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幼馴染の家にて

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 航平は何も言わないで俺を引っ張っていく。

「ねえ航平、手を離してよ」

「嫌だ」

 俺の願いは簡単に退けられた。航平は不機嫌なままずんずん進んでいく。力でかなうはずのない俺は諦めて腕を取られたまま一緒に歩いた。

 家の前までたどり着いてほっとしていると航平は自分の家に俺を引っ張りこもうとする。
 いやいやいや。

「えっと。俺、家に帰るから」

「何言ってんだよ。昨日と今日の話をじっくり聞かせてもらうぞ」

「ひえっ…」

 航平の威圧感がすごい。何でこんなに怒ってるの?怖い。

 航平が玄関の鍵を開けているところへ俺のおふくろが通りかかった。

「あ、お帰り!」

お母さん助けて!

「あら朱鷺、コウちゃんの家に行くの?」

「おばさんお帰りなさい。朱鷺と一緒に課題をしようと思って。今日は誰もいなくて寂しいからそのまま朱鷺に泊まってもらっていいですか?ちょうど明日は休みだし」

 航平が口から出まかせをするすると話す。おかーさんは航平をそんな子に育てた覚えはありませんよ。

「ちょっと。航平!」

「いいわよー相変わらず仲良くしてくれてありがとう。
 朱鷺、コウちゃんに迷惑かけるんじゃないわよ。
 じゃあ課題頑張ってね」

「はい、ありがとうございます」

「え、え…」

 おふくろは手をひらひらと振りながら家に入ってしまった。

 逃げ場を失った俺は絶望的な気分だ。


 そのまま俺は見慣れた航平の部屋に連れ込まれた。そして、航平の隣に座らされて顔を覗き込まれ、昨日からのことを洗いざらい白状させられた。まるで刑事の取り調べだ。こいつ警察希望じゃなかったはずだけど。そして俺は悪いことはしてない…と思う。

「何で朱鷺は俺に先に相談しなかったんだよ」

「俺のせいで航平が誰とも付き合えないって言われたのが…それがその通りだと思ったんだ。
 俺が航平の幸せの邪魔をしてるのかもしれないってさ…
 航平は俺には優しいからそう思ってても言わないかもって…」

「馬鹿なことを考えたもんだな。俺たちがいつも一緒なのは俺が朱鷺の側にいたいからだろ。俺を変なやつとくっつけようとすんなよ」

 航平が呆れたように俺を見つめる。側にいたいと言ってもらえるのはうれしいけどこれがいつまでも続かないと俺は思っている。

「俺だって航平と一緒にいたいよ。いや、あの、勝手に考えちゃってごめん…」

「まあ、いいや。俺のことを考えてくれたんだよな」

 航平がいつものように俺の髪を梳くようにして頭をなでる。

「だったら俺が幸せになれるように協力してくれねえ?」

「へ?」

 航平が幸せになれるようにって?どういうこと?

「俺が好きな子とうまくいくようにして欲しいんだ」

 俺は目を見開いてうれしそうに笑う航平の顔を見た。心臓がつきんと痛くなる。
 航平には好きな子がいたのか。そうだよな、高校生男子だもん恋愛してナンボだよな。

「おっ俺にできることなら…」

 航平のためならと思うけどこれって俺が失恋するってことだよな。ヤバい泣きそう。

「朱鷺にしかできねえから」

「俺にしかできないこと?」

 疑問符でいっぱいの俺に航平の顔が近づいてきて唇に柔らかいものが触れた。

 何?俺キスされてるの?
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