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カーブミラー
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タカアキは渋滞の中、ハンドルを人差し指で叩きながらイライラしていた。
どうして日本というのは、こんなに道が混んでいて、おまけにしょっちゅう意味のわからない工事ばかりしているのだろう。常にどこかで工事が行われていて、右へ寄れだの左へ寄れだので大渋滞を招いている。
やっと会社から開放されたというのに、帰宅の途でまでストレスを感じなければならないのだ。通りをまっすぐ行けばもうすぐ自宅というところで、そこは全面通行禁止になっていた。久しぶりに定時で帰ればこの調子だ。
タカアキは、深く溜息をついて左の迂回路へハンドルを切る。この迂回路は道が狭く、おまけに突き当りが狭いカーブになっていて危ないので普段はあまり通らないのだ。
この工事が始まってすぐにこの迂回路の突き当たりのカーブミラーがまるっきり明後日の方を向いてしまった。おそらく大型トラックが通った時に接触したのだろう。それからというもの、そのカーブミラーはずっと道とは反対の壁を向きっぱなしで無用の長物のオブジェに成り下がっている。市政も、あまり車通りもなく苦情が寄せられないのでずっと放置しているようだ。
いつか、苦情入れなきゃいけないな。ここは危ない。そう思いながら、カーブに差し掛かったのでタカアキはスピードを十分に落とした。すると、突然タカアキの車の前に子供が飛び出した。タカアキは驚いて急ブレーキを踏んだ。どっと嫌な汗が出た。飛び出した子供は金髪の外国人らしき男の子だった。変なTシャツを着ている。
「トマソン?」
男の子は白いTシャツを着ており、その胸には黒い文字のカタカナで縦書きに「トマソン」と書いてあった。なんて趣味の悪いTシャツを着せているのだろう。
「僕、急に飛び出したら危ないよ?」
タカアキは車の窓を開け、子供を注意したが、日本語が通じないのか、キョトンとしていた。
「Take care!」
で、いいのかな?タカアキは今度は英語で注意してみた。
すると男の子はニヤリと笑って去って行った。
タカアキは少しムッとした。子供だから仕方ないのだろうけど、親はどういう教育をしているのだ。
次の瞬間、暴走トラックが猛スピードでこちらに曲がってきた。
「あっ!危ない!」
きっとあの男の子はあのトラックにはねられた。それにも関わらず、トラックは猛スピードで走り去った。ひき逃げ!タカアキは全身の血の気が引いた。慌てて車から降りた。あの子を助けなければ。だが、そこに男の子の姿は無かった。
そ、そんな馬鹿な。確かにこっちから飛び出して来て。タカアキはそこで、重大なことに気付いた。男の子の飛び出してきた方向からは飛び出せないはずだ。
何故なら、そこは壁なのだから。それじゃあ、俺の見たものは・・・。
タカアキはそのことに気付くと、震えが止まらなくなった。
見間違いだ。うん。俺はたぶん疲れている。
そう思うことで、家路まで平静を保とうとしたのだ。
ようやくタカアキは家についた。自分の車を慣れた手つきで駐車場に入れ、玄関をあけ「ただいま。」と言った。家の中はしーんと静まり返っていた。あれ?妻はまだ帰っていないのだろうか。どこへ行ったのだろう。まあ、勝手に自分でやっておくか。冷蔵庫から適当にいろんな物を出してつまんで空腹をしのいだ。
いくら待っても家族が帰ってこないので、タカアキは不安になった。おかしいな。どこかへ行くのなら置手紙くらいして行ってもいいだろう。妻の携帯に電話してみようか。そう思っていた矢先、家の前に人の気配がした。玄関が開く音がして、数人の足音がした。妻と娘、それに何故かタカアキの兄が一緒に帰ってきた。
「兄さん、急にどうしたんだい?」
タカアキが近づくと、妻と娘、兄までも目を真っ赤に泣き腫らしていた。
皆がタカアキの前を素通りした。
そして表で車の中から何かを降ろす音と、玄関からなにやら大きな木箱が運び込まれた。
「なんなんだ、いったい。どうなってるんだ?」
妻と娘に聞いても何も答えないし、ただただ泣くだけで、まるでタカアキなど見えないかのようだった。
これは、棺桶?誰の?
タカアキが覗き込むと、そこにはタカアキ自身が眠っていた。
う、嘘だろう?なんだよ、これ。なんで、俺が棺桶に?俺、死んだのか?でも、俺は先ほど家に帰り冷蔵庫のものをつまみにビールを飲んでいたのだ。死んでなどいない。生きてる!
「お父さん、お父さん!」
妻と娘が棺桶にすがって泣いている。
「俺はここに居るよ!」
いくらタカアキが叫んでも、家族の耳には届かないようだ。
なんで?なんでこんなことに・・・。
それから、葬儀会社の準備が淡々と進み、続々と親族や会社の人間、友人などが弔問に訪れた。嘘だ、これは悪い夢だ。そうタカアキが思っていた時、弔問客の中に小さな子供を見つけた。金髪の外国人の子供。
「あっ!」
あの子だ。車の前に飛び出して来て、対向車のトラックに轢かれた、「トマソン」
じっとこちらを見ている。タカアキはふらふらと近づいて行った。
「どうして?どうしてこんなことになったんだ。教えてくれ。お前は何か知っているのだろう?」
そう問いかけても、その子はキョトンとするばかりだった。
こういう場合、英語でどう質問すればいいんだろう。
そう思っていると、突然玄関の方から叫び声がした。
「うちの子を返してください!」
ヒステリックに女が叫びながら駆け込んできた。
髪の毛を振り乱し、真っ赤に泣きはらした目からは涙が止まらない。
親族に体を羽交い絞めされながら、妻や子供に今にも危害を加えそうなその女は喚き散らした。
「うちの子は事故の巻き添えにあったんですよ!おたくのお父さんが気をつけていればこんなことにならなかったのに!」
「すみません。でも、暴走してきたのは、あのトラックなんです。うちの人だけの責任じゃ・・・。」
「責任を逃れるつもりですか?」
暴れる女を親族がなんとかなだめすかして、ようやく落ち着きを取り戻したかと思うと泣き崩れた。どうやら、俺は事故を起こし、子供を巻き添えにしてしまったようだ。じゃあ、あの金髪の子供か?旦那が外国人なのだろうか。だとしたら、あいつも俺と同じ幽霊ってわけか。
タカアキはまだ自分の死を受け入れられなかった。死とはこんなにあっけなく突然来るものなのか?そもそも痛みも何も感じなかった。確かにブレーキを踏んだ感触はあったし、子供を轢いた感覚も無かった。
そんなことをぼんやりと考えていると、後ろから誰かからとんとんと肩を叩かれた。って、俺、今幽霊じゃん。肩なんて叩かれるはずが・・・。そう思って振り向くとあの子供が立っていた。
「俺はお前を、轢いちまったのか?」
そう言うと、その子供は意味ありげに笑い、手招きをした。
タカアキは自分の棺桶の前を通り、その子に誘われるまま、着いて行った。その子は玄関を出て、どんどん歩いて行く。
「おい、どこまで行くんだよ。お前は俺に何を言いたいんだ?」
いくら話しかけてもその子は答えない。1kmくらい歩いたところで、その子はぴたりと歩くのをやめた。
「こ、ここって・・・。」
あのカーブだ。カーブミラーが、こちらを向いている。あの短時間に直したのか?
そう思っていると、そのカーブミラーに猛スピードで走ってくるトラックが映った。
「危ない!」
そう思った瞬間、体中にぎゅうっと力が入った。あ、そっか。俺、幽霊だから。
もう死なねえんだっけ?
そう思い、目を開けると、タカアキはハンドルを握っていた。
足はしっかりとブレーキを踏み、対向車線を猛スピードで走ってきたトラックもカーブを曲がり急ブレーキを踏んで止まっていた。
「えっ?」
タカアキはきょろきょろと周りを見渡した。そこは、確かにタカアキの愛車の車内で、タカアキはハンドルを握った手に大量の汗をかいていた。
タカアキは恐る恐る、自分の手を動かしてみた。
もしかして、俺、生きてる?
対向車のトラックが窓を開け、「すみません」と謝ってきた。
カーブミラーは相変わらず、壁の方を向いたままだった。
タカアキが家に帰ると、いつも通り妻が笑顔で「おかえり」と迎えてくれたのだ。
タカアキは堪えきれずに涙した。
「やだ、何泣いてんの?気持ち悪い。」
そのあくる日すぐにタカアキは役所に怒鳴りこんだ。
クレーマーと思われたって構うもんか。
「あのカーブミラーを早く直してください。何かあってからでは遅いんですよ?」
あまりの勢いに、役所では早急に対処するとの返事だった。
そして、タカアキは今、市の職員から委託された業者がカーブミラーを治す様子を見ている。作業は2時間ほどで終わった。こんなに早く済むんならさっさとやればいいんだよ、まったく。作業が終わったあとに、タカアキは違和感を感じた。カーブミラーの柱に何か書いてある。落書きか?そう思い、近くに寄って目を凝らした。そこには「トマソン」と黒いカタカナの文字が縦書きに書いてあった。
どうして日本というのは、こんなに道が混んでいて、おまけにしょっちゅう意味のわからない工事ばかりしているのだろう。常にどこかで工事が行われていて、右へ寄れだの左へ寄れだので大渋滞を招いている。
やっと会社から開放されたというのに、帰宅の途でまでストレスを感じなければならないのだ。通りをまっすぐ行けばもうすぐ自宅というところで、そこは全面通行禁止になっていた。久しぶりに定時で帰ればこの調子だ。
タカアキは、深く溜息をついて左の迂回路へハンドルを切る。この迂回路は道が狭く、おまけに突き当りが狭いカーブになっていて危ないので普段はあまり通らないのだ。
この工事が始まってすぐにこの迂回路の突き当たりのカーブミラーがまるっきり明後日の方を向いてしまった。おそらく大型トラックが通った時に接触したのだろう。それからというもの、そのカーブミラーはずっと道とは反対の壁を向きっぱなしで無用の長物のオブジェに成り下がっている。市政も、あまり車通りもなく苦情が寄せられないのでずっと放置しているようだ。
いつか、苦情入れなきゃいけないな。ここは危ない。そう思いながら、カーブに差し掛かったのでタカアキはスピードを十分に落とした。すると、突然タカアキの車の前に子供が飛び出した。タカアキは驚いて急ブレーキを踏んだ。どっと嫌な汗が出た。飛び出した子供は金髪の外国人らしき男の子だった。変なTシャツを着ている。
「トマソン?」
男の子は白いTシャツを着ており、その胸には黒い文字のカタカナで縦書きに「トマソン」と書いてあった。なんて趣味の悪いTシャツを着せているのだろう。
「僕、急に飛び出したら危ないよ?」
タカアキは車の窓を開け、子供を注意したが、日本語が通じないのか、キョトンとしていた。
「Take care!」
で、いいのかな?タカアキは今度は英語で注意してみた。
すると男の子はニヤリと笑って去って行った。
タカアキは少しムッとした。子供だから仕方ないのだろうけど、親はどういう教育をしているのだ。
次の瞬間、暴走トラックが猛スピードでこちらに曲がってきた。
「あっ!危ない!」
きっとあの男の子はあのトラックにはねられた。それにも関わらず、トラックは猛スピードで走り去った。ひき逃げ!タカアキは全身の血の気が引いた。慌てて車から降りた。あの子を助けなければ。だが、そこに男の子の姿は無かった。
そ、そんな馬鹿な。確かにこっちから飛び出して来て。タカアキはそこで、重大なことに気付いた。男の子の飛び出してきた方向からは飛び出せないはずだ。
何故なら、そこは壁なのだから。それじゃあ、俺の見たものは・・・。
タカアキはそのことに気付くと、震えが止まらなくなった。
見間違いだ。うん。俺はたぶん疲れている。
そう思うことで、家路まで平静を保とうとしたのだ。
ようやくタカアキは家についた。自分の車を慣れた手つきで駐車場に入れ、玄関をあけ「ただいま。」と言った。家の中はしーんと静まり返っていた。あれ?妻はまだ帰っていないのだろうか。どこへ行ったのだろう。まあ、勝手に自分でやっておくか。冷蔵庫から適当にいろんな物を出してつまんで空腹をしのいだ。
いくら待っても家族が帰ってこないので、タカアキは不安になった。おかしいな。どこかへ行くのなら置手紙くらいして行ってもいいだろう。妻の携帯に電話してみようか。そう思っていた矢先、家の前に人の気配がした。玄関が開く音がして、数人の足音がした。妻と娘、それに何故かタカアキの兄が一緒に帰ってきた。
「兄さん、急にどうしたんだい?」
タカアキが近づくと、妻と娘、兄までも目を真っ赤に泣き腫らしていた。
皆がタカアキの前を素通りした。
そして表で車の中から何かを降ろす音と、玄関からなにやら大きな木箱が運び込まれた。
「なんなんだ、いったい。どうなってるんだ?」
妻と娘に聞いても何も答えないし、ただただ泣くだけで、まるでタカアキなど見えないかのようだった。
これは、棺桶?誰の?
タカアキが覗き込むと、そこにはタカアキ自身が眠っていた。
う、嘘だろう?なんだよ、これ。なんで、俺が棺桶に?俺、死んだのか?でも、俺は先ほど家に帰り冷蔵庫のものをつまみにビールを飲んでいたのだ。死んでなどいない。生きてる!
「お父さん、お父さん!」
妻と娘が棺桶にすがって泣いている。
「俺はここに居るよ!」
いくらタカアキが叫んでも、家族の耳には届かないようだ。
なんで?なんでこんなことに・・・。
それから、葬儀会社の準備が淡々と進み、続々と親族や会社の人間、友人などが弔問に訪れた。嘘だ、これは悪い夢だ。そうタカアキが思っていた時、弔問客の中に小さな子供を見つけた。金髪の外国人の子供。
「あっ!」
あの子だ。車の前に飛び出して来て、対向車のトラックに轢かれた、「トマソン」
じっとこちらを見ている。タカアキはふらふらと近づいて行った。
「どうして?どうしてこんなことになったんだ。教えてくれ。お前は何か知っているのだろう?」
そう問いかけても、その子はキョトンとするばかりだった。
こういう場合、英語でどう質問すればいいんだろう。
そう思っていると、突然玄関の方から叫び声がした。
「うちの子を返してください!」
ヒステリックに女が叫びながら駆け込んできた。
髪の毛を振り乱し、真っ赤に泣きはらした目からは涙が止まらない。
親族に体を羽交い絞めされながら、妻や子供に今にも危害を加えそうなその女は喚き散らした。
「うちの子は事故の巻き添えにあったんですよ!おたくのお父さんが気をつけていればこんなことにならなかったのに!」
「すみません。でも、暴走してきたのは、あのトラックなんです。うちの人だけの責任じゃ・・・。」
「責任を逃れるつもりですか?」
暴れる女を親族がなんとかなだめすかして、ようやく落ち着きを取り戻したかと思うと泣き崩れた。どうやら、俺は事故を起こし、子供を巻き添えにしてしまったようだ。じゃあ、あの金髪の子供か?旦那が外国人なのだろうか。だとしたら、あいつも俺と同じ幽霊ってわけか。
タカアキはまだ自分の死を受け入れられなかった。死とはこんなにあっけなく突然来るものなのか?そもそも痛みも何も感じなかった。確かにブレーキを踏んだ感触はあったし、子供を轢いた感覚も無かった。
そんなことをぼんやりと考えていると、後ろから誰かからとんとんと肩を叩かれた。って、俺、今幽霊じゃん。肩なんて叩かれるはずが・・・。そう思って振り向くとあの子供が立っていた。
「俺はお前を、轢いちまったのか?」
そう言うと、その子供は意味ありげに笑い、手招きをした。
タカアキは自分の棺桶の前を通り、その子に誘われるまま、着いて行った。その子は玄関を出て、どんどん歩いて行く。
「おい、どこまで行くんだよ。お前は俺に何を言いたいんだ?」
いくら話しかけてもその子は答えない。1kmくらい歩いたところで、その子はぴたりと歩くのをやめた。
「こ、ここって・・・。」
あのカーブだ。カーブミラーが、こちらを向いている。あの短時間に直したのか?
そう思っていると、そのカーブミラーに猛スピードで走ってくるトラックが映った。
「危ない!」
そう思った瞬間、体中にぎゅうっと力が入った。あ、そっか。俺、幽霊だから。
もう死なねえんだっけ?
そう思い、目を開けると、タカアキはハンドルを握っていた。
足はしっかりとブレーキを踏み、対向車線を猛スピードで走ってきたトラックもカーブを曲がり急ブレーキを踏んで止まっていた。
「えっ?」
タカアキはきょろきょろと周りを見渡した。そこは、確かにタカアキの愛車の車内で、タカアキはハンドルを握った手に大量の汗をかいていた。
タカアキは恐る恐る、自分の手を動かしてみた。
もしかして、俺、生きてる?
対向車のトラックが窓を開け、「すみません」と謝ってきた。
カーブミラーは相変わらず、壁の方を向いたままだった。
タカアキが家に帰ると、いつも通り妻が笑顔で「おかえり」と迎えてくれたのだ。
タカアキは堪えきれずに涙した。
「やだ、何泣いてんの?気持ち悪い。」
そのあくる日すぐにタカアキは役所に怒鳴りこんだ。
クレーマーと思われたって構うもんか。
「あのカーブミラーを早く直してください。何かあってからでは遅いんですよ?」
あまりの勢いに、役所では早急に対処するとの返事だった。
そして、タカアキは今、市の職員から委託された業者がカーブミラーを治す様子を見ている。作業は2時間ほどで終わった。こんなに早く済むんならさっさとやればいいんだよ、まったく。作業が終わったあとに、タカアキは違和感を感じた。カーブミラーの柱に何か書いてある。落書きか?そう思い、近くに寄って目を凝らした。そこには「トマソン」と黒いカタカナの文字が縦書きに書いてあった。
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