幸運の歌姫

歩楽 (ホラ)

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第1章・聖騎士

宝物

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 僕を突き飛ばした男が
背中の大きな両手斧を構える・・・・。

 だが、男の状況は一変した。

 男は、数人の冒険者に囲まれ
その冒険者から男に向けられる、数本の剣先。

 きっと何が起きたか解らなかっただろう。

 僕ですら、今の状況が理解できない・・・・。


 そんな僕に、差し伸べられる手が有った。

「あなた、怪我はない?」

「あ・・・はい・・
 あ!昨日の・・・お姉さん」

 それは、昨日酒場にいた、お姉さん
最後まで僕の歌を聞いてくれて
大泣きして喜んでくれた、大きな女の人だ。

「アラ、嬉しいわね、覚えててくれたの?」

「はい!・・・それに、みなさんも
 昨日は、歌を聞いてくれて
 あ・・・ありがとうございました!」

 僕は、お姉さんを見て、安心したのか
多少冷静になって、周りを見渡すと
僕を突き飛ばした男に、剣先を向けたいたのは
全員が、昨日酒場にいた人達だった。

「おい、こっちこそ、いい歌を聴かしてもらって、ありがとうよ」

「あの歌とか言うのを聞いてから、体の調子が良くてな
 お礼を言おうと、お嬢ちゃんを探してたんだ!」

「お礼だなんて、僕は聞いてもらっただけで、うれしいかったから」

「そういえば俺も、今日はなんか体の調子がいいな」

「俺の事も、覚えててくれたのか?
 いや・・・なんだ・・・あれだ・・・照れるな・・・なんか・・・」

「お前の顔は、オーガみたいだかからな、一度見たら忘れられんさ!」

「お前だって!そのツルッパゲの頭は、忘れれないだろうが!」

「なんだと!顔面凶器男が!」

「あぁ?こいつより先に、お前を潰してやろうか!」

「みんな、まちな」

 みんなが勝手に話しだし収集がつかなくなりかけた・・が
お姉さんの、一声で、その場が静かになる。

「お前ら、まずはこいつの落とし前をつけてからだ!」

 お姉さんの視線が、僕を突き飛ばした男に向けられた

「お・・お前は・・・プリプリの・・・アッコ・・・・」

「ほう、どこの田舎冒険者だとおもったが、私の事を知ってるみたいだな」

「あぁ、Aランク冒険者チーム【プリ・プリ】のリーダー【アッコ】
 それに、Cランク冒険者チーム【ハウンド・ドック】の【コウ】
 同じく、Cランク冒険者チーム【エコーズ】の【セイ】・・・
 それ以外にも・・・有名所の冒険者が・・・なんで、こんな獣人を守る!
 こんな。ゴブリンにすら、勝てないような、ゴミを!!
 それに、なんだ!
 お前ら、仲が悪かったんじゃないのか!
 お前らが、笑いながら会話をしているところなんざ
 見た事ないぞ!!」

「ふん!【ハゲ】ーズのセイなんぞと、仲良くもしたくもねぇ!」

「ハン!こっちも、ハウンド【オーガ】のコウなんぞ、顔も見たくもねぇ」

「「だがな!」」

「「この子の為なら、俺達は手を組むぞ!!」」

「ふん!」「ハン!」

「そういうことだ!、商売敵のチームだろうと
 この子の為なら、私達は、手を組み
 この子の如何なる敵をも排除する」


「な・・・なんなんだ!その獣人は・・・
 そ・・そいつが、いったいなんだって言うんだ!」

「妹だ!」
「娘だ!」
「・・・・・・!」
「恋人だ!」
「お兄ちゃんと呼んで欲しい、アイドルの1位だ」
「ちょ・・・おまえら・・なら、俺の嫁だ」

「つぶすよ・・・あんたたち・・・」

 アッコさんの、一言で再び静寂を取り戻す
だけど、男に、向けられた剣先は微動だにしない。

 そして、アッコさんが静かに話し出す。

「この子は、私らの宝物なんだよ
 誰もに傷つけも汚させやしない!
 この子に手を出そうって言うなら
 私達全員が、相手をするよ!」

「そ・・・そんなの・し・・・しるわけないだろ・・・・・」

「消えな!二度とこの子の前に出てくるんじゃないよ!」

 そして、男は、一目散に逃げていった・・・
ドアに足をぶつけ、体勢を崩し、こけそうになりながらも
ドタバタと逃げ出す姿に
皆笑い出すのだった。

 僕は「ありがとう」しか言えず
何度も何度も頭を下げる。

 だけど、アッコさん達は皆笑っていた。

 僕の村のギルドだと、依頼の取り合いで
冒険者どうしは、何時も険悪なムードで
笑い声なんて、なかったけど
大きな街のギルドは、笑い声で溢れかえり、とても暖かかった。

 それからは、昨日酒場にいた冒険者の人達に囲まれた。

 逃げていった男に剣を向けたのは
高レベル冒険者チームの前衛系の人達だけで
それ以外の前衛の人は
何時でも戦える位置で、剣に手を掛けて静かに待機していて
後衛の魔法使いの人達は
何時でも魔法が唱えられるように待っていたとか・・・。


 戦争でもする気ですか??


 落ち着きを取り戻した、冒険者ギルド


 コウさんと、セイさんは仲が悪いと
2人して自慢げに言ってるけど
2人で肩を組んで、笑顔でそんな事を言われても
僕には、まったく信じれなかった。

 他の冒険者は、2人の姿をみて何人も目を丸くして驚いていたことは確かだった。

 話を聞いていくと
本来、地方に長期滞在する、個々の冒険者チームは
他の冒険者チームとは、あまり仲が良くない
仕事の依頼が少ないため
よく依頼をめぐって喧嘩になる事もおおいいらしい。

 その中でも、コウさんのチームと、セイさんのチームは
メンバー構成も、その実力も似ているらしく
ちょうどいい、クエストが同じ様なものになり
何時も、どっちが依頼を受けるか、よく喧嘩になるらしい。


 ただ、僕はそんな話をきいても
2人は数十年共に肩をねらべ戦い
お互いを信頼し合った、戦友にしか見えなかった。








 あ!、僕が【宝物?】・・・・・・・・・・


 聞き間違いだよね・・・・・。



 


 
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