honeybee

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6.新しい出会い

暖かい陽を浴びて

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「…!」

次の日の朝、リシャールはナタリアの泣き声で目覚めた。

「おはよう、まぁ、どうして泣いちゃったの。泣かないで。」

リシャールは優しくナタリアを抱いた。

「リシャール様、おはようございます。ナタリア様は僕が。」
「ありがとう、ヨハン。」

「…あ…」
ぐずるナタリアを見て、ヨハンは微笑んだ。

「リシャール様…見てください。ナタリア様、綺麗な赤い瞳ですよ。」

ナタリアの瞳は、美しい赤だった。
「素敵な瞳をもらったのね。ナタリア。」



 その日、もう一つの卵が孵化した。第二子は雄だった。
名前は、リビオ 。この名前も、ロナルドがつけた。



「リビオは…ママとお揃いの緑ね。」
リビオはリシャールと同じ、エメラルドグリーンの瞳。


「リビオ様は、リシャール様とお顔も似ている気がします。」
「そう?」
「将来はきっと美人さんですね。」
「…やだもう、ヨハンったら。ねぇ、リビオ。」

二人の姿をこっそりと見ていたロナルドは笑みがこぼれた。

「ロナルドさん。」
「見ていたんですね。」
「盗み見するつもりはなかったのですが。」

「ロナルドさん、見てくださいよ。リビオ様はリシャール様にそっくりだと思いませんか。」
「…本当だ。将来が楽しみだ。ナタリアはお父さんに似てる?」
「そうですね。」
「旦那さんはハンサムな方に違いないな。」
ロナルドは笑った。


「…そうだ。あの。」
「?」
「リシャール、とお呼びしても?」
「もちろん。私も、ロナルド、と呼んでも?」
「はい。言葉も崩してください。身分も下ですから。」
「そんな。」

ロナルドが照れくさそうにしているのを見て、リシャールは笑った。

「…リシャール。」
「はい、」
「ヨハンから少し話は聞いたんだ。…その、ここに居てくれないかな。」
「…まぁ。」
「君に似合わない家だけど…。」
「そんなこと言わないで。とっても気に入ったわ。この子たちも喜ぶわ。」
「そうかな。」
「えぇ。」

「ここら辺は、自然が多いですね。」
ヨハンが窓の外を見て言った。確かに、ロナルドの家は村から外れて、木々に囲まれているような場所だった。

「素敵な場所に建てたのね。」
「気に入ってくれてよかった。」



_______________ リシャールとヨハンの新しい生活が、始まった。



ヨハンの他に働き蜂がいないため、全て自分たちで生活する。

とても新鮮で、リシャールは苦に思わなかった。むしろ、楽しんでいた。子供たちの世話も三人で。


「じゃあ、行ってくるよ。」
ロナルドは明るいうちは町に出る。

リシャールとヨハンは子供たちを連れて、散歩する。温かい陽を浴びて、幸せを感じた。


「ナタリア。」

ナタリアはアンドレに似ていた。雌だけど、アンドレの面影があった。髪も白銀で柔らかい髪質。

「貴方のパパはとっても素敵な方なのよ。いつか、会えるといいわね。」
「…リシャール様?」

先を歩いていたヨハンが振り返った。
ナタリアを抱きしめるリシャールを見て、微笑んだ。陽を浴びた親子の姿は、まるで絵画のようだった。


「…。」

心残りがある。アンドレにも、この姿を見せたかった。せめて、子供が生まれたことを伝えたかった。

アンドレの血を引いた子供たちを見るたび、二人はアンドレを思い出さずにはいられなかった。


「…リシャール様。」
「まぁ、ごめんなさい。」

リシャールの見せた笑顔は、幸せそうだった。ヨハンの瞳には、そう映った。

「今日は天気がいい。」
「そうね。」

リシャールとヨハンは、二人の元にようやく平和が訪れた気がした。

ロナルドと暮らし始めて、本当に穏やかで幸せな日々だった。


_________________________________



「ずっと、俺の傍にいてくれないか。」


天気が良くて暖かい、ある日。ロナルドはリシャールに指輪を渡した。

「…まぁ、喜んで。」

「小さな石だけど。」
ロナルドが渡した指輪には、リシャールの瞳と同じ、エメラルドがついていた。

「十分よ。とっても素敵。」

貴族としてヤプセレ家にいた時に比べて、少しだけみすぼらしい格好をしていても、リシャールは美しいままだった。

「ぱぱ!」
「まま!」

「あ!リビオ様!ナタリア様!?」
自分で走れるまで成長したリビオとナタリア。ヨハンが追いかけた。

「リビオ、ナタリア。こっちにおいで。」

「みてみて!」
「よつば!」

「まぁ、素敵!じゃあ、きっと良いことが起こるわね。」
「ほんと?」
「そうよ!よつばを見つけると、良いことが起こるのよ。」
「わぁ…!」

リシャールが子供たちと笑い合う姿は、ヨハンとロナルドにとって一番の癒しとなっていた。

「まま!こっち!あそこにあったんだよ!」
子供たちに手を引かれて走るリシャール。

「ヨハン。」
「はい。」
「俺は幸せ者だよ。」
「…全く、本当ですよ。」

ロナルドは恍惚とした表情でリシャールの姿を見ていた。

「ロナルドさんで良かったと思っています。きっと、リシャール様もそう思っていますよ。」
「そうかな。」
「…はい。」


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