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覚醒編
31話 声
しおりを挟む大きくジャンプした、シオンは、先程作り上げた結界魔法の中に飛び込んでいく
2つの魔法
【監獄領域(プリズン・フィールド)】
【時間凍結(フリージング・ゼロ)】
出来合の魔法ではない、シオン自身が1から組み上げた魔法なのだ
その理 (ことわり)と法則を知る、シオンにとって
2つの魔法を、キャンセリングする、対応魔法を自身に掛けることは朝飯前である
それ以前に、魔法を組み上げる時点で、シオン自身には効果が発動しないように作ってある
だが、今は紫音の体であり、その作用が有るか無いか判らないため
自身に対応魔法を掛けたのだ
何も無かったかのように、結界に飛び込み、鈴の下まで落ちていき
空中浮遊できない、今のシオンは、小さな鈴の身体を足場にし、着地する
そこには、未だ、魔法【フリージング・ゼロ】に抗い、蠕く魔核が存在していた
ここまでは、ほぼシオンの予定通りである
いや、使い魔の覚醒進化と言う嬉しい誤算もあった
後は、弱まった魔核を鈴から引き離し、シオンが魔核を吸収すれば終わりである
鈴の体の上に立ち、蠕く魔核を前に
シオンは、一番の疑問にたどり着く
弱まった魔核?・・・・・そんな事は有り得ない・・・
時間操作の影響は多少受ける物の、元々俺の魔核が弱まるなんて
その力は、地球をも破壊できるほどの物である
そんな力が弱まる?
未だに、魔核から漏れる力は、1%にも満たないのである
一体、魔核と鈴に何が起きているのかと
シオンの頭の中にずっと疑問が沸いていたが
その事を確認する時間も残されていない
いや、もしかしたら、このまま数分もつのかもしれない
だが、もたないのかもしれない
今は鈴の命が最優先である事はシオンが一番理解している
シオンは、軽く息を吸い
手と手を合わせる
「パン!」 と 勢いよく拍手し、大きな音を起てた
その音に、シオンは聞き耳を立てる
シオンは、その手に魔力を乗せて叩いた
それは、シオンのスキルである【波】を使った、超音波を使う為である
まず、音の反射を、そのスキルで感じ取る
音の反射角、音の広がり等で、その形を頭の中に構築し
反射した音の、音程や、大きさ等で、その反射した材質、服や肌を確認し
その目で見なくても、シオンは鈴と魔核の状態を確認した
だが、超音波だけでは、魔核の内部を確認できない
その為に、超音波と同時に魔力による、ソナー効果を、スキルで感じ取る
以前の世界では、普通に魔力や、魔素の流れを目視できたシオンであるが
今の紫音の身体では、魔力を見ることも、感じることも出来ずにいる為
魔力による、ソナー効果で、鈴と魔核に流れる魔力の形を確認する
一定の形を取ることがなく、つねに形を変える魔核
その、存在は、全てを飲み込む、ブラックホールの用でもあり
無限の魔素を作り出すその力は、原子力核融合炉のようでもあった
そして、吹き出す魔素は、2人の使い魔が、全て吸収している
そう、それが今の魔力の大きな流れ
そして、シオンは、その影に隠れている鈴と魔核の繋がりを感じ取る
魔核を包むように、身体を軽く丸める鈴
鈴の胸の中心部から、目に見えない魔力の太い管が伸び
その先には黒く底が見えない魔核の姿があった
鈴と魔核その繋がり、魔力の太い管
それは数万にも及ぶ魔術回路による物であった
その事を確認した、シオンは、少し、ほんの少しだが安心する
以前の、シオンの用に魔核が魂と同化していない事に安堵したからに他ならない
魂と魔核の同一化、もしそうであるなら
鈴からの魔核の切り離しも、魔核の消滅も出来なく
鈴を無事、助けるには
地球をも飲み込むであろう巨大な魔力を蓄える魔核の封印しか
手段がなかったのだから
鈴の魂だけ残し、魂と同化した魔核だけを封印なんて
前の世界のシオンですら、出来はしない
最悪の事態だけは、回避したと
だが、安心するのは、まだ早かった
シオンには、これから、魔核を鈴から切り離す作業があるのだから
魔術回路、それは全身を走る魔術の神経の様なものである
それによって、鈴と、魔核が繋がれていた
鈴の魔力適性試験の結果である
魔力と魔力量、10段階評価でどちらも10である
この結果は、この魔核が有ったためであるだろう
そして、その魔核を、魔術回路を切断して取り除こうというのだ
魔核を取り除けば、今ある魔力は無くなり
鈴本来の魔力となるだろう
確率的には、双子である、紫音と同程度となるであろう
そして、切り離す為に、鈴の魔術回路を切断する
下手に切断すれば、魔術回路は壊れ再生不能となる
その後遺症として魔術を使えなくなる可能性もでてくる
それを避ける為にも、シオンは魔術回路の切断に細心の注意を払う事になる
魔術回路、それは神経の様なものである
綺麗に切断し繋げれば、回復もするし、その再生も早い
シオンはそんな手術らしき事をした事はないが
シオンの技術とスキル、そして、紫音の知識を合わせれば
できるハズである、いや、しなければない
家族を、蘭と鈴を救う為なのだから
そんな事を想い、紫音は蠕く魔核を、押さえ込む為
その身に覇気を纏い、魔核を掴もうと左手を伸ばす
バチン!!
まるで、静電気がハジける用に、魔核はシオンの左手をハジイタ
「うわ! パワーが足りねえか・・・」
魔核を押さえ込むには、覇気だけでは、力が足りず弾かれたのだ
「なら、来い!【西表山猫 (ヤマピカリャー)】」
「ニャアァァーーーーーーーーーーー」
使い魔【西表山猫 (ヤマピカリャー)】は
必要とされた、その喜びに、5mにも及ぶ巨体を震わし
シオンの呼びかけに返事をし
シオンの元に駆け寄り、隣に位置する
「ハハ、でかいな・・・・まぁいい、力を貸せ」
イメージしたのは、60cm程の西表山猫、それを遥かに超えた大きさに
クスクスと笑いながら【西表山猫 (ヤマピカリャー)】に指示する
その2又に分かれた尻尾をシオンの肩にのせ
【西表山猫 (ヤマピカリャー)】と、シオンは、魔術回路を接続する
そう、その為に使い魔として作成し、【魔力吸収 (マジック・ドレイン)】を持たせ
魔力を蓄積出来るように生み出したのだから
その一方、2匹で、魔核の放出する魔素を吸収していたのを
【北狐亜種 (シルバーフォックス)】が、一匹で受け持つことになる
その為、吸収しきれなくなった魔素は
そのまま魔核を覆う黒い魔素となり渦を巻きだす
「く・・【北狐亜種 (シルバーフォックス)】20秒持たせろ、やれ!」
その上から目線の言葉は、【北狐亜種 (シルバーフォックス)】を奮い立たせる
全ての者を魅了する者として生み出された【北狐亜種 (シルバーフォックス)】にとって
神であるシオンの、強い上から目線の言葉は、背筋が震えるほどの快感であった
ココォーーーンと、大きく鳴き
九つに分かれた、その尾を大きく拡げた
そして、その尾1つ1つで、魔法陣を展開させる
それは、小さな【マジックブースター】
【北狐亜種 (シルバーフォックス)】の全面に展開された
【魔素吸引 (マナマテリアル・アブソーバー)】の周りに九つの、ブースターが装着される
それは、一気に吸引速度を上げる
空中に浮かぶ【北狐亜種 (シルバーフォックス)】
その魔法の吸引力により、ズレるその身を大きく4本の足を踏ん張り
シオンの命令に応える為に、全身に力を込める
【北狐亜種 (シルバーフォックス)】に命令を下したシオンは
その左手に、幾つもの魔法を掛けるのだ
強化外装、から始まり、魔法防御、魔力耐性と数種の魔法を掛ける
そして
「【西表山猫 (ヤマピカリャー)】ブーストしろ」
その言葉に応じて、【西表山猫 (ヤマピカリャー)】は
シオンの左手に、ブーストを掛け、大きく3段の魔法陣がシオンの左手を包む
シオンの左手は、魔法により青白く光る膜におおわれ
何重にも及ぶ魔法陣が展開されていた
そして、シオンは、魔核を掴むため、その左手を伸ばす
魔核と左手の間で、大きく音が弾け
バチバチと、スパークする、魔力を無理やり押さえ込むシオン
そして、右手で、魔力を使った、スキルを発動させる
それは、魔力による超高周波ナノマテリアルブレード
シオンのスキルと、紫音の無駄知識によって生み出された技である
それは、理論上、あらゆる物質が切断できる事は当たり前であり
目に見えない魔力であろうと、魔力が通うものであるなら切断できる
そして、その性質上、切れ味が落ちる事もなく、切断面は常に綺麗である
「悪いな魔核、戻ってきてもらうぞ」
そして、シオンは意思加速を使い
左手で押さえ込んだ魔核と、鈴の間にある魔術回路の切断にかかるのだ
魔術回路に対して直角に刃をあてるシオン
刃の進む速度は、ゆっくりであるが、千倍に近い意思加速のシオンは
かなりの時間と神経を使い切断していた
そして、魔術回路の束を半分も切り進んだ頃
ある言葉が、シオンの脳に届く
「・・・助けろ・・・・・この娘 (コ)を・・・・
我を・・・・・・・・こわせ・・・・・・・
・・・・・全ては・・・・・・・・・・・」・・・と。
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