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砂漠の国
青い戦士 レオポルト
しおりを挟む薔薇を倒し、オアシスを探すことにしたアルベルト達。
突風だった風は収まり、砂嵐はなく、視界も良好だ。
「…レオポルトさんの分析力、凄いですね。」
ハインリヒは隣を歩く綺麗な青髪を靡かすレオポルトを見た。
「…そうですかね。戦闘は焦っても上手くいきませんから。なので昔から、冷静に対処するようにしています。」
「……そうなんですね。きっと、アルベルトさん達も、レオポルトさんのそういう所に惹かれたんじゃないですか?」
「……そうだといいですけど。」
レオポルトは照れくさそうに笑った。
アルベルト達は2人の前方でわちゃわちゃしながら歩いていた。
_________
【青い戦士 レオポルト】 ______
高い分析力と冷静な闘い方で、ギルドでざわつかれていた男。
レオポルトは1人でメインステージに乗り込み、遂には第2ステージまでたった1人でクリアしそうであった。
そんな孤高の勇者はこれまでいなかった。
1人でここまで出来るのか、バグかチートなのでは無いかとも噂されたほど。
当時、アルベルト・フィラット・バスティアン・ゲルトの4人で活躍していたアルベルト達も目をつけていた。
4人はギルドで武器を磨いていたレオポルトを見ていた。
「…あれは、チートじゃないな。」
アルベルトがふっと笑って言った。
するとゲルトがつっこんだ。
「なんでそう言い切れるんだ。」
「装備だよ。レベルに相当しているだろ。チートだったらもっと飛び抜けたことをするはずだ。しかも、チートは動きが俊敏すぎるから、すぐ分かる。」
「そっかぁ、そう言われればそうだね。…バスティアンはどう思う?」
フィラットは、ギルド内に置かれているソファに腰掛けた。
「……かなり有能な戦士だね。だけど、戦闘には拘りがありそうだ。」
「くせ者ってことか?」
「そこまでは出てないけど。」
「とりあえず、いってみよう。」
アルベルトが立ち上がり、レオポルトに声をかけた。
「なぁ。君が、レオポルト君?」
「あぁ……はい。そうですけど。」
「いい装備だ。」
「……。」
アルベルトはレオポルトの磨いていた弓を見た。
「第1ステージで、特定の条件を満たさないと、手に入らないレア素材で作っただろう?」
「…よくご存知で。」
「俺も手に入れるのに苦戦した。それに、1人でやったんだろう?凄いな。君は。」
「いえ。それほどでも。」
全く笑顔を見せないレオポルトを、フィラット達はまじまじと後ろで見つめていた。
「これからも…パーティーに入らないつもりか?……もしくは…作るのか?」
「……今のところ、未定です。」
「そうか。沢山のパーティーが君をオファーしているだろう?」
「あぁ……。殆ど断りましたけど。」
「そうなのか。…なぜ?」
「…闘い方ですよ。」
「当たってる!!」
ゲルトが驚いてつい喋ってしまった。
「あぁすまんすまん。どうぞ、続けて。」
「闘い方に拘りあるってだるくね??」
フィラットがゲルトとバスティアンに、こそっと耳打ちした。
「まぁまぁ……」
「……単に攻撃するだけじゃ、効率が悪い。それを分かっていない輩が殆どです。」
「輩だって、幾つだこの少年。」
「落ち着けフィラット。」
フィラットは不満げ。
「君は他の闘い方が必要だと?」
「仰る通りです。敵を分析し、それに見合った闘い方でないと、無駄にダメージを受けていくだけです。臨機応変に対応しなければならないと考えています。」
「……そうか。素晴らしいな。」
「……いえ。」
アルベルトは真剣にレオポルトの話を聞いていた。
「……そろそろいいですか。」
レオポルトがそう言うと、武器を纏め、立ち上がった。
「あぁ。ありがとう。いい話を聞かせてもらった。」
アルベルトは微笑んだ。
「……。」
レオポルトは会釈した。
「……そうだ。まだ名乗ってなかったな。俺はアルベルト。このパーティーのキャプテンだ。」
「アルベルトさん。」
「……俺たちからも君にオファーを。断っても構わない。もし、君の気が向いたら、話し掛けてくれ。待ってる。…行こう。」
そう言って、アルベルト達は去っていった。
「……アルベルトさん…。」
当時から、アルベルト達はギルド内で最強のパーティーだと騒がれていた。
それは勿論、レオポルトの耳にも入っていた。
アルベルト達が身に付けていた装備は、どれも条件付きのレア素材でしか作られない装備であった。
レオポルトには、その装備たちとアルベルトの風格が彼らには力があると証明しているように見えた。
「……でも、俺は1人でももっと強くなれる。」
レオポルトは1人でも強くなれると信じていた。
彼のように。
レオポルトは、ギルドに飾られている巨大なドラゴンの首を見た。
伝説の男。
レベルカンスト解放試験にたった1人合格した彼のように。
レオポルトは、まだその男には会えていない。むしろ、会えた人はほとんど居ない。
それで、本当におとぎ話だったのではという噂もある。しかし、このドラゴンの首が彼は存在しているという何よりの証拠だ。
いつか、彼に追いつきたい。
レオポルトは、メインステージに出かけた。
第2ステージ。腐敗街。
その名の通り、腐敗した街。
大昔に殺人ウイルスといわれた感染症が猛威を奮った街。
それは今でも死人が生き返るという……。
「いつ来ても不気味だな。」
暫くマップを進んでいき、街の奥までレオポルトは1人で進むことができていた。
以前、最終ボスのところまで来たが、戦闘不能になり、満を持して再び訪れた。
また、やられるのではないか。
どこかある恐怖と不安を隠し、進んだ。
「大丈夫だ……。落ち着け。」
レオポルトはこの不穏な空気に押し潰されそうであった。
「……!?」
濁った空気でよく見えなかった。
大きな怪物が目の前にいた。
「うわっ!!!!!」
その大きな腕で飛ばされた。
近くにあった廃墟に身体を強くぶつけ、かなりのダメージを負ってしまった。
「…かっ…回復しなければ……!」
そう思ったすぐに、怪物が飛んできて、
レオポルトの目の前に佇んでいる。
「はっ……!!!」
終わった……
「必殺 大剣突き」
「烈銃乱舞」
「将軍の守り」
レオポルトの前に、勇者達が現れた。
「回復薬だ。飲め。」
「無茶すんなって。」
「本当に世話焼かせだよなぁ。」
「レオポルト。協力してくれるか?」
「……アルベルトさん……。」
「早く立て!勇者だろ?」
彼らの背中は輝いて、偉大に見えた。
「はい!!!!」
レオポルトは1人では不可能なことが、
仲間と闘えることによって可能になっていく瞬間を目の当たりにした。
これが、仲間?
「……俺は1人じゃできないや。」
レオポルトの拘りも全て、
吹 っ 切 れ た 。
レオポルトは立ち上がった。
その時、場違いな程爽やかな風が
レオポルトの青い髪を靡かせていた。
__________
これが、レオポルトが
アルベルトの元へ来た時の話である。
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