スケッチ 〜今、歩み出す。ただひたすら夢を叶える為に〜

1章

2話

昨日は、チヤホヤされていたけど、今日は、大丈夫だろう。と、鷹を括っていたが、その考えが甘かった。学校に着くと、下駄箱に、大量の手紙が入っていた。しまいには、廊下を歩いていると、まるで、だるまさんが転んだをしているように、龍の後を、女子たちがつけてきた。
　いつも、休憩時間には、沙織と過ごしていたが、その時間も、女子たちに監視されているように感じて、ゆっくりと過ごせない。そんな時間が歯痒くなり、

『今日の放課後、デートしよう！』

ラインで送くり、親には、

『友達と、勉強してきます。』

と、送った。

　放課後になり、沙織のクラスまで迎えにいこうと教室を出ると、

「早く、デートに行こう！」

スクールバッグを持った沙織が、待っていた。そして、龍の手を引いて、前に訪れた喫茶店へ行き、席へ座った。　

「昨日から、女子に、ベタベタとくっつかれて、ほんとムカつく！」　

いつもは、席に座ったら、メニューを開いてワクワクしながら、注文する子だったが、今回は、ふんっと、そっぽを向きながらおこる彼女に、

「いつも、沙織だって、男子にチヤホヤされていますけど。」

自分のことを棚に上げて、言わないでもらっていいですか～。と、ため息混じりに言うと、　

「ちょっと、龍のくせに生意気～。」

胸をトントンと、叩かれた。
　そして、前に頼んだメニューと同じメニューを頼み、二人で食べている時に、
　ガチャリとドアが開き、スーツ姿の年配の方がお客さんでやってきた。そして、龍の顔を見るや否や、

「君、あの番組に、出演していた子だよね！こんなところで偶然会えるとわ！」　

と、名刺を片手に、話しかけにきた。　

「君は、たしか... 龍くんだったよね？アイドルとか興味ないかな？」　

そう、聞かれ、なんで、この人俺の名前知ってるんだ。と思いながらも、　

「はい。そうですけど... 芸能界とか、あんまり興味なくて...」　

と、答えた。

「実は、僕、the First Dream artist 事務所の社長なんだ！もし良かったら、この後、ライブ観に来ない？」

チケット2枚あるから。とカバンから取り出し、どうぞ。と、手渡されたが、あんまり、興味が湧かなかったので、断ろうとした。しかし、

「行きたい！」

と、キラキラさせた目で、そう訴えかける沙織の為に、ライブに行くことにした。
　そして、社長の運転する車に乗り込み、ライブ会場へ向かった。

　会場へ着くと、

「僕は、挨拶に行ってくるから。また、終わったら、迎えに行くね。」

そう言い残し、龍たちを見送った。中に、入ると、大勢の人で席が埋まっていた。

「すごい、人だな。」
「本当だね。私、なんか緊張してきちゃった。」

龍と、沙織が言い合っていると、まだ、舞台は、暗闇にも関わらず、ファンの声援が、熱気とともに、会場にこだました。

　そして、ライブが始まり、オープニング映像が流れ終わると共に、シーンと静寂が、会場全体にはしった。何事だ！と、龍はキョロキョロと周りをみると、ファンが、競り上がったステージに、注目していることに、気づき、龍も、そのステージを見た。すると、そこへ、一斉に、ジャンプして、出演者が、登場した。

「会いたかったぜ！東京！今日は、最高のステージにするから、みんなを楽しませるから、最後まで、盛り上がっていこーぜ！」

その掛け声と、同時に、ライブがスタートし、綺麗なダンスや、歌声を披露した。
　ステージを見たお客さんが、泣きながら、崩れ落ちたり、笑顔で、出演者に手を振る人や、色々な人がいた。

　その光景は、龍に、刺激を与え続け、約2時間あったライブが、一瞬で終わったかのように、感じた。

　ライブ終わり、迎えにきた社長に、

「俺も、みんなを感動させる、そんな人に、なれますか？」

　泣きながら、叫んだ。

「なれるさ、きっとね。」

泣いていることに驚きながら、社長は、優しく包み込むように、彼の将来を想像しながら、言った。