は別れの挨拶がされるまで忘れていた。
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