22 / 56
その22
しおりを挟む
「ジェダはどこだ? それと金髪の美女が攫われてきたはずだ、そっちの居場所も教えろ!」
サージは怯える使用人達に近付きながら自分の要求を突き付ける。
「「「・・・」」」
「さっさと答えろ! 半分ほど殺して生き残った奴から聞いても良いのだぞ!!」
怯えて積極的な反応を示さない使用人達にサージは脅迫で促した。もちろん〝はったり〟だが、何割かは本気である。人間だとしてもジェダの配下ある以上、敵側であることは間違いない。サージは敵ならば女子供でも容赦するつもりはなかった。
「ち、地下の本殿にい、いらっしゃいま・・・す!!」
「うむ。やはり地下か・・・では、金髪の女についても何か知っているか?」
ようやく使用人の中から返事があり、更にサージは自身の問いに答えた若い女にミリアの安否を尋ねる。
「女性かどうかまではわかりませんが・・・ヘリオ様達が金髪の人物を担いで連れていくのは見ました・・・」
「・・・まあ、あの体格では顔か声を確かめんと女とはわからんな・・・で、ヘリオとは誰だ?」
ミリアの身長を思い出したサージは苦笑を浮かべながら、新たに出た単語について問い質す。
「ヘリオ様は伯爵様の側近で執事長を務める・・・」
「や、やめろ!! それ以上、伯爵様を裏切るようなことは口にするな! 贄にされてしまうぞ!」
それまでも、ざわついていた使用人達だったが年配の男が大声を上げてサージと女のやり取りを妨害する。ジェダの配下である彼らからすれば、サージの質問に答えることは明確な背徳行為となるからだ。
「うるさい、黙れ! ジェダのことはもう気にする必要はないぞ! 何しろ奴は今夜中に俺が仕留めてやるのだからな!」
「は、伯爵様を! あ、あなたは盗賊ではないのですか?!」
男を黙らすために一喝したサージだったが、返答役となっていた女が逆に彼に問い掛ける。サージは知る由もなかったが、彼女達は城が賊に襲撃されたと聞かされて礼拝堂に退避していたのである。
「盗賊だと?! 俺をそんな輩と一緒にするな。俺は単にバンパイアを倒しに来ただけだ! ああ、それとミリアの救出もあったか・・・」
盗賊に間違えられたサージは心外とばかりに、改めて自分の目的を告げる。敵の命は無慈悲かつ貪欲に狙う彼だったが、物を盗んだことは一度もないし、これからもそのような行為するつもりは一切ないのだ。
「ミ、ミリア様?!」
「やはり、先程の方はミリア様だったのか!!」
ミリアの名前を出したことで使用人の何人かが、心底驚いたように声を上げる。
「なんだ? ミリアのことを知っているのか?」
ジェダとの因縁についてはミリアも認めていたが、敵側の使用人までがミリアの存在を知っているのは想定外だ。その理由を知ろうとサージは彼らに向けて追及する。
「それまでだ! お前達の裏切りは、もはや許容し難い!! 許されんぞ!!」
しかし、先程から口止めを周囲の強要していた年配の男がサージの言葉をかき消すように大声を張り上げる。恫喝された使用人達は短い悲鳴を漏らしながら、慌ててその男から距離を取る。
裏切りを指摘された負い目もあったのかもしれないが、男の身体はまるで限界まで水を注いだ水袋のように膨れつつあったからだ。
「紛れていたか!」
もはや人間とは言えぬ姿となった存在をサージは電光石火の早業で斬り伏せる。思えば礼拝堂に入る前に感じていた気配の正体はこの化け物だったに違いない。使用人達の中に潜み、その正体を隠蔽していたのである。
「しかもお前は・・・眷属ですらないな!」
「そうだ! 伯爵様には昼間でも自由に動ける忠実な配下が必要とされていたからのう。ヘルオ様から我がその役目を負っていたのだ! ふはは!」
一度はサージに左肩から腰に掛けて分断された男だったが、二つに分かれた身体を何事もなかったかのように一つへ統合すると、嘲笑を上げながら答える。
もっとも、その姿は既に人型ではなく黒い粘液状の物体と化している。正面の中央部に口と思われる大きな器官があり、そこから声が発せられていた。唇だけでなく歯や舌までが忠実に再現されており、気の弱い者ならそれを見ただけで卒倒しかねない醜い姿だ。
「なるほど、昼間の城内はお前が人間に化けて使用人達を見張っていたというわけか?!」
「そうだ、察しが良いな。いずれにしても我の身体には剣なぞ効かぬ! 裏切り者ども取りこんでくれるわ!!」
その醜い姿にも怯まずサージは敵の役割を看破するが、黒い不定形の物体は上部から四本の触手を突き出して、それぞれを鞭のようにしならせる。遠心力で加速させ、サージだけではなく礼拝堂にいる者全てを薙ぎ払おうとしているのだ。
「うるせえ! 化物がなめた口を聞くな!!」
ラージは敵の意図を素早く見抜くと臆することなく間合いを詰め、斬撃を四度煌めかす。その全てが正確に触手を断ち斬っていた。
「斬撃は効かぬと言ったはずだが・・・」
攻撃を止められた黒い物体だったが呆れたように告げると、新たな触手を生えさせる。今度は二本増やして合計六本でサージを打ちのめす、あるいは締め付けようとミミズのような触手を振るう。更にその言葉通り、切り落とされた触手は、まるでその部分だけでも自我があるとばかりに本体に吸い寄せられて再合体を果たしていた。
サージは怯える使用人達に近付きながら自分の要求を突き付ける。
「「「・・・」」」
「さっさと答えろ! 半分ほど殺して生き残った奴から聞いても良いのだぞ!!」
怯えて積極的な反応を示さない使用人達にサージは脅迫で促した。もちろん〝はったり〟だが、何割かは本気である。人間だとしてもジェダの配下ある以上、敵側であることは間違いない。サージは敵ならば女子供でも容赦するつもりはなかった。
「ち、地下の本殿にい、いらっしゃいま・・・す!!」
「うむ。やはり地下か・・・では、金髪の女についても何か知っているか?」
ようやく使用人の中から返事があり、更にサージは自身の問いに答えた若い女にミリアの安否を尋ねる。
「女性かどうかまではわかりませんが・・・ヘリオ様達が金髪の人物を担いで連れていくのは見ました・・・」
「・・・まあ、あの体格では顔か声を確かめんと女とはわからんな・・・で、ヘリオとは誰だ?」
ミリアの身長を思い出したサージは苦笑を浮かべながら、新たに出た単語について問い質す。
「ヘリオ様は伯爵様の側近で執事長を務める・・・」
「や、やめろ!! それ以上、伯爵様を裏切るようなことは口にするな! 贄にされてしまうぞ!」
それまでも、ざわついていた使用人達だったが年配の男が大声を上げてサージと女のやり取りを妨害する。ジェダの配下である彼らからすれば、サージの質問に答えることは明確な背徳行為となるからだ。
「うるさい、黙れ! ジェダのことはもう気にする必要はないぞ! 何しろ奴は今夜中に俺が仕留めてやるのだからな!」
「は、伯爵様を! あ、あなたは盗賊ではないのですか?!」
男を黙らすために一喝したサージだったが、返答役となっていた女が逆に彼に問い掛ける。サージは知る由もなかったが、彼女達は城が賊に襲撃されたと聞かされて礼拝堂に退避していたのである。
「盗賊だと?! 俺をそんな輩と一緒にするな。俺は単にバンパイアを倒しに来ただけだ! ああ、それとミリアの救出もあったか・・・」
盗賊に間違えられたサージは心外とばかりに、改めて自分の目的を告げる。敵の命は無慈悲かつ貪欲に狙う彼だったが、物を盗んだことは一度もないし、これからもそのような行為するつもりは一切ないのだ。
「ミ、ミリア様?!」
「やはり、先程の方はミリア様だったのか!!」
ミリアの名前を出したことで使用人の何人かが、心底驚いたように声を上げる。
「なんだ? ミリアのことを知っているのか?」
ジェダとの因縁についてはミリアも認めていたが、敵側の使用人までがミリアの存在を知っているのは想定外だ。その理由を知ろうとサージは彼らに向けて追及する。
「それまでだ! お前達の裏切りは、もはや許容し難い!! 許されんぞ!!」
しかし、先程から口止めを周囲の強要していた年配の男がサージの言葉をかき消すように大声を張り上げる。恫喝された使用人達は短い悲鳴を漏らしながら、慌ててその男から距離を取る。
裏切りを指摘された負い目もあったのかもしれないが、男の身体はまるで限界まで水を注いだ水袋のように膨れつつあったからだ。
「紛れていたか!」
もはや人間とは言えぬ姿となった存在をサージは電光石火の早業で斬り伏せる。思えば礼拝堂に入る前に感じていた気配の正体はこの化け物だったに違いない。使用人達の中に潜み、その正体を隠蔽していたのである。
「しかもお前は・・・眷属ですらないな!」
「そうだ! 伯爵様には昼間でも自由に動ける忠実な配下が必要とされていたからのう。ヘルオ様から我がその役目を負っていたのだ! ふはは!」
一度はサージに左肩から腰に掛けて分断された男だったが、二つに分かれた身体を何事もなかったかのように一つへ統合すると、嘲笑を上げながら答える。
もっとも、その姿は既に人型ではなく黒い粘液状の物体と化している。正面の中央部に口と思われる大きな器官があり、そこから声が発せられていた。唇だけでなく歯や舌までが忠実に再現されており、気の弱い者ならそれを見ただけで卒倒しかねない醜い姿だ。
「なるほど、昼間の城内はお前が人間に化けて使用人達を見張っていたというわけか?!」
「そうだ、察しが良いな。いずれにしても我の身体には剣なぞ効かぬ! 裏切り者ども取りこんでくれるわ!!」
その醜い姿にも怯まずサージは敵の役割を看破するが、黒い不定形の物体は上部から四本の触手を突き出して、それぞれを鞭のようにしならせる。遠心力で加速させ、サージだけではなく礼拝堂にいる者全てを薙ぎ払おうとしているのだ。
「うるせえ! 化物がなめた口を聞くな!!」
ラージは敵の意図を素早く見抜くと臆することなく間合いを詰め、斬撃を四度煌めかす。その全てが正確に触手を断ち斬っていた。
「斬撃は効かぬと言ったはずだが・・・」
攻撃を止められた黒い物体だったが呆れたように告げると、新たな触手を生えさせる。今度は二本増やして合計六本でサージを打ちのめす、あるいは締め付けようとミミズのような触手を振るう。更にその言葉通り、切り落とされた触手は、まるでその部分だけでも自我があるとばかりに本体に吸い寄せられて再合体を果たしていた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
【R18】異世界なら彼女の母親とラブラブでもいいよね!
SoftCareer
ファンタジー
幼なじみの彼女の母親と二人っきりで、期せずして異世界に飛ばされてしまった主人公が、
帰還の方法を模索しながら、その母親や異世界の人達との絆を深めていくというストーリーです。
性的描写のガイドラインに抵触してカクヨムから、R-18のミッドナイトノベルズに引っ越して、
お陰様で好評をいただきましたので、こちらにもお世話になれればとやって参りました。
(こちらとミッドナイトノベルズでの同時掲載です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる