幼馴染は俺がくっついてるから誰とも付き合えないらしい

中屋沙鳥

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幼馴染と俺とで

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 朝になって俺はいつもの航平との待ち合わせ場所へと向かう。といっても隣同士なので航平ん家の玄関前だが。

「おはよ。航平。昨日は先に帰ってごめんな」

「おはよう。もー、俺、朱鷺に捨てられたかと思ったぜ」

 航平は「もう黙って先に帰るなよ」と言いながら俺に抱きついてぐりぐりと頭を首筋に擦りつける。大きな男子高校生が何をしてるんだか。それに暑い。

「ほんとにごめんって。伝言頼んどいたろ?」

 航平を引きはがして2人で肩を並べて歩く。高校に入ってから航平は背がぐんぐん伸びてしまって10㎝ぐらいの差がついてしまった。少しだけ見上げて話をしなければならなくなったのがちょっと悔しい。

「あーその伝言のせいで伊東と一緒に帰ることになっちまってさー」

 航平は不機嫌そうに顔を顰めた。

「伊東って、陸上のマネージャーやってるやつだよな。仲良いのか?」

「いや、部活仲間なだけだな」

「ふうん…」

 伊東は告らなかったのか?この様子だと、まだ進展はないのかもしれないな。
 そんなことを考えていると航平が俺の顔をひょいと覗き込んでくる。

「何、伊東のこと気になるの?」

 笑ってない航平の顔がなんとなく怖い。

「いや、別に…」

「そーかー?」

 航平はぐいと俺の肩を抱いて顔を近づけてくる。整った顔が近づいてきてどきんとする。
 航平相手にどきどきするようになったのはいつからだろうか。

「朱鷺と俺の仲なんだから好きな子ができたらすぐ教えんだぞ」

「…ああ…航平もすぐ教えろよ」

 航平は返事をしないままふふふと笑うと肩を抱いていた手を外して俺の髪を梳くように撫でた。




「航平、昨日は朱鷺と帰らなかったんだねえ。伊東と付き合うようになったのー?」

 教室に入ると吉井がにやにやしながら航平に話しかけてきた。吉井の言葉に教室にいた面子がざわめく。

「そんなんじゃねえよ。朱鷺が用事で先に帰っちまったからたまたまだよ」

「たまたまなのかー?」

 吉井は航平の弱みを握ったかのように話しかけている。

「たまたまだよ。俺は朱鷺が最優先だもん」

  そう言いながら航平が後ろから俺に抱き着いてくる。どきどきするけどいつものことだ。最優先と言われてうれしくないはずがない。でも表情には出さないよう注意した。

「はいはい、暑いから離してね」

 俺がそう言いながら航平の手を引きはがすときょとんとして俺の顔を覗きこんできた。

「えー朱鷺、冷たいー」

 伊東は俺がくっついて航平の邪魔をしているみたいに言ってたけどくっつかれているのは主に俺の方だったりする。周囲の見解は違うんだな。
 俺は意識してしまうから自分からくっつきに行けない。

「いつも通りかーお前らほんとに仲いーなー」

 吉井はそう言ってけらけらと笑った。


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