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俺、謝罪を受ける4
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「こんな話をしてすみません。重いですよね。こんなこと話したの初めてです」
「いえ……でも、どうして俺に?」
「……中里は後輩で、どうしても先輩としてカッコつけたい気持ちがあって、不倫されたとか……情けなくて言えなかったんですよね。坂崎さんは……男として憧れる部分があって、やっぱり言えなくて。……俺、見栄っ張りなんですよ。……野口さんは……こんなこと言うのどうかと思いますが、見栄を張るところがないというか……なんというか」
古沢は案外失礼なやつだな、と評価を改める。
不満げな顔をするとすみません、と謝ってきた。
「言い方が悪かったですね。悪い意味じゃないんです。引きニートっていう……野口さんのあまりよくない状態を見ているから、自分のダメなところとか、情けないところを曝け出してもいいかなって思ったんです」
「なるほど……?」
なんだかすごくオブラートに包まれた言い方をされた気がする。
恥全開だった俺にだったら何言っても恥ずかしくないってことだろう。やはり、失礼なやつだ。
「……話してみたら、すっきりしました。俺は、誰かに聞いて欲しかったのかもしれないです」
古沢は力なく微笑う。
もしかしたら、古沢もギリギリの精神状態だったのかもしれない。必死に、強くあろうとしていたのかもしれない。
仕方ない、恥を晒していた俺が、人肌脱いでやろう。
「……愚痴くらいなら、聞きますよ」
他の人に言いづらいなら、俺に言えばいい。俺は何もアドバイスなんてできないが、きっと話を聞くことくらいはできる。
古沢が目を見開く。その瞳に光が浮かんだように見えた。
「……ありがとうございます」
古沢はふわりと笑った。あまり古沢と接したことはなかったけれど、見たことのある穏やかな笑みと比べ、それは少しあどけない笑顔だった。
「いえ……でも、どうして俺に?」
「……中里は後輩で、どうしても先輩としてカッコつけたい気持ちがあって、不倫されたとか……情けなくて言えなかったんですよね。坂崎さんは……男として憧れる部分があって、やっぱり言えなくて。……俺、見栄っ張りなんですよ。……野口さんは……こんなこと言うのどうかと思いますが、見栄を張るところがないというか……なんというか」
古沢は案外失礼なやつだな、と評価を改める。
不満げな顔をするとすみません、と謝ってきた。
「言い方が悪かったですね。悪い意味じゃないんです。引きニートっていう……野口さんのあまりよくない状態を見ているから、自分のダメなところとか、情けないところを曝け出してもいいかなって思ったんです」
「なるほど……?」
なんだかすごくオブラートに包まれた言い方をされた気がする。
恥全開だった俺にだったら何言っても恥ずかしくないってことだろう。やはり、失礼なやつだ。
「……話してみたら、すっきりしました。俺は、誰かに聞いて欲しかったのかもしれないです」
古沢は力なく微笑う。
もしかしたら、古沢もギリギリの精神状態だったのかもしれない。必死に、強くあろうとしていたのかもしれない。
仕方ない、恥を晒していた俺が、人肌脱いでやろう。
「……愚痴くらいなら、聞きますよ」
他の人に言いづらいなら、俺に言えばいい。俺は何もアドバイスなんてできないが、きっと話を聞くことくらいはできる。
古沢が目を見開く。その瞳に光が浮かんだように見えた。
「……ありがとうございます」
古沢はふわりと笑った。あまり古沢と接したことはなかったけれど、見たことのある穏やかな笑みと比べ、それは少しあどけない笑顔だった。
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