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この世界に新しい風が吹く
ママになりました??
しおりを挟む「…あれ、アルベルトとハインリヒは?」
朝食の時間。
アルベルトとハインリヒがいないことに気付いたゲルト。
「アルベルトなら総長のとこ行った。」
「ハインリヒは?」
「…まだ寢てる??」
「え?」
「俺見てくるわ」
フィラットがハインリヒの部屋に向かった。
「アルベルトさん、何があったんですか」
「さぁな、」
「ラヴィーってやつの話じゃないかって話してた。」
「あーね…」
「そうですか…」
そんなことを話していると、
「え"え"え"え"ぇぇぇ!!!!!」
「何…今の…??」
「フィラットさん…??」
「どうしたんだろ…」
するとフィラットが階段から転げ落ちてきた。
「いたたたたたたた…」
「フィラットさん、どうしたんですか」
「いや!あの!さ!!??」
フィラットは動揺していた。
「…あのね!?あのね?!」
「なんだよ、早く言えよ」
「ハインリヒ、子供産んでた」(?)
「「「 は ? ? 」」」
「早く行け早く行け!!」
「押さないでください!!」
そして皆が慌ててハインリヒの部屋へ。
「「「え"え"え"え"え"え"え"!?!?」」」
そこにはハインリヒが赤子を抱いていた。
「…よーしよし…いい子いい子…」
「え?ど、どういうこと??」
「ハインリヒさん…?」
「あはは……皆さん…」
ハインリヒは苦笑いしていた。
「あ!あぅ!」
子供は目を輝かせていた。
「なんか僕…ママになりました……??」
「誰の子だよ!?いつ産んだ!?」
「いや…その…僕も分からないんです。」
「分からないってどういうことだ?!」
子供を抱っこするハインリヒを見た3人も困惑した。
「目が覚めたら、お腹の上にいたんです」
ハインリヒが目を覚ました時、腹の上にこの子供が寢ていたという。
「誰の子供なんでしょうか……?」
ハインリヒもよく分かっていないようだった。
「いや、でも…こいつ、どう見てもハインリヒの子供だろ」
ゲルトが子供の顔を覗き込んで言った。
「僕、産んだ覚えはないんですが……」
「…ピンクの髪色とか、顔も似てるだろ」
「……確かに、似てますよね…」
「うん……」
皆、ゲルトの言ったことに納得した。
子供はハインリヒと同じピンクの髪色。丸い形の目や、にこにこ笑っている顔も似ている気がした。一つ違うのは、青い目をしていた。
「パパは…レオポルトなのか…!?」
「ちっ!?違いますよ!?」
レオポルトは誤解された!
「レオポルトとは違う青い目だよ」
フィラットがじっと子供の目を見比べて言った。
「じゃあ誰ってんだ!?」
「あーぅ!」
子供が楽しそうな声を上げた。
「なぁにがそんなに嬉しいんだぁ?ん?」
ゲルトが子供を抱き上げた。子供は泣かずにきゃっきゃと笑っていた。
「…赤ちゃん、楽しそうですね」
「ゲルト、子供あやすの慣れてる??」
「いや、普通だろ」
ゲルトが身体を揺らしながら子供をあやしている。
「お前らもやってみるか?」
「じゃあ…俺も…」
レオポルトが子供を抱き上げると、いきなりぐずり始めた。
「ぅ……。うぅ…!あぅ……!!」
「あっ!これ泣きますね!返します!」
レオポルトは危険を察知。ゲルトに返した。
「……本当に、僕の子供なんですかね」
ハインリヒが呟いた。
「そうなんじゃねぇの?」
「じゃあパパは誰?」
「誰だろう…」
皆が首を傾げた時、バスティアンは水晶を片手に言った。
「……言わないでおこうか」
「は?!」
「誰なんですか!?」
「パパは誰だ!?」
「言わないでおく。」
バスティアンは目を逸らした!!
「おい、ハインリヒ。何も知らないのか?!」
「僕も本当に分からないんです……。」
「答えは出なさそうだね。…僕、先に飯行ってるよ」
バスティアンはそう言って部屋を出た。
「…じゃ、おーれも!ハインリヒも後でおいで」
「俺も先に。」
フィラットとレオポルトも部屋を出た。
「……ハインリヒ、着替えとかするだろ?こいつ、まず連れていくから。すぐ来いよ」
「はい。ありがとうございます。」
「おう。…よーしよーし…」
ゲルトは子供を抱きながら、部屋を出た。
先に、朝食の席についた4人。
バスティアンが口を開いた。
「多分察したかもしれないけど。…パパは…、ルドルフだ。」
「あぁ。なんとなく、察した。」
フィラットは頷いた。
「…おめーのパパは、わるーい奴だぞ!」
ゲルトは子供に顔を寄せて笑わせた。
子供は意味も知らずにきゃっきゃと笑った。
「…スキル、ですか?」
「多分ね。」
綺麗な青い目の持ち主は、ルドルフだった。
〝コアスキル パパとママの子作り〟
原因はこれだ。
〝コアスキル発生後、次の戦闘不能時に子供が出来る。〟
「…でも、ハインリヒはルドルフの記憶が無いんでしょ?」
「やっぱり、そうですよね。でも…、このままハインリヒさんに、訳の分からないままで居させるのも、どうかと…」
「まぁな…。それより、なんでルドルフのこと忘れてんのかね」
「…ルドルフがそうしたんでしょ」
「何のために?」
「さぁ…?」
4人にも訳分からないことがいっぱい。
「……何か忘れてる気がする。」
部屋で一人、ハインリヒが呟いた。
晴れている外を見て、何を思い出せないのか考えていた。
「だめだ。思い出せない。」
___________
その一方で、スヴェンに呼ばれたアルベルト。
「総長。アルベルトです」
「入れ。」
「失礼します。」
「……!?」
アルベルトが総長室の扉を開けると、スヴェンの膝上に座るラヴィーがいた。
「あ!アルベルトだぁ!♡♡」
「ラヴィー、待ちなさい。」
「むぅ…」
ラヴィーはスヴェンにも懐いているようだ。アルベルトはそれを見て少し戸惑った。
「そ、総長…これは……」
「…すまないね。突然この子を攫ってしまって。」
「い、いえ。」
「…アルベルト。」
「はい。」
「ラヴィーをこの世界のプレイヤーにした。」
「えっ」
「確かに、ラヴィーは敵キャラの一人だったが、プレイヤーにすることにした。」
「…は、はぁ…、?」
すぐには話を受け止めきれなかった。
「あははっ!アルベルト♡これで仲間になってもいい?!♡♡」
ラヴィーは嬉しそうにはしゃいでいた。
「……えっと…」
「アルベルト。ラヴィーのデータを。」
すると、スヴェンはアルベルトの前に画面を出した。
▬▬▬▬▬▬▬▬▬▬▬ஜ۩۞۩ஜ▬▬▬▬▬▬▬▬▬▬▬
悪魔:ラヴィー Lv.75
通常:悪魔の囁き(全体攻撃+味方回復)
:単体攻撃(2割確率で毒付与)
必殺:失楽ナイトメア(全体連続攻撃/毒・混乱)
スキル:生贄召喚(自身の必殺技後 1ターンのみ全ダメージ吸収)
▬▬▬▬▬▬▬▬▬▬▬ஜ۩۞۩ஜ▬▬▬▬▬▬▬▬▬▬▬
「………。」
アルベルトはラヴィーのデータを見た。
強そう、真っ先にそう思った。
「…アルベルト。分かってるとは思うが、君のパーティーは6人で、既に満員だ。」
「……はい。」
「…ラヴィーは新キャラで、レア度で言えば君やフィラットと同じ SSR程度に相当する。誰かを外してラヴィーをメンバーにするか、そのまま6人で活動するか…。君ら次第だ。」
「…はい。少し、考えます。」
「話は以上だ。質問はあるか?」
「……いえ。」
「では、冒険の続きを楽しんでくれ。」
「…はい。失礼します。」
アルベルトが部屋を出ようとすると、ラヴィーも付いてきた。
「アルベルト!待ってよぉ!♡」
「…ラヴィー。」
「僕のこと、メンバーに入れてくれるでしょ?」
「……すぐには決められない。」
「どうしてよ!ダディがこんなに強くしてくれたんだよ!」
「だ、ダディ?」
「さっきのイケおじだよ!」
「……まさか、総長のことか?」
「うん♡僕のこと、プレイヤーにしてくれたから、ダディって呼ぶことにしたの!♡」
「はぁ……。そうか」
「どうしてそんなに嫌そうなの!」
「……」
アルベルトは本気で考えていた。
ラヴィーをメンバーに入れるか、否か。
しつこくラヴィーが話しかけてきているが、聞き流していた。
総長のいる階から降りていくと、ギルドにいたプレイヤー達は初めて見るラヴィーに釘付けだった。
「あの子、新キャラかな」
「エロいキャラが来たんだ」
「すっげぇ、流石アルベルトさんだな」
「絶対強いじゃん…」
ラヴィーはそんなことどうでも良くて。
「アルベルト!仲間に入れてよぉ!活躍するからぁ!おねがぁい!」
「……うるさいなぁ」
アルベルトはラヴィーを引き連れて、宿に戻ろうと外へ出た。
「……わ。眩しい。」
「当たり前だ。朝だからな」
「……僕ね、光に当たれなかったの。」
「…そうなのか?」
2人は立ち止まった。
「…ダディが光を克服させてくれて、魔力?を取ってくれたみたい。ダディって凄いね!」
「……まぁ…総長だからな」
「…明るいのもいいね!最高!あははっ!」
ラヴィーは明るい外をはしゃいだ。
「……ラヴィー。」
「ん?」
「…宿に帰ろう。皆に話さなきゃいけない」
「……うん!」
そして、ラヴィーを連れて宿に戻った。
「……皆…話が…」
「「「「アルベルトぉぉ!!!!」」」」
皆が叫びながらアルベルトに飛びついた。
「な、なんだよ!?」
「アルベルトさん!」
「大変だ」
「ややこしいことになった!」
「なんだなんだ、一斉に話すな!」
メンバーが口々に話す。
「……ほら!!」
ゲルトが抱っこしていた子供。
「あぅ!あぅ!」
にっこり笑って手足を動かしていた。
「……な、なんだ、この子。」
アルベルトは眉を上げて困惑した。
「…僕の子供みたいです。」
丁度、ハインリヒが下りてきた。
「……は?」
「…僕もよく分からないんですけど…、えっ」
ハインリヒがラヴィーに気付いた。
「……ど、どなたですか」
「可愛い小悪魔、ラヴィーちゃんだよ♡」
「誰だ、このイカれ野郎連れて来たの。」
バスティアンが呆れて言った。
「イカれ野郎って酷くない!?」
「アルベルト、元いた所に戻してこいよ」
「…まぁまぁ…その…」
「むぅ……」
ラヴィーはアルベルトの腕に抱きついた。
「………。」
ハインリヒはラヴィーを見た。
着てる意味が無いくらいに露出の多い格好。防御力ゼロだな、と思ってしまった。
「うぇぇ…ふぇぇん!」
「うわ、泣いちまった!」
ゲルトが抱っこしていたはずの子供が泣き出してしまった。
「流石にもうママじゃねぇと無理そうだ」
「おいで…、」
ハインリヒが抱っこすると泣き止んだ。
「……僕、外に出ますね。」
「…ハインリヒ。」
アルベルトが止めても、ハインリヒは外へ出ていってしまった。
「……はぁ…。」
「…それで、アルベルトの話ってなんなの?」
「それは…」
「僕をメンバーに入れてほしいの!♡」
アルベルトが言おうとしたのを遮って、ラヴィーが大きい声で話し出した。
「「「「はぁ??」」」」
4人がすぐに納得する訳はない。
「俺らのパーティーは満員だ」
ゲルトが言った。
「…てかさ君、敵だよね?」
フィラットが言うとラヴィーは手を叩いた。
「よくぞ言ってくれたね!!!!」
「は?」
「僕ね、この世界のプレイヤーになったの!」
「は?何言ってんの」
「ダディ…じゃなくて、総長?がプレイヤーにしてくれた!」
4人は信じていない様子だったので、アルベルトが弁明した。
「…事実だ。総長に呼ばれたのもその話で。」
「だからって連れてくる事ねぇだろ…」
ゲルトは舌打ちした。
「お前らの言うことは分かる。分かるけど。」
「…僕が強いからさ!」
ラヴィーがそう言って、自身のデータを見せた。
♪ ブォン ⤴︎︎︎
「……」
4人は表示されたラヴィーのデータをじっくりと見た。
「…Lv75スタートじゃん…」
「攻撃と回復も可能か…」
「全ダメージ吸収…… 」
「えっへん!僕強いんだよ!SSRキャラ?らしいよ、わかんないけど!!!あははっ!」
「……」
4人は何も言えなくなった。確かにラヴィーの戦闘力は高そうであったから。
「さっきのママさんもメンバーなの?」
ラヴィーはハインリヒを指して言った。
「…あぁ。ハインリヒだ。」
「ふぅん…。あれ、戦えるの?」
「おい…」
下に見るような言い方だったので、流石にそれ以上言わないように止めた。
「アタッカー?」
「いや、ヒーラーだ。」
「え!ヒーラー?僕がいればいいじゃん!」
ラヴィーは全く悪気なく話しているようだった。
「おい、いい加減にしろ。こっちのプレイヤーになったからって、好き勝手していいってもんじゃねぇぞ。」
ゲルトは我慢ならず口を開いた。
「ごめんってば。怒んないで。」
ラヴィーはすぐにアルベルトの後ろに隠れようとする。
「ラヴィー。少し外に行ってろ。俺らだけで話がしたい。」
「…むぅ…。分かったぁ、じゃあ終わったら迎えに来てね♡♡」
「…あぁ…。」
ラヴィーは素直にアルベルトの言うことを聞いて外へ出た。
「…すぅ……はぁ…。」
アルベルトは深呼吸をして話を始めた。
「……戦闘力を考えると、確かにハインリヒといい勝負だ。というより、ハインリヒより高いだろう。」
「……でも…」
「お前らの思ってることは分かるし、俺も同じだ」
「……」
「…ハインリヒは、短い期間だけど同じ時間を過ごした大事な仲間の一人だ。だから、そう簡単に外したくない。」
アルベルトの話を聞いて皆は俯いた。
「…ラヴィーがサポート枠に入れれば良かったのにな」
重たくなってしまった空気を変えるようにバスティアンが言った。
「それだったら良かったんだがな…」
「いっそ、コンパクトに持ち運びできるならいいのにな!」
ゲルトも便乗した。皆の口角が上がった。
「でも、闇属性で僕と被るけど、大丈夫?」
バスティアンがそう言った。
「…それは…」
「ステータスも、僕と似てるけど…。ハインリヒじゃなくて、僕が抜けた方が種類に富むからいいんじゃないの?」
自分が抜けるとバスティアンから申し出たのは、他のメンバーにとって想定外だった。
「レベルの違いもあるし…それは却下」
フィラットが言うと、皆は頷いた。
「それなら、今日1日ラヴィー体験 といこうぜ。どっかのママさんは子育てに奮闘中だ」
ゲルトが笑い、それにつられた他も笑った。
「……うん。そうだな、それがいい。」
この日はラヴィーをパーティーに仮に入れて、メインステージに臨むことにした。
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