111 / 180
覚醒編
44話 それからの 紫音
しおりを挟む鈴は、ご飯の買い物に行くため、部屋を出ていった
数年前まで、住んでいた場所であって
近場のスーパーや、お店は未だ把握しているだろう
そして、良い素材を探すために、かなりの時間を要する事は
蘭も紫音も理解していた
蘭といえば、腕を組んで目をつぶり、何かを考え巡らしていた
それは、先程、紫音からの告白の事柄だろう
今の紫音は、前世での人格も有しているが
蘭にとって、紫音は紫音である、しかし、そんな事はどうでもいい
それより、紫音から聞いた、紫音の前世が居た場所での
魔法原理に頭を悩ませていた
その原理を、どう現代の科学魔法に組み込めるかをだ
紫音も、難しい事を考え出した蘭の顔をみて
どうせ、何時ものように、仕事の事か魔法の事を考えているのだろうと
ほっておく事にして、台所に顔を向ける
そこには、長いこと使われていないシンクがあった
たまに蘭の実家の使用人が掃除に来ているので
それほど、汚れてはいないのだが
前回の掃除が何時だったかは紫音は知らないし
どこまで綺麗になっているかは想像の域をでない
なら、少し掃除でもしておこうかと
その場から立ち上がり、一歩ふみだす
そして・・・いきなり、その場に膝から崩れ落ち
両腕を床に付けて、うなだれる
蘭は紫音が崩れ落ちた音に気づき
何事かと、紫音を見つめ
「紫音どうした?大丈夫か?身体に異変がおきたか?」
「ぁ・・・・あぁ・・いや・・・だ、大丈夫」
紫音の返事に、焦る蘭は聞き返す
「本当に大丈夫なのか?お前、さっき体がボロボロになって死んでたんだぞ
それの後遺症か?それか、まだ身体の何処か痛いのか?」
「いや、身体は大丈夫なんだけど・・」
「だけど?なんだ?」
「・・・・・・・俺・・・・
前世では、メイドが・・リルとか、マリアがいてさ・・・・
掃除なんか、シナカッタノニ・・・・・・
それなのに・・・
紫音の記憶が、10年に渡る習慣が・・・
身体に染み付いた、感覚が・・・
うらめしい・・」
両方を落として、うなだれる紫音の姿をみて
蘭は、笑いながら
「ハハハ、紫音?お前、金持ちだったのか?」
「・・・街を1個、納めてました・・・
それなりの豪邸にも住んでもいました
好き勝手、気ままな、バカな領主でした・・・・・
なのに、なのに、なぜだ!俺が掃除だと!なんでだ?」
地べたに座り、上半身を起こし、両手を震し叫ぶ紫音
そんな姿の紫音に現実を突きつける蘭である
「すまんな、家 (うち)の家政婦は、お前だ紫音
前世が、なんであろうとな
と、言うか?紫音、お前掃除好きじゃなかったのか?」
蘭の言葉に、ガクッと首を倒し
大きく、ため息をはき、首を傾け蘭を見て
「はぁ~~・・・・・いや、掃除が好きなんじゃなくて
汚いのが嫌いなだけなんだけどね
だけど前世では、掃除なんか、まともにした覚えがないよ・・
まぁ、鈴の美味しいご飯を食べるために掃除はするんだけどね」
ため息を付きながら、紫音は立ち上がり、笑いながら台所に向かう
「紫音、あの、ちっちゃいのは、お前のメイドじゃないのか?
あれにやらせれば、いいでないのか?」
「・・・ああ、蘭さん、先に1ついいか?」
「なんだ?」
「リルは、ああ見えて、前世では、普通の女の子でな (本当はハーフエルフだが)
今のあの小さな姿に、コンプレックスが、多少あるらしいんだ
できれば、名前で、【リル】と呼んでやってくれ」
「そうなのか?ちっちゃくて可愛いのにな
わかった、【リル】だな」
『やっぱり、殺してもよろしいでしょうか?』
『・・・・・・・』
頭の中に、リルの念話が届くが、完全無視の紫音
「うん、ありがとう
後、リルは、あれだ
不器用なんだ、色々あって、水回りの仕事はできなかったんだよ
俺と同じで、料理もできないしな
皿なんか洗わそうなんて思うと
落として割るの覚悟で頼まないとダメなレベルだからね
まぁ、その分、普通の掃除や
ど・・ (奴隷はマズイな)街の子供達の世話がメインだからね
ああみえて、世話焼きで、優しいからな
街のみんなや、子供達には、けっこう頼りにされてたんだよ」
「そうなのか?今の姿からは、想像できんな」
「俺もそうおもうわって事で、台所掃除するよ」
「あぁ、後、風呂掃除もな」
「はぁ~いって、風呂もかよ」
「どうせ、するつもりだったんだろ?」
「まぁ、そうだったんだけど
って、だから、なんで俺が、掃除をしないといけないんだ!」
ぶつぶつと、文句を言う紫音だが
すでに、その手は、布巾を掴みシンク周りを綺麗にしていたし
そして気分よさそうに、リズムを取りながら身体を揺らす
そう、紫音はすでに鈴の作る料理を先読みし
鈴が使うであろう、包丁や、フライパンを、綺麗にしていく
蘭は、自分のノートPCを取り出し
頭の中でまとめた事を、記録していた
そんな中、紫音が台所を掃除しながら、声を掛ける
「そうだ、蘭さん、聞いていい?」
「なんだ?」
「あの、井門圭人って?なんで蘭さん狙ったの?」
蘭は、キーボードを叩く指を一瞬止めるが
引き続き、キーボードを操作しながら、紫音に応える
「紫音には難しい話・・・・ではないか
それなりの知識は、有るんだったよな・・・・
なら、紫音、クローンに関してどう思う?」
「クローン?あまり興味はないね」
「前世の世界には、クローンは無かったのか?」
「その必要性がなかったし
この世界ほど、化学は発展してないから
クローンと言う概念が元々ないんだよ
でも、この世界で言うクローンって
どう考えても、医療目的って言うより
やっぱり戦争目的の方が強い?」
「まぁ、そうだな、戦争目的だ
そして、どっかの組織が、クローンを成功させたんだ」
「おぉ それはすごいね」
「あぁ事実、国際法で禁止されてなければ、ノーベル賞ものなんだが
いかんせん、裏組織だからな、そしてな紫音
クローンの大量精製できれば、軍隊ができあがる
現代の戦争に置いて、一番お金が掛かるのは、人件費だ
人員徴兵、訓練、戦争に置いて死ねば、見舞金
怪我をしたり、もし通常生活に戻れないほどの、肉体破損
精神崩壊があれば、その後の保証金にいくら掛かるかは解らない
それが、国家戦争なら、掛かる費用は軽く兆を超え、京に届くだろう
だが、クローンには人権がないからな、使い捨ての安上がりな兵器
精製までの時間しだいだが
国家師団に匹敵するであろう十士族に対抗できる力を手に入れる事ができるんだ
だがな、その組織は、クローン人間は作れた・・・が
そのクローンに、意思、記憶、感情、知識、脳にかんする機能が全てなかったとしたら?
そう、動かないんだよ、クローン人間はできても
そのクローンは、動くことがないんだよ
それは、使い道のない動かない、デク人形だ
いや、発想の転換、もし頭の良いやついれば
医療に使える、新鮮な肉体が手に入るんだ
引手あまただろうが、だ
クローンは禁止されている
まぁ、そのへんは、緯度経度みたいな交渉人が活躍する現場だ
私には、解らない世界だな」
「そうか、それで、蘭さんの研究【記憶の移植】が必要なのか
もし医療に転換できても、闇組織が喜ぶだけか」
「さすが、物分りがいいな
私が大学時代書いた【記憶の移植】
当時の大学のボロい器具での成功率は、数%だったが
あれから10年以上たった今の最先端技術なら
その成功率は50%は軽く超えるだろう
私の頭の中では、人間への移植も成功の目処はできているからな
だが、今はその研究も国際法で禁止されたけど
その研究を欲しがった研究所や、組織は、アホなほど居るってわけだ
その1つの闇組織の、交渉人が、あの緯度経度だ
奴の会社は、小さな会社だが、ああいう交渉人を数人抱えてるらしい
まぁ、奴も奴の会社も末端の存在だから
その、クローンを作った研究所や、その組織の存在すら良くは知らないんだろうがな
今回の事から、その組織も切羽詰ってるって感じだよな」
蘭は、言葉を止めると、険しい顔をして考え込む
「そういうことか、大体の仕組みわかったよ
だが、大元の組織が分からない事には・・・」
そして、紫音も、何かを考え込むように言葉は尻窄みになっていくが
何かを切り替えるように
「よし、風呂掃除してくる」
「あぁいってらっしゃい」
風呂場に足を向ける紫音
先程まで、台所のカウンターで、紫音を見ていた、使い魔のギンは
行きよい良く飛ぶと、シオンの右肩に飛び乗った
「お!ギンも来るか」
「コン」
そして、紫音は風呂掃除を開始する
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
俺にはロシア人ハーフの許嫁がいるらしい。
夜兎ましろ
青春
高校入学から約半年が経ったある日。
俺たちのクラスに転入生がやってきたのだが、その転入生は俺――雪村翔(ゆきむら しょう)が幼い頃に結婚を誓い合ったロシア人ハーフの美少女だった……!?
プレッシャァー 〜農高校球児の成り上がり〜
三日月コウヤ
青春
父親の異常な教育によって一人野球同然でマウンドに登り続けた主人公赤坂輝明(あかさかてるあき)。
父の他界後母親と暮らすようになり一年。母親の母校である農業高校で個性の強いチームメイトと生活を共にしながらありきたりでありながらかけがえのないモノを取り戻しながら一緒に苦難を乗り越えて甲子園目指す。そんなお話です
*進行速度遅めですがご了承ください
*この作品はカクヨムでも投稿しております
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
優秀賞受賞作【スプリンターズ】少女達の駆ける理由
棚丘えりん
青春
(2022/8/31)アルファポリス・第13回ドリーム小説大賞で優秀賞受賞、読者投票2位。
(2022/7/28)エブリスタ新作セレクション(編集部からオススメ作品をご紹介!)に掲載。
女子短距離界に突如として現れた、孤独な天才スプリンター瑠那。
彼女への大敗を切っ掛けに陸上競技を捨てた陽子。
高校入学により偶然再会した二人を中心に、物語は動き出す。
「一人で走るのは寂しいな」
「本気で走るから。本気で追いかけるからさ。勝負しよう」
孤独な中学時代を過ごし、仲間とリレーを知らない瑠那のため。
そして儚くも美しい瑠那の走りを間近で感じるため。
陽子は挫折を乗り越え、再び心を燃やして走り出す。
待ち受けるのは個性豊かなスプリンターズ(短距離選手達)。
彼女達にもまた『駆ける理由』がある。
想いと想いをスピードの世界でぶつけ合う、女子高生達のリレーを中心とした陸上競技の物語。
陸上部って結構メジャーな部活だし(プロスポーツとしてはマイナーだけど)昔やってたよ~って人も多そうですよね。
それなのに何故! どうして!
陸上部、特に短距離を舞台にした小説はこんなにも少ないんでしょうか!
というか少ないどころじゃなく有名作は『一瞬の風になれ』しかないような状況。
嘘だろ~全国の陸上ファンは何を読めばいいんだ。うわーん。
ということで、書き始めました。
陸上競技って、なかなか結構、面白いんですよ。ということが伝われば嬉しいですね。
表紙は荒野羊仔先生(https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/520209117)が描いてくれました。
しゅうきゅうみっか!-女子サッカー部の高校生監督 片桐修人の苦難-
橋暮 梵人
青春
幼少の頃から日本サッカー界の至宝と言われ、各年代別日本代表のエースとして活躍し続けてきた片桐修人(かたぎり しゅうと)。
順風満帆だった彼の人生は高校一年の時、とある試合で大きく変わってしまう。
悪質なファウルでの大怪我によりピッチ上で輝くことが出来なくなった天才は、サッカー漬けだった日々と決別し人並みの青春を送ることに全力を注ぐようになる。
高校サッカーの強豪校から普通の私立高校に転入した片桐は、サッカーとは無縁の新しい高校生活に思いを馳せる。
しかしそんな片桐の前に、弱小女子サッカー部のキャプテン、鞍月光華(くらつき みつか)が現れる。
「どう、うちのサッカー部の監督、やってみない?」
これは高校生監督、片桐修人と弱小女子サッカー部の奮闘の記録である。
Bグループの少年
櫻井春輝
青春
クラスや校内で目立つグループをA(目立つ)のグループとして、目立たないグループはC(目立たない)とすれば、その中間のグループはB(普通)となる。そんなカテゴリー分けをした少年はAグループの悪友たちにふりまわされた穏やかとは言いにくい中学校生活と違い、高校生活は穏やかに過ごしたいと考え、高校ではB(普通)グループに入り、その中でも特に目立たないよう存在感を薄く生活し、平穏な一年を過ごす。この平穏を逃すものかと誓う少年だが、ある日、特A(特に目立つ)の美少女を助けたことから変化を始める。少年は地味で平穏な生活を守っていけるのか……?
【完結】箱根戦士にラブコメ要素はいらない ~こんな大学、入るんじゃなかったぁ!~
テツみン
青春
高校陸上長距離部門で輝かしい成績を残してきた米原ハルトは、有力大学で箱根駅伝を走ると確信していた。
なのに、志望校の推薦入試が不合格となってしまう。疑心暗鬼になるハルトのもとに届いた一通の受験票。それは超エリート校、『ルドルフ学園大学』のモノだった――
学園理事長でもある学生会長の『思い付き』で箱根駅伝を目指すことになった寄せ集めの駅伝部員。『葛藤』、『反発』、『挫折』、『友情』、そして、ほのかな『恋心』を経験しながら、彼らが成長していく青春コメディ!
*この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件・他の作品も含めて、一切、全く、これっぽっちも関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる