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覚醒編
52話 それからの、7:3メガネ・1
しおりを挟むある、ビルの最上階、特設応接室
ぐるりと見渡しただけで、その部屋の装飾品は
かるく億を越えるほどである
その豪華な部屋で、ある組織の大物と、ある非凡な男が
大きなテーブルを、はさみ、座っていた
とある業界の、ある組織の会長、50歳前半であろう、貫禄のある男性は
ソファーに腰深くすわり、眉間にシワを寄せ、しかめっ面で考え込んでいた
その後ろに控えるように、立っているのは
部下であろう2人の男性
体格の良いその身体に、似合わない黒のダブルスーツは、はち切れんばかりである
そんな強面な部下を2人したがえていた
一般人なら、その場にいるだけで萎縮し
ソファーに座る、そのいかにもな雰囲気を漂わす男性と普通に話すことすら困難であるだろうが
7:3に分けた髪型のメガネを掛けた非凡な男性は
物怖じせず、まるで学校の先生と話すように会話を楽しんでいた
その姿に、強面の2人は、そんな男に対し顔には出さないが、内心驚いてもいた
「そうなんですよ、もしもの時にって事なんですよ
現在の魔法医療でも、治せない病気と言う物は、ありますからね
とくに臓器関係は、手遅れになると、最悪、死ぬ事になるかもでしょう
そんな時の為になんですよ」
「それは、わかっているんだがな
井門よ、それにしては、高すぎないか?」
「いえいえ、これは、非公開の技術ですし
こ こ だ け の話、国際法にも、ひっかかりますから
この値段でも安いと思いますよ
実際、命が買えると思うなら安いと思いますが・・・・・
どうでしょう?」
机の上に広げた、資料を見ながら、説明をする井門
それを見ながら、考え込む、男性
「そうなんだが、それはそうと
この話が本当かどうか、保証はあるのか?」
「まぁそれは・・・・・信じられないでしょうが・・・」
ブブブブブブ・・・・・・・ (携帯のバイブ音)
「ん?電話か?」
「すいません、電源切ったはずなんですが?・・・・」
「まぁいい、資料を見てるから、出てもかまわんぞ」
「ありがとうございます、それでは、少し失礼して・・・・」
バックに入れていた携帯電話を取り出し
スマホの画面をみる、井門
(ん?非通知、誰からだ?
この携帯は、仕事用だから、非通知で掛けてくる知り合いはいないはずだが?)
そんな事を思いながら、一回、画面に指を添え、スマホ耳にあてる
そして、井門が声を出す前に、イキナリ相手の声が頭に響く
「ボク!ボク!今、車ぶつけちゃってさ
その相手が、ヤバイ筋の会長の車らしくて
殺されたくなかったら、1000万円だせって・・・・
お父さん、お願いだから、今すぐ、お金用意してく」
プチ・・・・・・・・
井門は、いたって自然に、一言も話さず、通話を切る
資料を見ていた、男性は・・そんな井門の態度を見て
「ん?どうしたんだ?」
「あ?いえ
ちょっとした、イ (タズラ)・・イエ・・間違い電話でした、お気になさらず
会長、今日は、お話だけ聞いてもらえれば、大丈夫なので
ゆっくり考えてもらって結構です
今回、会長を紹介くださった、あの方は
かわいい、お孫さんの為に
お孫さんの、クローンを契約しようかと、おっしゃられていましたし
あ、まだ、契約はしてませんがね
そういうのも、有りだと思います
そこは、人それぞれですからね」
男は、ソファーにもたれかけ、腕を組みながら
ニヤケた顔で、話しだした
「孫か・・・ワシの、妾の子にな、子供が2人いてな
上の子が女の子でな、今3歳になるんだが、これが
かわいい!!
目の中に入れても痛くないほど、可愛いとは
あの子のことを・・・・・・・・・・」
喋り続ける事、20分
ようやく話は終わりを迎えようとしていた
「・・・・・・そうか、孫の為に、か・・・・あいつも、そんな歳になったか」
「でしたら、会長も、可愛いお孫さんの為に、どうでしょうか?」
「でもな、どうするかな・・・・・ん?井門、携帯なってるぞ」
ブブブブブブ (携帯バイブ音)
「何度も、すいません、少し失礼します」
そして、井門は、今日2度目の携帯を取る
さすがに2回目ともなると、会長の後ろに控える部下が、苛立ってくる
この会長、昔は短気であった
会社の会合の途中、携帯が鳴ろうものなら
すぐさま、その人間を殴っていたほどである
いや、未だに、殴るであろうが
それは、身内でない井門には、当てはまらない
身内にはキツイが、身内以外には優しい人物でもある
会長と言う立場、そして、いつも付き添う強面な部下のため
他人から、怖がられ、恐れられ、普通に会話することすら出来ずにいた
直属の部下ですら、会長を怒らさないように
普段、使い慣れない敬語を使う
そんな会長を慕う、2人の部下は、井門の態度に徐々に苛立ちを覚える
だからこそ、初対面で有るに関わらず、気さくな態度で接してくる井門は
この会長にとって、久々に得た話相手でもあった
でなければ、孫の話をする訳がなかった、それも、20分以上も・・
そして、電話に出るため、スマホをつつく井門を見ながら
(初対面の相手に孫の話をしたのは初めてかもな
この男、なかなか面白い、見所があるのか、ないのか
不思議な魅力があるのか、ないのか・・・)
会長が、そんな事を考えてる事など、つゆ知らず
井門は、再び不通知の電話にでる
「おとうさん、1000万用意できた?
じゃないと、ボク殺される、たすけて」
さすがに、2度目ともなると井門は、ある事に気づく
携帯越しの声は若い、まだ子供?、小学生くらいなのか?
そして、どこかで、聞いたことのある声・・・・どこかで・・・・?
顔を横に向け口元を隠し小声で
「だれだ?」
「お父さん、わからないの、ボクだよ、井門赤道
息子の赤道だよ!」
「悪いが、私に子供はいない、だれなんだ?」
「忘れたの、ボクだよ赤道だよ
さっき、アカギ・コーポレーションの会長の、赤城雅紀 (あかぎまさき)の
車に、ぶつけちゃって、赤城会長に殺されそうなんだよ
たすけて、お父さん・・緯度経度お父さん」
井門の顔から血の気が引き、真っ青になっていく・・・・
井門に息子は居ない、その事から、この電話の主は息子ではないが・・・
アカギ・コーポレーション会長、赤城雅紀その人は井門の目の前にいた
そして、今、井門が赤城雅紀と会っている事を知る人間は関係者以外いない
最後に、井門の事を、緯度経度と呼ぶ人間は、この世に、2人しか知らない
そして、男の子の声となると、1人しかいない・・・・・・
そう、それは、2月の終わりに出逢った、少年からの電話
電話番号は、少年の母親から、教えてもらったのだろう
だが、何故?赤城雅紀と会っていることを知っている?
それ以上に、少年からの電話に、緊張する井門
「おい、井門、顔色が悪いぞ、何の電話だ?」
赤城雅紀は、徐々に変わっていく井門の顔色を見、驚いて声をかけた
それに、井門は緊張した声で
「い・・・いえ・・・・・お構いなく・・・・」
「ハハハ、その様子だと、俺が誰だか分かったみたいだな
久しぶりだな井門さん、まぁ赤城会長との商談の邪魔したら、悪いから要件だけ伝えるぞ
今晩9時、家に居ろ、ちょこっと話があるから会いにいくって事で
じゃぁな、商談うまくいくといいな」
そして、井門の返事も待たず、電話は切れた
ゆっくりと息をはき、左手で額の汗を拭い
視線が合った、貫禄のある男性に・・
「会長すいません、何度も電話でてしまい
すこし驚くことがありまして、びっくりしただけですので・・・」
「そうか・・・・大丈夫か?顔が青いぞ?」
「はい・・」
井門の変化に解 (げ)せない赤城
自分はそれなりに、威厳があるはず
その自分の前でも、その態度を崩さない目の前の男が
電話一本で、死人の様な顔になったのだ
自分を相手するより、びっくりすることとは・・・・なんぞや・・と
その、内容を聞きただそうかと、ソファーから身を乗り出し
井門に再度、声をかけようとした瞬間
ガチャ・・
部屋の扉が開き
会長の秘書らしき女性が部屋に入ってきた
「失礼します、会長そろそろ、ご時間ですが」
その言葉で、井門の交渉時間は終了した
そして、次回の、アポを取った井門は
会長から「車で送ろうか」との申し出を丁重に断り
日も暮れていない時間で或るにも関わらず早々と帰路に着く
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