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覚醒編
6話 味覚の発達は、不幸の始まり?
しおりを挟む東名高速を制限速度で走いっている車がいた
それもその筈、土曜の午前8時前、それが高速であろうと
混んできたのだ。
ハンドルを握る蘭にとって、それはストレス以外なにものでもない
ちょこっと(10年)前であれば、東京⇒静岡なんぞ
深夜に、時速200kmオーバーで走ればすぐなのにと・・・
すでに、家を出てから、2時間近くたっていた
家を出て、高速に乗るまでに20分ほど
高速のってから30分ほど走った辺りで
子供達に急かされサービスエリアに入り30分ほど休憩し
そして今は渋滞に捕まっている。
そんな蘭の目に入ってきたのが
初めに予定していた、サービスエリアの看板であった。
そして、蘭の双子の子供、兄・紫音と妹・鈴に
初めの目的地であるそこで、予定どうり朝食を取ることを告げた。
蘭は渋滞のストレスを払いのけるように、ハンドルを切り
東名高速に、最近新しく出来た大きめのサービスエリアに入っていくのだった。
鈴「蘭さん早く早く」
元気いっぱいの鈴に右手を引かれ、歩く蘭
その左手には、紫音に繋がれていた
蘭「鈴、そんなに急がなくても、レストランは逃げなだろ」
鈴「ご当地海鮮丼が売り切れたら、こまるのぉ~」
蘭「朝一から売り切れないから大丈夫だって」
鈴「それでも、早く食べたい」
そう、昨日、皆に、この新しく出来たサービスエリアで寄ろうかと話したところ
鈴が情報を調べ、美味しいと言われる、海鮮丼がある事を見つけ
食べたいと言いだしたのだ
そして左手の先にいる紫音の興味は
ツーリングらしい、バイクの1団に向けられていた
そんな紫音も、レストランの入口で、商品ディスプレイの食品サンプルを見たとたん
それに興味が移り、その瞳が輝く。
その目線の先には
【マウンテン富士カレー】と書かれた食品サンプル
ベースは、カレーライスだろう、それに富士を模した用にご飯が盛られ
そこにエビフライや、揚げ物が反りたち、その反対側に、オムレツ
カレールーの部分には大きなハンバーグと言う、盛りに盛られた物であった
それを見た蘭は・・・・
「紫音・・もしかして、それ食べる気か?」
「食べたいです、蘭さん」
紫音はその右手の先にいる蘭をじっと見つめる
蘭は、一度ため息をついて
「好きにしろ」
そして、蘭は食欲満載の2匹の餓鬼に両手を引っ張られ席についた
4人掛けのテーブルに、蘭と鈴が並んで座り、蘭の正面に紫音が座る
そしてその横の空いた席に、姿無き人物、リルが浮いていた
紫音を上空から眺めていたリルは、建物に入る紫音をおってきたのだ
「人間には欲と言うものが3つ有ると聞いたことがあります
食欲・睡眠欲・性欲だったでしょうか?
食事も睡眠も必要としない私は、全ての欲がシオン様に対する性欲に・・・
そう、全てはシオン様にぃぃーーーーーー」
そう言って、存在さえ許されない、小さなリルは、紫音に飛びかかるが
紫音の体をすり抜ける
リルは、言葉なく自分の両手を見つる
いったい何度繰り返した、行動だろうか、そして、これも又いつものように
紫音の顔の前を行ったり来たり、紫音の周りをクルクルと回ってみたりと
紫音の顔を眺めていた
「あぁ~かわいいシオン様、前のシオン様はカッコイイ美男子でしたが
かわいいシオン様も・・・・・・あぁ・・・舐めたい・・・
あのきめ細やかな頬に口づけしたい・・・
あの艶やかな唇を、舐めたい・・・・・」
顔を赤く染め、身体をくねらせながら
今日も1人、ブツブツと誰にも届くことのない独り言をいう
リルが1人遊びをしているうちに、注文した食べ物がテーブルに届いた
蘭は、モーニングセット
コーヒーと、サンドイッチのセットである
紫音は、マウンテン富士カレー
商品サンプルと同様に、色々な素材が盛りに盛られたカレーであった
とても9歳の紫音1人で食べきれる量では無いが、紫音は気にしない
鈴は、夢の海鮮丼
新鮮な海の幸が乗った色彩豊かな丼である
紫音と同じく、9歳の鈴では食べきれない量であった
双子の兄妹は瞳を輝かせた
テーブルに運ばれてきた食べ物に興味津津である
「はい、2人とも」
「「「いただきます」」」
そして、久々の家以外での食事を開始する
そして蘭は、2人の奇妙な行動に首を傾げた
まずは鈴である、丼の中身を見つめ
ブツブツ言いながら丼を廻しながら中の素材を確認している
普段家で食べない、色々な魚の刺身を確認しているのだ
そして、その味を確認するように、刺身を口に運ぶ
目を閉じ咀嚼し、その味に軽く頷く
紫音と言えば
テーブルに置かれている小皿を取り
それに、カレーの上に載っている、エビフライや、ハンバーグと言った食材を取り分けた
そして、まずカレーの白米を口に運び、微かに眉間にシワを寄せる
その子供らしからぬ行動に、蘭はコーヒーを飲む手を休めじっと観察していた
そして気になった蘭は2人に問う
「紫音どうした?」
その問に、紫音は小声で答える
「・・・・ご飯がマズイ、保温時間長すぎる、後、、たぶん水か、、、
ハンバーグも牛5豚5かな、、、思いのほか美味しくない
揚げ物も、、、、たぶんその素材は冷凍ものかな、、、
素材の新鮮さが無い、その素材の味を生かしきれてない」
言葉を失う蘭
我が息子ながら、変だろうと感じるが
よくよく考えると、鈴が料理を初めた頃から味見をしている紫音
そして、プロ級の腕まで成長した鈴を育てた、紫音の舌は正直である
「そうか、点数付けるなら?」
数秒考える紫音そして
「サービスエリアの料理としては75点
もしこれを、鈴が家で作ったなら50点以下」
「紫音一口頂戴」
「わたしも」
蘭の申し出に鈴も乗る
2人はカレーと、小分けにしたハンバーグと魚の揚げ物を口に運ぶ
「これは、、、」
舌の肥えた蘭も眉を曲げた
そして鈴と言えば、小声でボソっと
「食卓に出せない」
蘭は、鈴の食べている海鮮丼に目をやり
「鈴、そっちの海鮮丼は?」
鈴も少し考え込むと、一言
「・・・・・ノーコメント・・・・・・・」
たぶん、似たり寄ったりの感じだろうと、蘭と紫音は納得する
無駄に舌の肥えた親子
紫音が注文した、富士カレーも、鈴が注文した海鮮丼も
TVや雑誌等で、美味しいと評判の料理である
普通の人間であるなら、それを美味しいと感じ喜んで食べるだろう
紫音も、お店で出すなら、75点と評価は高めだ
いつ注文が入るか分からない料理、それらを事前に準備しなくてはならない
鮮度が命の魚であれ、それは冷凍を余儀なくされる事がある
サシミは兎も角、魚の揚げ物となると、その保存は冷凍になるだろう
そして、一番は、ご飯である、家と違い食べる時間に合わせ炊き上げる事ができない
お店で出てくる、その殆どの、ご飯は、保温を余儀なくされる
それが、魔法であっても、最先端科学の炊飯器であっても
適性の時間を超えれば、時間とともに劣化するのは分かっている
肥えた舌を持つ3人には、そんな細かな事すら分かるのだ
そして、お米の洗い方、炊き方、水の善し悪しすら判断できる
紫音の舌は厄介ほかならない、その事は鈴が一番理解している
鈴の料理が、紫音に及第点を貰うのに2年以上かかったのだから
だがそれも、鈴の料理と、料理の評価を聞かれたとき位しか口には出さない
それくらいの常識は、紫音にもあった(鈴に怒られたからだが)
考えてみれば、舌が肥え味覚が発達しすぎると
普段の食生活に置いて不幸としか言い様がないのかもしれない
味覚が発達した紫音にとって、本当に美味しいと思えるものは少なかった
それは、本当の美味が味わえる幸福なのか
世の中の殆どの食べ物がマズイと感じる不幸なのか
それは、当人の気持ちしだいであるだろう
そして話は、静岡に着いたら何がしたいで、3人は盛り上がる
紫音も鈴も、出来るだけ食べるが、その料理の半分ほどの量を残した
蘭は料理を残す事を、怒りはしない
ただその食材や料理した人に感謝していれば良いと
ただ、食べ方や、汚く食べる事は怒るが
鈴が料理を始めた頃から、その事で2人を怒った事は、蘭の記憶にはない
それ以上に、期待した料理は、予想より美味しくなく
期待が大きかった鈴は肩を落とす
レストランを出た、3人はその足で、フードコーナーに向かう
口直しである、下手に料理され手を加えられた物より
ただ、焼く温めると言った料理の方が、素材の味が出るので
それを食べる為にだ
料理を作る事が好きな鈴にとって、知らない素材や、料理を食べることは
今後の自分の料理に活かせるので、フードコーナーのジャンクフードと言えど
鈴にとっては、大事な研究対象である
紫音はただ、美味しいものを食べたいだけであるが
すでに興味は、窓の外に見える、バイクのライダー達の集団である
だが紫音の右手は蘭に固く握られていた・・・逃げ出さない為に・・・
3人は、フードコーナーで身新しい食べ物を見つけては3等分し
その評価をしたりと、渋滞の時間をやり過ごしていた
紫音の一番のお気に入りとなったのは、地元牛の牛タンの串焼き
すこし値段が高めだが、それに似合う美味しさであった
やはりシンプルに、塩コショウで焼くだけという素材の味ありきの料理である
蘭と鈴が、気に入ったのは、抹茶のソフトクリームである
鈴曰く、静岡名産のお茶っ葉は、すこし違うらしい
さすがの鈴も、牛タンの串焼きも、ソフトクリームの味は家で作れないと言う
だが紫音は、鈴なら、同じ素材があれば、これ以上の物はできると確信していた
そして少し休憩を取った3人は、再度出発するために車にもどる
お土産をその手にして
一番に走って建物の外に出る紫音だったが
そこにはすでに、ツーリングに来ていたバイクの集団は無く
すこし寂しげな紫音がそこに居た
いったい何がしたかったのかと蘭は思うが
メンドくさい事に成らなくて良かったと思うくらいであった
そんな、サービスエリアの3人の行動を見守る人物達がいた
それは、その存在が確認できないリル、ではなく
2人のラフな格好の男達である
その男達は、蘭達が車に乗り込むのを確認すると
何処かに連絡をしながら、自分達の車に乗り込んだ
そう、これから、3人の親子と、1つの生命体に
逃れられない運命の時が訪れようとしていた
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