ゲーム世界に転生したら、ママになりました。

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死境に彷徨う死神の網

ラストステージの始まり

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メインステージのクリアをスヴェン総長に報告しにギルドへ行った。

メンバー全員で行くのが決まりとなっている。
「…失礼致します。メインステージクリアの報告に参りました。アルベルトです。」
「おう、入れ。」

「…今回は随分と早かったのではないか?」
「…いえ。そうでもありません。」

アルベルトはスヴェン総長に完成したマップを渡した。

「…ほぉ、島か。」
「はい。…ですが…」

「…何だ?」
「……このステージは封鎖されました。」
「…封鎖?」
「はい、そのようかと。」

「…他のパーティーから、とある所へ繋がるワープが割れたとの話があった。…君らがその当事者だったとはな。」
「申し訳ありません。」

「なぜ謝る。そういうストーリーなのかもしれないな」
「そうなのですか?」
「…いや、詳しいことは俺にもよく分からないんだが…。封鎖というのは初めてだ。君らに何があったんだ?」
「……それは…」


アルベルトはスヴェン総長に包み隠さず全て話した。他のメンバーは黙って下を俯くしか出来なかった。


「…そうだったのか。ハインリヒも災難であったな。」
「…いえ。僕の理解力が足りず…」
「いいんだ。君が謝ることではない。それに…クエストクリアしたことには変わりは無いだろう?」
スヴェン総長はハインリヒの頭を撫でた。

「だが…。アルベルト、君にはもっと判断を熟考すべきだったのではないか?」
「大変申し訳なく思っております。私の判断が遅く、行動すべきことが出来ませんでした。」

「……これから、そのステージは怪物が支配することになるだろうな。…言わば、人魚の世界を統一してしまわれたということだ。」
「……。」
「…まぁ、ストーリーの1つだと認識すれば、お前らも気にすることではないな。」

アルベルトが手を強く握っていたのをレオポルトは見ていた。


____悔しいのですか。貴方が悔しいなら、僕も悔しいです。



「しかし…アルベルト。そして、君たちも…皆、レベルが着々と上がってきているようだな。」
「はい。」
「…次のメインステージで最後かもしれないな。ハインリヒはもう少し頑張らないといけないがな」
「はい…。」

「レベルカンストの解放試験は受けるのか?」
「…はい。今のところの予定ですが。」
アルベルトは頷いて答えた。

「ほぉ。では、皆は受けるのかな?」
「俺は考えていません。」
「僕もです。」
「俺もです。」
「僕は、受けたいです。」

メンバーの考えはそれぞれのようだ。


次のステージが最後?


そうか、この人達とは次元が違うんだった。
ハインリヒは最強のメンバーを見た。

皆、顔つきが違う気がした。
Lv90も過ぎれば、こういう風に。


「…次のステージは見たのか?」
「はい。死境に彷徨う死神の網、でした。」
「…ラストステージに相応しいな。」
スヴェン総長は笑った。

「…気を抜くんじゃないぞ。」
「はい。」
「…気を付けて行ってこい。下がって良いぞ。」
「…ありがとうございます。…では、失礼致します」


「頼もしいな。」
スヴェン総長はアルベルト達の背中を見て微笑む。


そうしてメンバーはギルドを後にした。



____________



「…メインステージ、行くんですか?」
ハインリヒはアルベルトに聞いた。

「…あぁ。そのつもりだ。」
「分かりました…。」
「……怖いか?」
ハインリヒの頭を撫でた。

「…いいえ。怖くないです。…一応、勇者の一人ですから。」
「…そうだな。」

アルベルトは微笑んだ。


「もう、イチャコラしてねぇでよ。早く行こうぜ」
ゲルトは顔を顰めて歩み始めた。

それを追いかけるように皆付いて行った。


そして、メインステージにワープしようと向かうと、ワープの輪に人々が集まっていた。


「何の騒ぎだ?」


「あ!アルベルトさん!」
アルベルト達は最強パーティーなので、ギルド内では有名。他のプレイヤー達も知っている。

「どうしたんだ?」
「ワープの輪が割れていたんです!」
「……そうなのか…?」

目を向ければ確かに割れていた。

「これじゃメインステージにいけないですよ…」
「これ…どういう仕組みなのかが分からないからな…」


「よ!」
すると、オリヴァーが工具を持ってやって来た。

「オリヴァーさん。」
「輪っかが割れたから直せって言われてよ。俺もよく分からないんだが、一か八かでやってみるよ」
そう言って腕を捲った。

「……ははーん…?やっぱし、ただのガラスじゃねぇか…」

「直せそうですか…?」
「…仕組みがわからんのだよ。思ったより、複雑そうだ。総長呼んでこい。」
「そ、総長を?」
「あぁ。仕方ねぇ。魔術か何か使われてるんじゃないか??…それだったら、俺にも分からないからな。頼むしかねぇな」

オリヴァーから言われた通り、近くにいた他のプレイヤーがスヴェン総長を呼びに行った。

少しすると、スヴェン総長を連れて帰って来た。

「…オリヴァーにも出来ないのか。」
「仕方ねぇだろ総長さんよ。魔術でちゃちゃっとやってくれや」
「……。」

すると、スヴェン総長はワープの輪に手を翳した。
青い光と共に、ガラスが逆再生のように直っていく。

「……凄い!」
居合わせた人々は目を輝かせた。


「なぁんだよ、最初からスヴェンがやっときゃ良かったじゃねぇかよ」
「…オリヴァーに出来るかと思っていた。そういや、お前は物理だったな」
「期待外れってか?」
「そうじゃない」
二人は笑い合っていた。


「…な、仲良いんですか、お二人。」
ハインリヒはレオポルトに耳打ちした。
「さぁ……?」

「噂だと、二人は元勇者の同期だそうだ」
フィラットが割って入ってきた。
「そうだったんですね…」
「おじさん2人でつよつよだったらしいよ」

「あっ!ハインリヒちゃん♡」
オリヴァーがこちらを見つけて手を振った。

「……」

「オリヴァー。お前は好みを見つけるといつもそうだ。悪い癖を直せ」
「いいだろ、別に。手出しはしねぇよ。」
「そうか?」

するとスヴェン総長は人々の方を向いて話し始めた。
「皆。すまなかった。これでワープは使えるだろう。また冒険の続きを楽しんでくれ。」

人々はスヴェン総長に拍手していた。
そして、総長はアルベルトに寄ってきた。


「…アルベルト。」
「はい。」
「君だけに話す。」
「…?…はい。」


「…封鎖されたステージから魔力を感じた。」
「……魔力、ですか。」
「あぁ。少しずつだが、魔力が強くなってきている気がするんだ。」

「……もしかしたら、いつしか安全なギルド内の結界が破られ、ギルドに怪物が侵入するやもしれん。」
「…ギルドに…??」
「あぁ。まだ、分からないが…。アルベルト。暫くの間、このワープ、このギルドに注意していてほしい。もしいざという時が来たら、仲間を連れ、ここを守って欲しいんだ。」
「……承知しました。」

スヴェン総長はアルベルトにだけ言い残し、去って行った

メンバーはこそこそと話す二人を心配そうに見ていた。


魔力?…まさか。残して来たのがいけなかったか。


「…すまない。行こう。」
「…話、大丈夫だったのか?」
「あぁ。大丈夫だ。気にするな。」
明らかにアルベルトが動揺していたのは、皆分かっていた。



そして、メインステージにワープする。



_________死境に彷徨う死神の網




霧に包まれ、闇の中に聳え立つ城。


「でっけぇ……」

城へ続く長い長い橋の上に立たされている。
「い、行こう。」

メンバーは城を見上げ、歩き出した。

「もうこれホラーゲームじゃん」
「俺らにとってはラストステージなんだ、仕方ないだろ」
「……ひぃ…」

絶対に何かいるだろ、

ハインリヒは震えた。

ラストステージってめちゃくちゃ強いんじゃない?今までのも強かったけど。


長い橋を進んでいくと城は近くなればなるほど、とても大きく見える。

扉の前に立つと、軋んだ音を立てながら自然と開いた。


♪ テッテテレレー⤴︎︎︎

『クエストが解放されました』

《1 悲歌を奏でる音楽家》
《2 死神に祈る修道女》
《3 死を見つめる堕天使》


「クエスト、3つもですか?」
「多分、その3つの敵を倒していくのかと。」
「……この大きな城の中を探すんですね」
「はい。気が遠くなりそうですけど」
横を見るとレオポルトは失笑していた。


♪ テッテテレレー⤴︎︎︎

『メインクエストが解放されました』

《魔界に君臨する死神を撃破する》



「死神……これがラスボスだな」
「ラスボス……」
「あぁ。今までとは比べ物にならないくらいの強敵だろう。」
「ひぇ……」


城の中は埃っぽく冷たい空気が流れる。
大きなエントランスは、吹き抜け。天井は遥か上。

道はあちらこちらに伸びて、部屋数も計り知れない。また、階段も長く無数にあり、城の隅々には蜘蛛の巣。
蝋燭のシャンデリアが薄暗く照らしている。

「……い、行こう。」
「あぁ。まずは…その…音楽家?から行くか?」
「そうだな。でも、手掛かりが無さすぎる…」
「とりあえず、1階から調べよう。…ま、あっち行ってみようぜ。」
フィラットが右の道を指指す。

「あぁ…そうするか。」

メンバーは進み始めた。
床の異変に気付いたバスティアンが最後尾で立ち止まった。

「……何か書いてる…」
床には、不自然に泥が付いていた。
手で泥を払う。


〝私達は見ている〟


「……何だ……?」
すると。


「うわぁぁぁぁぁ……!!!」


「バスティアン?!?!」
「なんだなんだ!?!?」
「大丈夫か!?」

床が蟻地獄のように底が抜け、バスティアンが地下に落ちてしまったようだ。
メンバーは急いで駆け寄った。しかし、暗くて先が見えない。

「バスティアン!無事か!?」
アルベルトが地下に向かって叫んだ。

「うん、大丈夫。」
バスティアンは大丈夫なようだ。

「…俺らも落ちたらいいのか?」
「……引き上げるか…?」

「……いや、大丈夫だ。後で合流出来るように進んでみるよ。きっと階段もあるだろうし。」
「一人で、本当に大丈夫なのか?」
「…大丈夫だ。あまり怪物の気配がないんだ。もし何かあったら闘うし。戦闘不能になったら、それはそれで。」

バスティアンは冷静だった。
メンバーは心配であったが、バスティアンに地下の調査を頼むことにした。


「い、行くか…」

「なぁ。このステージってさ、死神のい?だったよね。」
あみと書いてと読むらしい。」
「…蜘蛛の巣を蜘蛛の網っても言うよな。」

「つまりは…罠ってことですか」
レオポルトが呟いたのに、メンバーは反応した。

「罠…?」
「バスティアンがさっき落ちたのも罠ってことか?」
「かもしれないです。」
「……罠…!?」
「…ま、まぁ…気を付けるのには変わりは無い。注意していこう」


________



「……痛いな…」

地下に落ちてしまったバスティアン。
これから一人で調査が始まる。

「某不思議の国に来たみたいだな。」
白と黒、赤で統一されており、さっきいた所より明るい。

ここは一本道で側面に部屋が幾つかあるようだ。

「……この部屋には居ないんだな…」
水晶を透かし、生体反応を見る。
すぐ横にあった部屋はなさそうだ。

「行ってみるか…」
金のドアノブに手をかけた。

「……!?…びっくりした…」

〝私達は見ている〟

様々な言語で、赤い文字で部屋中に書かれていた。

「……これは…楽譜?」
部屋中に赤の文字とばらまかれていた楽譜。

それ以外、何も無い部屋であった。

「……ということは……このフロアには音楽家の手掛かりがありそうだな……」

バスティアンはいつだって冷静だ。

「……他の部屋はどうだろう?」
隣の部屋を開けた。

「……なっ……」
生体反応があった部屋なので、警戒していた通り、敵がいた。

それは、コウモリ。
天井に大きな奴が一匹。


🦇「キャアアアー!!」


一対一の戦闘が始まった。

「丁度、新しい術を試したかったんだ。」


【1ターン目】

バスティアン
 炎の魔法陣 10725ダメージ

「…お前は炎が苦手か?」

🦇「キャアアアアアアー!」

飛びかかってきた。8283ダメージを受けた。

「…意外とこんなものか。」

【2ターン目】

 毒地獄 10046ダメージ
 コウモリは毒の呪いがかかった。少しずつダメージを受けていく。

🦇「キャアアアアアアー!」
 
飛びかかり、翼で連続攻撃。9017ダメージ

「……もう少しだ。一対一で通常の敵ならいけそうだな……」



バスティアンの予測通り、この戦闘は勝利した。

こうして、バスティアンは地下1階を進んでいく。

___________


「なぁ、バスティアン一人で行かせて大丈夫なのか?」
「……分からない。だから一刻も早く合流しないと。」

「…何が罠なのか全く分かりません。」
「あまり、何かに触れない方が安全なのかもしれないな。」
「バスティアンは意外と不用心ってか」
「ふふっ、少し抜けているんですね」

そんなことを話しながら、歩みを進めていくとフィラットが何かに気付いた。

「なぁ。」
「何だ?」

「これって……」
彼が指を指したのは、何者かの肖像画。

「…誰だ?」
「…楽譜持ってる。後ろのこれはピアノか?」
「……まさかこれ、音楽家か?」
「えっ」

肖像画に写っていたのは格好からすると白い髪をした男。顔の部分は赤で塗り潰されていて見ることが出来ない。

「…フィラット、危ないから。行こう。」
「あ、あぁ。」


この広すぎる城を調べるには、かなりの時間が必要そうだ。
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