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アイデア泥棒
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仕事帰りの夕暮れ、男はふと目に留まった古びた文房具店に足を踏み入れた。埃の匂い漂う店内で、ひときわ黒光りするペンが目を引いた。それは何の装飾もなく、ただ異様に手になじむ感触が印象的だった。
「気になりますか?」
不意に声をかけてきたのは、痩せた老人。古びたスーツを身にまとい、どこか陰のある瞳で男を見据えている。
「それは、他人の“アイデア”を記すことができるペンです。まだ誰も形にしていない、未来の発想をね。」
「つまり、誰かのアイデアを盗むってことか?」
「盗む、というより……覗き見るんです。この世界に無数に生まれつつある思考を先取りしてね。」
その言葉の意味を測りかねた男だったが、妙な魅力に抗えずペンを購入した。
自宅に戻ると、男はさっそくペンを握り、ノートを開いた。すると、自分の意志に反して手が滑らかに動き出した。
【コンパクトな家庭用水素エネルギー装置】
「なんだこれ……」
突拍子もないアイデアに男は半信半疑だったが、試しに友人の技術者に見せることにした。すると数日後、友人から驚きの連絡が入った。
「このアイデア、すごいぞ!特許を取れば一財産築ける!」
その言葉通り、特許が認可されると、複数の企業から高額の買収オファーが舞い込んだ。
男はペンの力を確信し、次々とアイデアを書き記していった。
ペンを握るたび、ノートには次々と画期的なアイデアが記される。
【3Dプリンター対応の建築資材】
【全自動果物収穫ロボット】
【脳波で操作するスマート家電】
男はペンが導くアイデアで巨万の富を築き、名声を得た。
「このペンさえあれば、世界中のすべてのアイデアを俺のものにできる!」
男はさらに高額な発明を狙い、ペンを手放せなくなっていった。
ある夜、男はいつものようにペンを走らせていた。ところが、その筆運びはこれまでとはどこか違う。ノートに現れたのは奇妙な装置の設計図だった。
【高度な障壁を突破する装置】
【特殊な認証を回避するシステム】
「面白いじゃないか。きっと企業も興味を持つだろう。」
男はその設計図の特許を取るための準備に取り掛かった。
ところがその数日後、警察が男の自宅を訪れた。
「あなたを逮捕します。」
「なんだって!? 俺が何をした!」
警察の話によると、男が開発した装置は、最近多発している連続金庫破り事件で使われたものと一致しているという。
「そんなバカな! 俺はただこのペンで……」
そこで男はハッとした。これまでペンが書き出していた「アイデア」は、他人の発想そのもの――そして、今回の設計図は、泥棒たちが考えていた「犯行の計画」だったのだ。
牢獄の中、男は再びペンを握りしめた。ペン先が滑らかに動き出す。
【完全犯罪を実現する方法】
ノートに浮かび上がる計画を見つめ、男は乾いた笑いを漏らした。
「気になりますか?」
不意に声をかけてきたのは、痩せた老人。古びたスーツを身にまとい、どこか陰のある瞳で男を見据えている。
「それは、他人の“アイデア”を記すことができるペンです。まだ誰も形にしていない、未来の発想をね。」
「つまり、誰かのアイデアを盗むってことか?」
「盗む、というより……覗き見るんです。この世界に無数に生まれつつある思考を先取りしてね。」
その言葉の意味を測りかねた男だったが、妙な魅力に抗えずペンを購入した。
自宅に戻ると、男はさっそくペンを握り、ノートを開いた。すると、自分の意志に反して手が滑らかに動き出した。
【コンパクトな家庭用水素エネルギー装置】
「なんだこれ……」
突拍子もないアイデアに男は半信半疑だったが、試しに友人の技術者に見せることにした。すると数日後、友人から驚きの連絡が入った。
「このアイデア、すごいぞ!特許を取れば一財産築ける!」
その言葉通り、特許が認可されると、複数の企業から高額の買収オファーが舞い込んだ。
男はペンの力を確信し、次々とアイデアを書き記していった。
ペンを握るたび、ノートには次々と画期的なアイデアが記される。
【3Dプリンター対応の建築資材】
【全自動果物収穫ロボット】
【脳波で操作するスマート家電】
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「このペンさえあれば、世界中のすべてのアイデアを俺のものにできる!」
男はさらに高額な発明を狙い、ペンを手放せなくなっていった。
ある夜、男はいつものようにペンを走らせていた。ところが、その筆運びはこれまでとはどこか違う。ノートに現れたのは奇妙な装置の設計図だった。
【高度な障壁を突破する装置】
【特殊な認証を回避するシステム】
「面白いじゃないか。きっと企業も興味を持つだろう。」
男はその設計図の特許を取るための準備に取り掛かった。
ところがその数日後、警察が男の自宅を訪れた。
「あなたを逮捕します。」
「なんだって!? 俺が何をした!」
警察の話によると、男が開発した装置は、最近多発している連続金庫破り事件で使われたものと一致しているという。
「そんなバカな! 俺はただこのペンで……」
そこで男はハッとした。これまでペンが書き出していた「アイデア」は、他人の発想そのもの――そして、今回の設計図は、泥棒たちが考えていた「犯行の計画」だったのだ。
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