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16-2.誰の行く末を駒鳥は知るの?
しおりを挟むエディとジーンは、ヴァレイが立憲君主制になることに驚いてはいたものの、既にあの国は過去のものになっているようだ。それは俺も変わらないかもしれないが。
それより、チェスターが国王として即位することの方が衝撃だったようだ。
「あんなに、王家の一員であることを、嫌がっていらっしゃったのに、皮肉なものですね」
エディは感慨深げにそう評した。
ジーンは家族がヴァレイに家族が残っているはずなのだが、帰る気はないという。
「貴族制度が廃止になれば、生活にも困っているでしょう。わたしが帰っても、足手まといになるだけです」
以前から、ジーンが、自分は家族に受け入れられていないと考えていることは、知っていた。連絡をする気もないと言っても、そうだろうと思う。
俺たちが帰るところは、ヴァレイのどこにもないのだ。
「王城での謁見の日が決まったよ」
ファルから、衝撃的なことを聞くのにも慣れてきた。
ブラッフォード公爵家に正式な招聘が来て、四十日後に、公爵夫妻とファルと俺が、王城に参内することが決まった。
ヴァレイの即位式後に、王太子が帰国して、落ちついた頃だろう。
衣装を作らなければならないし、ラプターの王城でのしきたりも覚えなければならない。
「今回はお日にちがありますから、たっぷりと意匠をこらすことができますね」
ジーンはそう言ってうれしそうに笑う。新しい式服を作るのに、心が浮き立っているのが伝わって来て可愛いと思う。
彼は、俺がヴァレイの王子だったころよりも、ここで侍従の仕事をしている方が、やりがいがあるようだ。俺の宮にはお金がなかったから、ジーンが俺を飾りたいと思うようなものを、手に入れることができなかった。
しかし、現在は、ファルさえ納得すれば、どんな衣装でも作ることができるし、宝飾品も好みのものを買うことが許される。
それは、お金のあるなしというよりは、選択肢をたくさん与えられるということなのだけれど。
おそらく、宮で使っていた夜会の衣装の方がこちらで調達するものより高くついていたはずだ。王宮に入っている商品は、種類が少なくて価格が高かった。
今は、価格に関係なく、ファルにかかれば、ほぼ、好みのものを手に入れることができるのだから、満足度は高いだろう。
「そういうわけでロビン、謁見までに金糸雀を仕上げなければならないからね」
ファルが商売人の顔をして、俺に微笑んだ。謁見はもう少し先だと思っていた俺は、油断をしていたのだ。
「わかりました。全力を尽くします」
俺は、それ以外の答えを、持ってはいない。
「そんな硬い言い方をしなくていいよ」
そう言ってファルは俺を抱き寄せて、額に口付けをした。
急ぎの作業をするからといって、精度が下がれば、魔道具としては使い物にならないも同然になるので、俺は全てを慎重に進める。
金糸雀の羽根には艶を持たせ、嘴と足には艶消し加工を施す。瞳に使う紅玉は、色が濃く、燃えるように輝くものを、カボションカットにして使用する。
陛下は、金糸雀を籠に入れることを望まなかった。
『鳥は、空を飛ぶことができるのであろう? 本物なら逃がすわけにはいかぬから、籠に入れるのも仕方ない。しかし、わたしは籠に入っていない、自由な鳥が欲しいのだ』
陛下は、自由に飛び回ってこそ鳥であるという、お考えのようだった。
彼の甥であるファル……ファルコンが、自由に飛び回ることができるように配慮されているのは、そういうことなのかもしれない。
ピューイ…ピピピ……ピューイ…ピピピ
工房に、金糸雀の華やかな鳴き声が響き渡る。
「おお、綺麗にできたな。ロビン。腕が上がった」
「ありがとう、じいちゃん」
工房で丁寧に仕上げをし、じいちゃんとおじさんに動作確認をしてもらって、金糸雀はほぼ完成した。工房内での評判も上々で、後は陛下に見せて、調整し、魔力登録するだけだ。
持ち運ぶために作ってもらった半球型の硝子容器に、金糸雀を入れて、俺はキャノメラナからシュライクに行くための馬車に、ファルと共に乗り込んだ。
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