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閉ざされた街
21 夜明け
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「よ、夜が明けたよ!」
疲れた身体を階段の端に寄り掛からせていたダレスの耳に、屋根裏から降りて来たエイラの声が伝わる。
怪物達は陽の光を苦手としている。アルディアが姿を消してからも散発的に続いた敵の襲撃は、これで終わりを迎えたのだった。
「朝か・・・」
「大丈夫かい?! 怪我をしているのかい?!」
よろめくように動くダレスの様子に、エイラは足早に階段を降りて彼を支える。周囲は怪物の死体で酷い有様だが、エイラにとってはダレスの無事を確認出来たことで頭が一杯らしい。
「・・・大丈夫だ。怪我はない、疲れているだけだ」
「良かった! でも凄いよ! たった三人であの数の化け物を退けるなんて・・・」
そこまで口にしながらエイラは一人足らないことに気付いたのだろう。それまでの浮かべていた笑みを凍りつかせる。
「・・・あ、あの女司祭さんは?!」
既に察していたと思われるエイラだが、それが行うのが義務であるかのように姿を消したアルディアの存在を問う。
「アルディアは・・・彼女は自分を囮にして怪物達の多くを外に連れて行った・・・安否は不明だ・・・」
「そ、そんな・・・あたし達のために・・・」
客観的事実を絞り出すように口にしたダレスの返答に、エイラはショックを受ける。そのまま腰を抜かしそうになったので、今度はダレスがエイラの身体を支えてやらなければならなかった。
「エイラ・・・あんた達のせいではない・・・アルディアが自身の判断で選択したことだ・・・」
簡単に割り切れるはずがないとはわかっていたが、ダレスはエイラを慰める。アルディアの安否を想うと胸が苦しくなるのはダレスも一緒だった。
「おい! ダレス! そんな娼婦とイチャついている場合じゃないだろう!!」
だが、これまで無言で二人のやり取りを眺めていたミシャが怒号を発する。
厳密に言えばダレスはエイラが娼婦だから厚遇したわけではない。それでも姿を消した主人の後を追えずに、見ず知らずの人間のために命を賭けて戦う破目になったミシャの苛立ちは理解出来た。
消えたアルディアの安否を確認しようともせずに、目の前の美女の歓心を買おうとしているように見えたのだろう。
「そんな娼婦だって?!」
「・・・わかっている! ミシャ、最低限の食事を終えたら、アルディアの行方を追うぞ! 彼女はきっと無事だ!」
ミシャからぶつけられた敵意に反応するエイラの肩を抑えながら、ダレスは新たな指示をミシャに伝える。この二人はどちらも感情の起伏が激しい。下手な言い訳よりも行動で証明するのが得策だと思われた。
「・・・」
「・・・ああ、そうだ! ダレス! わかっているならそれで良い!」
幸いなことにエイラはミシャへの反論を飲み込んでくれ、ミシャもダレスがアルディアをこのまま見捨てる気がないと判明したことから態度を軟化させる。
「エイラ、悪いがここの片付けとバリケードの再補強は女将と相談して、生存者達でやってくれ! ミシャ、焦る気持ちはわかるが、俺達には最低限での食事と水分補給が必要だ。出発はそれが済んだ後だ!」
「ええ! 任せておくれ!」
「わかった・・・」
ダレスはエイラとミシャに具体的な指示を与え行動を促す。このまま二人を一緒にしては再び不和の原因となるだろう。ならば、喧嘩をする余裕を与えないのが最善の策である。
もちろん、ダレス自身もアルディア救出への準備を開始する。寝室に残していたバックパックを取りに戻って携帯食で腹を満たし、屋敷内の井戸で喉の渇きを癒しつつ水袋も一杯にする。
「では、行くぞ!」
同じく準備を終えたミシャにダレスは出発を告げた。
疲れた身体を階段の端に寄り掛からせていたダレスの耳に、屋根裏から降りて来たエイラの声が伝わる。
怪物達は陽の光を苦手としている。アルディアが姿を消してからも散発的に続いた敵の襲撃は、これで終わりを迎えたのだった。
「朝か・・・」
「大丈夫かい?! 怪我をしているのかい?!」
よろめくように動くダレスの様子に、エイラは足早に階段を降りて彼を支える。周囲は怪物の死体で酷い有様だが、エイラにとってはダレスの無事を確認出来たことで頭が一杯らしい。
「・・・大丈夫だ。怪我はない、疲れているだけだ」
「良かった! でも凄いよ! たった三人であの数の化け物を退けるなんて・・・」
そこまで口にしながらエイラは一人足らないことに気付いたのだろう。それまでの浮かべていた笑みを凍りつかせる。
「・・・あ、あの女司祭さんは?!」
既に察していたと思われるエイラだが、それが行うのが義務であるかのように姿を消したアルディアの存在を問う。
「アルディアは・・・彼女は自分を囮にして怪物達の多くを外に連れて行った・・・安否は不明だ・・・」
「そ、そんな・・・あたし達のために・・・」
客観的事実を絞り出すように口にしたダレスの返答に、エイラはショックを受ける。そのまま腰を抜かしそうになったので、今度はダレスがエイラの身体を支えてやらなければならなかった。
「エイラ・・・あんた達のせいではない・・・アルディアが自身の判断で選択したことだ・・・」
簡単に割り切れるはずがないとはわかっていたが、ダレスはエイラを慰める。アルディアの安否を想うと胸が苦しくなるのはダレスも一緒だった。
「おい! ダレス! そんな娼婦とイチャついている場合じゃないだろう!!」
だが、これまで無言で二人のやり取りを眺めていたミシャが怒号を発する。
厳密に言えばダレスはエイラが娼婦だから厚遇したわけではない。それでも姿を消した主人の後を追えずに、見ず知らずの人間のために命を賭けて戦う破目になったミシャの苛立ちは理解出来た。
消えたアルディアの安否を確認しようともせずに、目の前の美女の歓心を買おうとしているように見えたのだろう。
「そんな娼婦だって?!」
「・・・わかっている! ミシャ、最低限の食事を終えたら、アルディアの行方を追うぞ! 彼女はきっと無事だ!」
ミシャからぶつけられた敵意に反応するエイラの肩を抑えながら、ダレスは新たな指示をミシャに伝える。この二人はどちらも感情の起伏が激しい。下手な言い訳よりも行動で証明するのが得策だと思われた。
「・・・」
「・・・ああ、そうだ! ダレス! わかっているならそれで良い!」
幸いなことにエイラはミシャへの反論を飲み込んでくれ、ミシャもダレスがアルディアをこのまま見捨てる気がないと判明したことから態度を軟化させる。
「エイラ、悪いがここの片付けとバリケードの再補強は女将と相談して、生存者達でやってくれ! ミシャ、焦る気持ちはわかるが、俺達には最低限での食事と水分補給が必要だ。出発はそれが済んだ後だ!」
「ええ! 任せておくれ!」
「わかった・・・」
ダレスはエイラとミシャに具体的な指示を与え行動を促す。このまま二人を一緒にしては再び不和の原因となるだろう。ならば、喧嘩をする余裕を与えないのが最善の策である。
もちろん、ダレス自身もアルディア救出への準備を開始する。寝室に残していたバックパックを取りに戻って携帯食で腹を満たし、屋敷内の井戸で喉の渇きを癒しつつ水袋も一杯にする。
「では、行くぞ!」
同じく準備を終えたミシャにダレスは出発を告げた。
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