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覚醒編
34話 代償
しおりを挟むすでに、シオンの両手は無い
その身に覇気だけの強化で
【ステラ・オクタンギュラ・クロスオーバー】の操作を行った代償である
右手は、【北狐亜種|(シルバーフォックス)】から送られてくる
魔核から吸収した、高濃度魔素を使った事により、肉体が耐えれなくなり
魔力焼けを起こし、その右手は指の先から、肉体が沸騰し蒸発していった
未だ、魔力焼けを起こす右腕はすでに、肘まで蒸発していた
そして左腕と、シオンの体は、呪力を使うことにより、蝕まれていく
呪法、これが世の中から廃れていった最大の理由がこれである
呪法それは、この混沌に満ちた世界では、絶大である
だがその力を完全使用できる人間はいなかった
その為か、それ以前の問題か、その巨大すぎる力に気づく人間もいなかった
そのハズである、呪法、強い力ではあるが、その根源は呪いなのだ
その呪いは対象者だけでなく、使用者にも降りかかる
使えば使うほど、その力に体は蝕まれていき、死に至る
だからこそ、呪法は廃れ、今は使える人間も皆無であろう
それは、シオンですら例外ではない
その肉体は、この世界の子供なのだから
魔核から放出された、回復効果ののった魔素の中ですら
その呪法の枷から逃れる事はできなかった
そしてシオンは、有り会えない程の、高密度の呪力をつかったのだ
その代償は、計り知れない物であり、たった十数秒使っただけで
シオンの左腕は、すでに蝕まれ、左肩まで腐食し崩れ落ち
シオンの内蔵はすでに、生きている事が不思議なくらい蝕まれていた
だが、その事を承知の上で、シオンは呪法を使ったのだ
魔核を封印し、鈴の身体に戻す、それを決めた瞬間に覚悟を決めたのだ
いや、シオンにとって死とは、日常茶飯事であり
覚悟も恐怖もない、目的の為なら
自分の命すら、駒の1つとして捨てる事に何の躊躇すらないのだ
【ステラ・オクタンギュラ・クロスオーバー】を使い
魔核を完全封印していくシオンを、涙を流しながら、何も出来ず見守る、小さな少女
リルは前世での記憶がよみがえる
あの世界で、天使の結界に包まれ
死を迎えようとしていた、シオンと
今、その強力な魔素と呪詛により
ボロボロなりながら死に向かって進んでいく、その姿が重なる
前世では、私やマリアの為に、自ら進んで死んでいった
そして今は、妹を助けるために、その身を犠牲にする
そう、シオンは、家族を助けるためなら、笑いながら、その命すら投げ出す
そんな姿に、止めど無く涙が溢れてくる
だからこそ、忠告はした
だが、それくらいで止まるシオン様ではない・・・わかっていた
そして、時間が経つにつれ、シオンの体が朽ちていく
肉体復元は出来なくとも、回復魔法はつかえる
だが、それを使うのには遠すぎた
リルは【監獄領域(プリズン・フィールド)】【時間凍結(フリージング・ゼロ)】
この結界の内に入ることは出来ないのだ
シオンと違い、リルはこの結界に入れば
自身の時間が凍結する事を、理解しているのだ
その為、シオンの横に寄り添い、回復することが許されない
ただ、あの時と同様、今は見守る事しかできなかった
そんな、リルと、2匹の使い魔の見守る中
シオンは、魔核の完全封印に成功した、それは手の平サイスの大きさとなる
シオンは、静かに鈴に近づき無い腕を動かす
そこには、肉体の腕はないが、霊体となった腕は有り、それを未だ覇気が覆う
それは薄く青く神秘的な輝きを放つが
それが見えるのはシオンとリルの2人だけである
そんな肉体の無い両手で星型8面体に封印された、魔核を包み込み
鈴の胸の中に仕舞う用に、そっと押し込んでいく
そして、【ステラ・オクタンギュラ・クロスオーバー】は、完全に鈴の身体に収まり
魔核の完全封印、そして、その封印は、そのまま鈴の身体に定着し
魔核は沈黙する
鈴は魔核の制御下から解放され、空中で浮遊していた鈴の体は地面に落ちていく
リルは、すかさず【西表山猫(ヤマピカリャー)】に命令を下そうとするが
それよりも先に【西表山猫(ヤマピカリャー)】は行動に出ていた
空中を駆け、落ちていく鈴の服を軽く噛み落下を止め
そのまま首を振り、その背に鈴を乗せ、ゆっくりと地面を目指し降りていく
鈴を助けたのを確認し、シオンは
静かに【北狐亜種(シルバーフォックス)】の背中に崩れ落ちた
「シオンさまーーーーーーーーーーーーーーーー」
リルの叫びの中、シオンの高速の念話が届く
それは、その肉体は呪詛に犯され、死に直面しているにも関わらず
気持ち良いほど、清々しかった
『最後まで、うるさいな、リル
さすがに、無茶しすぎた、いやぁ笑うしかないな
思った以上に、この世界の呪詛の力は強いな次回は、その辺も考慮して
身代わりとなる寄り代か何か用意しないとダメかな
まぁそれでも、鈴も蘭さんも、ついでに魔核も、助けたから良しとするかな
って、事で、俺はこのまま死ぬわ
前にも言ったが、10年サイクルの転生、まぁ宿命ってやつだ
俺の記憶が戻ったのが、さっきだったから
これから10年あると思ってたんだが、そう都合よく行かないらしい
紫音としての、10年だったみたいだな
まぁ、後の事は頼む、蘭さんと、鈴と仲良くしろよ』
『何を言うんです、あんまりです
私は、やっと・・・・やっと、シオン様と触れ合えたんです
これから本当の意味で、一緒に居られるはずだったのに
なのに、死ぬなんて、また私の前から居なくなるなんて許しません
どんな事をしてでも、助けます、もうすこし待っててください』
『それは、無理だろ、もう心臓がとまる、いや止まったかな
リルもわかってるだろ、お前の力では失った肉体は戻らない
そして、呪詛で受けたダメージは、お前の回復魔法では治らない事を
まぁあれだ、色々言ったが、好きに生きろ、前の世界と違い
自由に生きれるだけの力と、身体が、あるんだからな
あ・・・そろそろ、終わるか
じゃぁ、またな・・・いや・・・バイバイ』
『シオンさま、シオンさま、返事を、返事をしてください、シオンさま』
そして、今、その瞬間、シオンの心臓は止まった
それにより、シオンが発動させていた魔法である
【監獄領域 (プリズン・フィールド)】
【時間凍結 (フリージング・ゼロ)】
【野薔薇の蔓 (ローズ・ウィップ)】は解除された、消失する
使い魔として作られた、2匹の【マジック・イーター】も
多少の蓄積している魔素があろうと、消えるのは時間の問題であった
消え失せた、結界魔法を目の当たりにして、リルは驚愕する
それこそ、シオンが死んだ事を表した証拠であるのだから
心臓が止まったシオンの体は
力なく【北狐亜種 (シルバーフォックス)】の背中からずり落ち
20メートルは上空から、落ちていく
それを、助けようと、飛び出す1人と1匹
それを・・・・その、ボロボロとなった紫音の姿を見て青くなる女性、蘭
彼女、そして彼等は、魔法陣に力を込める傍ら
常に上空を見つめていた
そして、大きな星型8面体の結界魔法
その姿は見る物の何が起こっていおるのかは
誰一人理解は出来ていなかっただろう
だが、大きな猫種の動物が、鈴を背に乗せ降りてくるのを見て
鈴が助かった事を理解し
蘭と井門は、緊張がほぐれ、全身の力が抜け
そうしてようやく、喜びが浮かび上がってくる
虎亜は、全身の震えが止まらない
たった1分ほどの出来事、それが、何一つ理解できなかった
助かった鈴の姿を確認するも、震えが止まることはなく
その視線の先には、紫音の姿を捉えていた
そして、予告なく消える魔法陣
九尾の魔物から、ずり落ちる、ボロボロの肉片
それは、すでに人の形を成してはいなかった
両腕は無く、、その身体の右半分は焼き爛れていた
そして、身体の左半分は、黒いモヤに包まれる用に腐食し朽ちていた
蘭はその少年を見て、それが紫音だと認識するまで、約1秒
そして頭から血の気が引き、蘭は、生まれて初めて悲鳴をあげた
そこに居た、誰もが、そう蘭を含む全員が認識してしまったのだ
あの、両腕のない子供のような形の、ボロボロの肉片は
子供の男の子(紫音)だと、上空で何が起きていたか分からないが
あの男の子は、死んだのだと
妹である、女の子(鈴)を助けるために、その身を犠牲にしたのだと
ボロボロの肉塊となり、その生命活動を終わらした、シオン
蘭の、悲鳴の中
リルの、叫びの中
その身を崩しながら、地上へ落下していくのだった。
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