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中等部・合宿編
38話 レン vs 魔物
しおりを挟む黒く染められた、笑いを模した仮面を付け
スカジャンに、雷神を背負うその男は、鷲尾を下し
広い通路を、奥へと向かい進んでいた。
蓮は、何の気なしに、ふと右手を振る
紫音から借りた、魔法刻印付き木刀が
先ほどの鷲尾との戦いで壊れたのだ。
試作段階と言っていた木刀だったが
なかなか使えた、威力は申し分ない
ライフルの弾丸すら、粉砕できたのだから
後は耐久度か、木刀じゃなければ、いや、木刀だからいいのか・・
刀にあの魔法つければ・・・・
桜は、ナックル型のを使ってたか、あ・・、あれも壊れたな
やっぱり、耐久度が問題か・・・と。
歩きながら右手を開いたり握ったり軽く振ったりしながら
今後、あの魔法刻印で、面白い武器ができないかと思案する。
そして、リルから聞いた
指揮者がいる2階部屋の下の広い空間にたどり着く
奥には2階へ続く階段と、大きなコンテナがあったが
それよりも・・・・・
広場の右手で、すでに戦いを始めている
紫音と、一風変わった姿の侍に目が行く
紫音はすでに肩から胸にかけて切られており、血を流していた
その相手は
大きなテンガロハット、赤いTシャツGジャン、袴に日本刀という姿
あの、テンガロハット、ユーリも被っていたな、ユーリの仲間なのか?
すでに、ミカから念話で、魔法攻撃してきた人物は
やはり【ユーリ】であった事は聞いていたが
紫音の負け戦を見学するため
蓮は足の向きをかえた。
それを2階の窓から見ていた高津が
倉庫内のスピーカーを通して、マイクで話しかける
「おい、そこの男、お前の相手は、こいつらだ、あれを出せ」
その言葉に、レンは2階の窓に一旦、目を向け
すぐ目の前に置かれている、コンテナに注目した。
それは、何人かの男が、大きなコンテナを開け始めたからだ
そして、その開けられた、コンテナからは
あちらの世界で、聞き覚えのある、うめき声が聞こえ、コンテナから
3匹の魔物が姿を現し、広場にでるやいなや、大きな雄叫びをあげる
「「「グゥガァァアアアアアア!!」」」
見た目は、この世界では、マントヒヒに近いであろう姿
前のめりの姿勢ではあるが
それでも、3メートルはある大きさであった。
レンは、左手で仮面を整えながら、確信する
フォーの言っていた
大きなエネルギーの魔物?と、言っていたのは、こいつらだな
転生する前の、昔の体なら相手にもならないだろう魔物だが
今の自分の力量を測るのには丁度いい相手だろう
いや、そのうち、今戦っている
ミカとユーリの決着がつけば、まぁミカが負けるだろうが
そして、ユーリがここに来れば、俺も負けるかもだな。
念話で、シオンに話しかける
『シオン、そっちは勝てそうか?』
『すでにやばいな、相性悪い上に
格上すぎる、剣術だけなら、蓮より強いな』
『うわ、そっちが当たりか、まぁこっちも、やばそうだ』
『ハハ、意気込んできて
二人して死んだら、シャレにならんな』
『最悪、リルがいるから
上で捕まっている子は大丈夫だろう』
『だな、さてそろそろ本気 (マジ)で死にそうなんで、またな』
『ああ』
蓮は、鼻で軽く笑い
右手を背中に回し、背中に担いでいた、刀を抜くのだった。
蓮の殺気を感じたか
ただ単に目の前の男が気に入らないのか
又は、閉じ込められていた、鬱憤をぶつける相手を探していたのか
3匹の魔物は、目の前の男をを敵と認めた。
蓮は、一切の油断を断ち切る
先程はこの世界の人間であったが為
殺さぬように手を抜き、楽しんでいたが
相手が、異世界の魔物となると、話は別である
この人の身である身体では、魔力感知が出来ないからだある
それにより、相手の力量が測れない為
戦ってみないと力量がわからないのである
ただ戦えばいいと言うものでも無い
紫音との念話の内容の用に
格上相手に粗末な攻撃を仕掛けたなら
その時点で死ぬ可能性もあるのだから
下手に手を出す事も出来ないのである
ただ蓮と紫音の今の優位性は
【意思加速】ができる事と
それに伴う【肉体加速】だけである。
それでも、この魔物3匹なら
意思加速でどうにかなると、踏んでいたが
ユーリが来る前に倒さないと
ユーリの固有スキルと、当然ユーリの意思加速できるがため
こちらの優位性は無くなり、負ける可能性が高くなってくるのである。
そんな、蓮に、一匹の魔物が飛びかかる
3メートルある巨体が
先ほどの鷲尾ほどではないが、その部下並みの速さで突っ込んでくる
そして、横殴りの一撃を、蓮に食らわすのである。
蓮にとって、速さ自体は問題ではなかった
刀を構え横から来た腕を切り落とそうと、刀を振るう
だが、数百キロの巨体が高速で突進し
その腕力で力任せに殴ったのだ
蓮の、刀技は硬い皮膚で押し返され
その勢いで軽く5メートルは、軽く吹き飛ばされた。
一度は地面に手を付けた蓮だが、すかさず、構えを取る
油断はしない、いや、出来ない
蓮を吹き飛ばした、魔物はレンを見ながら右手を舐めていた
刀の刀身を殴ったのにかかわらず
10センチほどしか切れていない傷から血が出ている
まるで、子猫か何かに、引っ掻かれ様な、痛痒さなのだろう。
だが魔物達は確信する、この人間は弱いと
後ろに居た、2匹の魔物も、少しずつ近づいてくる
レンは3匹の魔物を視野に入れ、眉間にシワを寄せ、口角をあげた。
「ハハ・・・・思ったより強いな
それに硬い! 今の一撃でも、薄皮一枚切れた程度とはな」
そんな言葉を待つことなく
言葉半分で、先ほどと違う1匹が襲いかかってくる
先ほどと同じ用に、一直線の攻撃である
受けるのは得策では無いと
ステップして躱すも魔物の攻撃範囲を見誤っていた
前かがみ両腕を地面に付けている状態でも
約3メートル巨体、腕の長さは2メートルを越えていた
その巨体、丸太の様な長い腕での攻撃範囲からは、逃げきれなかったのだ
魔物の攻撃を肩で受け、威力を吸収しながら後ろへ飛ぶが
それでも、かなりのダメージを食らい
倉庫に積み上げられた荷物に叩きつけられた
「キキキキキ」
そして、その魔物が笑う、すでに勝ちを確信したように、、、
「あん!?」
蓮は、その見下した笑いに
眉間のシワはより険しくなり、刀を握る右手に力がはいる
立ち上がると同時に、大きく息を吸い、ゆっくりと息を吐く
そして、背を伸ばし胸を張り、全身の力を抜き
笑った魔物を睨みつけ、歩き出した!
蓮を笑った魔物は
静かに歩み寄る蓮の目を見て、笑みが止まり一歩後退した
それは対峙した者でしかわからない
背筋も凍るほどの、恐怖であっただろう
本能で恐怖を感じるも
頭で理解できない魔物は
何かを振り払うように、蓮に襲いかかる。
先程より早い速度で飛びかかり
両の腕を持ち上げ、蓮の頭上へ叩き落とそうとするが
蓮は、刀を両手で握り
半身左に移動し、右下から左上に切り上げた!
丸太の様な、魔物の右腕は重力に負け
体との連結を立ち、地面に落ちてゆく
腕が無くなった事すら気づかない魔物は勢いのまま左手を地面に叩きつけ
レンの所在を目で追い、右に向く
そこには、すでに上段に構え直したレンの姿があり
魔物の最後に見た光景は
振り下ろされる、魔物自身の血で紅にそまった、美しき日本刀の姿であった。
蓮は魔物の首を切り落とし
残りの魔物に身体を向ける
同族を殺された、2匹の魔物は、この人間に対する認識を変えた
たった2振りで殺された同族
この人間は自分達を殺す力を持っていると
距離をとり警戒を始める。
蓮は肉体加速を使い限界近くまで肉体を酷使した、それは・・・
おそらく固く切れても薄皮一枚であろう、魔物の皮膚を
意思加速を使い、日本刀が当たる瞬間に
肉体加速を使い限界近くまで酷使し
無理やり滑らすように皮膚を斬り裂き
力任せに首を落としたのだ
そして、蓮の意に背いて
蓮の持つ刀は、血を浴び、血脂にまみれ
力任せによる、刃こぼれが見られ
先ほどまでの、切れ味はすでに無くなっていた
昔の剣豪ならば、意思加速、肉体加速など使えなくても
刃こぼれ無く倒せていただろう。
日本刀は、時に、叩き切る、突く、と表現されるが
本来の使い方は少しちがうのである
日本刀とは、本来、刃を滑らすように斬る物である
簡単に言うと
包丁でトマトを切るとき、上から押し付けると、潰れるが
トマトに刃をあて引くように斬ると繊維を潰す事なく切断できる
多少硬い物であれ、刃を引く用にすれば、切れるものであるが
それは、刃の切れ味と、切る者の腕次第でもある
構え直すが、すでに刀は使い物にならず、攻め手にかける蓮
警戒し、蓮に近寄れない魔物
距離をとり牽制しあう、蓮と2匹の魔物
そんな時、ミカから、ユーリに、負けたと連絡がくる
2・3言葉を交わし、ユーリがこちらに来る前に魔物を倒したいと思うが
状況を打破できる何かが・・・・
そして、蓮の視界の片隅で
膝から崩れ、両膝を地面に突くシオンの姿があった。
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