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Spring
出会い
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「天川くんね。俺は浜崎律人、紅茶をたしなむ会の副部長やってます」
「……ああ、知ってる。アイドル気取りの偽善役者ってやつだろ」
「は」
夏久の一言で空気がサーっと冷め上がり、冷や汗を流した優が夏久の頭を叩いた。
「バカ! 初対面でいきなり喧嘩売るとか中学生かよ!」
「……」
「そういう噂が流れてるって話だろ。俺は知らねえ」
「噂なんて信じるなし! ごめん、浜ちゃん! 夏こういうやつでさ、悪気はないんだよ」
悪意丸出しの言いぐさだったものの、律人は苦笑いを浮かべてスっと微笑みを夏久に向ける。
「噂が気になるならさ、俺が舞台に立ってるとこ見にきて。絶対惚れさせるから」
お得意の落とし文句で夏久へウィンクすると、どういうわけか夏久の後ろにいたメンバーたちが頬を赤らめた。
「やべ、オレがドキッとしちゃった」
「ばっ、バカじゃん。男相手に」
「お前だって今惚れたって顔してんじゃねえかっ」
律人にとっては慣れモノだが、夏久は表情1つ変えようとしない。
「あんたがアイドル気取りだって言われる理由がなんとなく分かった」
「えー? 分かっちゃった? それはよかった、はは」
「……なぁ優、こいつバ」
「ちょっと黙ろうか~? 夏く~ん??」
なんともクセのある男だ。
だが律人には、夏久の存在が微かに興味深いものに感じた。
紅茶をたしなむ会__略して紅会はその名の通り紅茶を飲むサークルだ。
とはいえただ紅茶を飲むだけの場所ではなく、その時の気分によってボードゲームやアウトドアの遊びを行うなど自由性が高い。
「天川はどこのサークル入ってたの?」
「サッカー」
「へえ、なんで急に」
「あんたには関係ない」
「……」
あれー、俺……もしかして嫌われてる?
夏久は警戒心が強いのか、あまり律人の目を見ない。
優が言うように人見知りなのかとも思ったが。
「足怪我したんだよ、夏」
「え?」
「ちっ……勝手に言うなよ」
優に言われて初めて夏久の足元へ視線を向けてみれば、左右で履いている靴が違う。
「一生スポーツができない大怪我ってほどじゃなかったらしいんだけどさ、サッカーはやめるのが無難だって病院で言われたんだと」
「……そっか。天川も頑張り屋なんだな」
「どっからその発想になるんだ。お前やっぱネジ外れてんじゃねえの」
「ほんと失礼なやつ~。でも俺、そういうやつは嫌いじゃないからねえ」
「アイドルぶんなよ、ビッチ」
「いやいやいや、ちょっと待った。男にビッチはおかしくない? ていうか天職なんでっ」
律人のアイドルスマイルにため息をつく夏久。
活動拠点として借りている空き講義室は、数十人が寝泊まりできる広さがありながら隣室にシャワールームまでついている。
紅茶をたしなむ会を開設した優が考案し、許可を得てここに宿泊しては修学旅行の学生のように活動を行うのが醍醐味だ。
「……ああ、知ってる。アイドル気取りの偽善役者ってやつだろ」
「は」
夏久の一言で空気がサーっと冷め上がり、冷や汗を流した優が夏久の頭を叩いた。
「バカ! 初対面でいきなり喧嘩売るとか中学生かよ!」
「……」
「そういう噂が流れてるって話だろ。俺は知らねえ」
「噂なんて信じるなし! ごめん、浜ちゃん! 夏こういうやつでさ、悪気はないんだよ」
悪意丸出しの言いぐさだったものの、律人は苦笑いを浮かべてスっと微笑みを夏久に向ける。
「噂が気になるならさ、俺が舞台に立ってるとこ見にきて。絶対惚れさせるから」
お得意の落とし文句で夏久へウィンクすると、どういうわけか夏久の後ろにいたメンバーたちが頬を赤らめた。
「やべ、オレがドキッとしちゃった」
「ばっ、バカじゃん。男相手に」
「お前だって今惚れたって顔してんじゃねえかっ」
律人にとっては慣れモノだが、夏久は表情1つ変えようとしない。
「あんたがアイドル気取りだって言われる理由がなんとなく分かった」
「えー? 分かっちゃった? それはよかった、はは」
「……なぁ優、こいつバ」
「ちょっと黙ろうか~? 夏く~ん??」
なんともクセのある男だ。
だが律人には、夏久の存在が微かに興味深いものに感じた。
紅茶をたしなむ会__略して紅会はその名の通り紅茶を飲むサークルだ。
とはいえただ紅茶を飲むだけの場所ではなく、その時の気分によってボードゲームやアウトドアの遊びを行うなど自由性が高い。
「天川はどこのサークル入ってたの?」
「サッカー」
「へえ、なんで急に」
「あんたには関係ない」
「……」
あれー、俺……もしかして嫌われてる?
夏久は警戒心が強いのか、あまり律人の目を見ない。
優が言うように人見知りなのかとも思ったが。
「足怪我したんだよ、夏」
「え?」
「ちっ……勝手に言うなよ」
優に言われて初めて夏久の足元へ視線を向けてみれば、左右で履いている靴が違う。
「一生スポーツができない大怪我ってほどじゃなかったらしいんだけどさ、サッカーはやめるのが無難だって病院で言われたんだと」
「……そっか。天川も頑張り屋なんだな」
「どっからその発想になるんだ。お前やっぱネジ外れてんじゃねえの」
「ほんと失礼なやつ~。でも俺、そういうやつは嫌いじゃないからねえ」
「アイドルぶんなよ、ビッチ」
「いやいやいや、ちょっと待った。男にビッチはおかしくない? ていうか天職なんでっ」
律人のアイドルスマイルにため息をつく夏久。
活動拠点として借りている空き講義室は、数十人が寝泊まりできる広さがありながら隣室にシャワールームまでついている。
紅茶をたしなむ会を開設した優が考案し、許可を得てここに宿泊しては修学旅行の学生のように活動を行うのが醍醐味だ。
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