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「いえ、君を責めてる訳ではありません。ですが、君1人でやってもらわなきゃいけなくなりました」



(怖いとかそんなん言ってる場合じゃねぇな……)



「……俺は何をすれば良い?」


「あの幽霊を弱体化させたいです。それには封印の式を踏ませる必要があるので、君にはその式まで誘い込んでほしいです」


「誘き寄せるって事か?」


「ええ。手筈としては、まず校内で君の名前を大声で叫びます。名を知った彼女は恐らく物凄い勢いで君を追いかけてくるでしょう。ですので、捕まらないよう頑張って校庭まで走って来てください。その隙に俺が封印の式を書いておきます」


「……わ、わかった。走るのは得意だから任せろ」



 物凄い勢いで追いかけてくる女の子の幽霊を想像してしまった龍之介。

 顔面蒼白になりながらもグッと拳を握る。

 チグハグな行動が強がりだと誰が見てもわかっていたが、流風は何も言わない。



「……頼もしいですね、流石俺の相棒です」


「相棒ではない……」


「ですが気をつけてください。一般人で霊力の強い君が捕まったらどうなるか……」


「ど、どうなるんだよ」



 誤魔化すように笑顔のまま何も言わない流風だった。












(やべえ……嫌なこと思い出しちまった…)



 トイレの入り口の前でもう一度気持ちを落ち着かせる。


 ココを出たら、もう戻れない。
 でもいつまでもいる訳にもいかない。



 (何より、コイツを助けなければ)



 横にいる流風を見る。
 これから命を賭けた勝負が始まろうとしてるのに至って涼しい顔をしている。


 息を大きく吸って吐く。



「準備は良いですか? 反対側に走って、俺が式を描く時間を稼いでくださいね」


「ああ、わかってるよ」


「……開けます!」


 流風と一緒にトイレから飛び出す。
 そして叫ぶ。



「俺が!! 鬼塚龍之介だー!!!!」



 自分の中の恐怖をかき消すように大声で叫んだ。



(……来てる! 近くにいる!)



 タタタタッ


 軽い足音が段々と近づいてくる。


 逃げたいけど、いきなり逃げては誘導出来ない。姿を見せてから、一拍置いて、全速力で逃げなけれ……



「オニヅカクンンンンンンンンンん!!!!、ミツケタ! ミツケター! ミツケター!!!!!」


「ぅおわあぁあああぁあ!!!!!!!」



 一拍置くことなく弾かれるように龍之介が走り出す。女の子の幽霊は他に目もくれずに龍之介を追いかけて行った。


 その姿を影から見送ると、流風も反対側に駆けていく。



「グッドラックです、鬼塚君」

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