上 下
7 / 14
1章

1-4-2

しおりを挟む
 事情聴取は形式的なものだった。

 どちらかというとこちらを王城に連れてくる口実なのだろう。

 さて、私たちをこの国はどう扱うのかしら、それが問題ね。

 詩織は考えにふけりながら、カップの紅茶を飲む。

 今は城の応接室で待機している。

 横には亜美が座っていて、いまだ心細そうだったので、彼女の手を握ったままである。

 あちらのソファにいる圭太は給仕のメイドに鼻を伸ばしている。

 頭が痛い、時と場所は考えて欲しい。

 里奈は近くに幼馴染みがいるからか、意外と平気そうだ。

 そうして時間を過ごしていると、

「異世界人の方々、ようこそ王国へ。僕は由緒正しき王国貴族のボボンと言う。以後、よろしくお願いするよ、ええ」

 ボボンという若い男は忠告と言いながら、ぺらぺらとしゃべる。

 ああ、これはダメね。能力のあるなしではなく、信頼できる味方になり得るかという点で。

 他者を見くだす言葉や仕草の数々。

 貴族の悪い手本のような選民思想。

 それに、隠しているが、詩織に向けるボボンの目は女を見定める目だ。

 よからぬことを考えているに違いない。

 隣の亜美もそういうのに敏感なのだろう、さっきから握っている手がきゅっと固くなっている。

 ただ、収穫もあった。

 亜美から聞いたソルトという人物と図らずも面識を持てるらしい。

 国王から命じられて私たちの監視任務についた?

 国王に信任されるってことは有能とみてよさそうね。

 監視というのが少し不安が残るけど。

 あとは直接会って人となりを確かめましょう。 

 そして、そのチャンスは早かった。ボボンが言いたいことだけ言って出て行ったのと入れ替わるように、ソルトはやってきた。

 長身で顔立ちが爽やか。

 軍服も着慣れている。

 見た目で詩織が騙されることはないが、見た目の印象は大事である。

 詩織が期待して話しかけようとした時だった。

 冷や水を浴びせかけられた。

 圭太が普段見せない積極性でソルトに突っかかっていく。

「とぼけたってムダだぞ。ちゃんと知ってるんだよ。あんたが女癖が悪いって話もな!」

 まさか、ボボンのあの話を真に受けたっていうの……。

 そして、圭太はソルトと話し合うことすらせず、なんのかんの言って応接室の外へ追い返してしまった。

 扉の前で得意げに胸をそらす圭太。

 詩織はその背中を冷徹に見つめていた。

 噂に踊らされる、話を聞こうとしない、私たちの意見も聞かない。

 信頼できそうにないわね。

 詩織は圭太の評価を下げると立ち上がる。

「私は行くけど、市村さん、あなたはどうする?」

「えっと、私も。お礼、言いたいので」

「なら、行きましょう」

 詩織と亜美が圭太の横を通り過ぎようとする。

 圭太が話しかけてくる。

「詩織先輩、どこに行くんです?」

「お手洗いよ」

「あのソルトってヤツがまだ近くにいるかもしれないんで、何かあったら大声で呼んでくださいよ、すぐに行くんで」

「ええ、ありがとう」

「いやーぁ。当然っすよ。……あ、詩織先輩と亜美、まだ手をつないでる。二人で仲良くツレション、やっぱりこれはキマシタワー」

 何かぶつぶつ言っている圭太に背を向ける。

 詩織と亜美は応接室を後にした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

俺がカノジョに寝取られた理由

下城米雪
ライト文芸
その夜、知らない男の上に半裸で跨る幼馴染の姿を見た俺は…… ※完結。予約投稿済。最終話は6月27日公開

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

寝取られた義妹がグラドルになって俺の所へ帰って来て色々と仕掛けて来るのだが?(♡N≠T⇔R♡)

小鳥遊凛音
恋愛
寝取られた義妹がグラドルになって俺の所へ帰って来て色々と仕掛けて来るのだが?(♡N≠T⇔R♡) あらすじ 七条鷹矢と七条菜々子は義理の兄妹。 幼少期、七条家に来た母娘は平穏な生活を送っていた。 一方、厳格ある七条家は鷹矢の母親が若くして亡くなった後 勢力を弱め、鷹矢の父親は落ち着きを取り戻すと、 生前、鷹矢の母親が残した意志を汲み取り再婚。 相手は菜々子の母親である。 どちらも子持ちで、年齢が同じ鷹矢と菜々子は仲も良く 自他共に認めていた。 二人が中学生だったある日、菜々子は鷹矢へ告白した。 菜々子は仲の良さが恋心である事を自覚していた。 一方、鷹矢は義理とは言え、妹に告白を受け戸惑いつつも本心は菜々子に 恋心を寄せており無事、付き合う事になった。 両親に悟られない淡い恋の行方・・・ ずっと二人一緒に・・・そう考えていた鷹矢が絶望の淵へと立たされてしまう事態に。 寮生活をする事になった菜々子は、自宅を出ると戻って来ない事を告げる。 高校生になり、別々の道を歩む事となった二人だが心は繋がっていると信じていた。 だが、その後連絡が取れなくなってしまい鷹矢は菜々子が通う学園へ向かった。 しかし、そこで見た光景は・・・ そして、菜々子からメールで一方的に別れを告げられてしまう。 絶望する鷹矢を懸命に慰め続けた幼馴染の莉子が彼女となり順風満帆になったのだが・・・ 2年後、鷹矢のクラスに転入生が来た。 グラビアアイドルの一之瀬美亜である。 鷹矢は直ぐに一之瀬美亜が菜々子であると気付いた。 その日以降、菜々子は自宅へ戻り鷹矢に様々な淫らな悪戯を仕掛けて来る様になった。 時には妖しく夜這いを、また学校内でも・・・ 菜々子が仕掛ける性的悪戯は留まる事を知らない。 ようやく失恋の傷が癒え、莉子という幼馴染と恋人同士になったはずなのに。 古傷を抉って来る菜々子の振る舞いに鷹矢は再び境地へ・・・ そして彼女はそれだけではなく、淫らな振る舞いや性格といった以前の菜々子からは想像を絶する豹変ぶりを見せた。 菜々子の異変に違和感をだらけの鷹矢、そして周囲にいる信頼出来る人物達の助言や推測・・・ 鷹矢自身も菜々子の異変をただ寝取られてしまった事が原因だとは思えず、隠された菜々子の秘密を暴く事を決意する。 変わり果ててしまった菜々子だが、時折見せる切なくも悲しげな様子。 一体どちらが本当の菜々子なのか? 鷹矢は、菜々子の秘密を知る事が出来るのだろうか?

大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について

ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに…… しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。 NTRは始まりでしか、なかったのだ……

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

俺は先輩に恋人を寝取られ、心が壊れる寸前。でも……。二人が自分たちの間違いを後で思っても間に合わない。俺は美少女で素敵な同級生と幸せになる。

のんびりとゆっくり
恋愛
俺は島森海定(しまもりうみさだ)。高校一年生。 俺は先輩に恋人を寝取られた。 ラブラブな二人。 小学校六年生から続いた恋が終わり、俺は心が壊れていく。 そして、雪が激しさを増す中、公園のベンチに座り、このまま雪に埋もれてもいいという気持ちになっていると……。 前世の記憶が俺の中に流れ込んできた。 前世でも俺は先輩に恋人を寝取られ、心が壊れる寸前になっていた。 その後、少しずつ立ち直っていき、高校二年生を迎える。 春の始業式の日、俺は素敵な女性に出会った。 俺は彼女のことが好きになる。 しかし、彼女とはつり合わないのでは、という意識が強く、想いを伝えることはできない。 つらくて苦しくて悲しい気持ちが俺の心の中であふれていく。 今世ではこのようなことは繰り返したくない。 今世に意識が戻ってくると、俺は強くそう思った。 既に前世と同じように、恋人を先輩に寝取られてしまっている。 しかし、その後は、前世とは違う人生にしていきたい。 俺はこれからの人生を幸せな人生にするべく、自分磨きを一生懸命行い始めた。 一方で、俺を寝取った先輩と、その相手で俺の恋人だった女性の仲は、少しずつ壊れていく。そして、今世での高校二年生の春の始業式の日、俺は今世でも素敵な女性に出会った。 その女性が好きになった俺は、想いを伝えて恋人どうしになり。結婚して幸せになりたい。 俺の新しい人生が始まろうとしている。 この作品は、「カクヨム」様でも投稿を行っております。 「カクヨム」様では。「俺は先輩に恋人を寝取られて心が壊れる寸前になる。でもその後、素敵な女性と同じクラスになった。間違っていたと、寝取った先輩とその相手が思っても間に合わない。俺は美少女で素敵な同級生と幸せになっていく。」という題名で投稿を行っております。

処理中です...