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 着いたのは件の廃校・旧南小学校だった。


 夕方とはいえ、初夏で明るいし、セミは鳴いてるのに、空間が切り取られたようにそこだけ静かだった。


 黒鋼高校の縄張りだけど、学校は見た感じ荒れてる感じもない。というか人の気配を感じない。どうやら黒銀の奴らと喧嘩というパターンではないようだ。



(でも、なんか……)



 嫌な感じがする。



(……ってちょっと待てよ、あいつは妖祓いの名家で、この心霊スポットに来たっつー事は……もしや、俺に戦わせようとしてんのって、人間じゃなくて幽霊ってことか?!)



 冗談じゃねぇ! と辺りを見回すと、目の前にいたはずの流風が校舎に入ってくのが見えた。



「?! ちょ、おい! 待てよ! あぶねーだろ1人で先に行くな!」









 校舎の中は見た目通りそれほど汚れてはいなかった。

 ただ人が立ち入らないとこうなるのか、という見本のように埃っぽい。


 建物自体は朽ちていないが、木造の床が歩くたびにギシギシと音を立てた。


 階段を確かめるように登っていく流風の後を着いていく。



「ああ、良かった。意外と綺麗ですね」


「……あ? ああ」



 気もそぞろで答える龍之介。



(さっきから視線と寒気がする……)



 ここに来た目的も聞けぬまま勢いで着いてきてしまった事を今更だが龍之介は後悔していた。



(色々確認してから着いてこりゃ良かった……)



 なんかもう1人じゃ後戻り出来る気がしない。幽霊云々もそうだが、流風が黒銀の連中と鉢合わせする事を龍之介は心配していた。



(今はいなくても、黒銀の奴らが来ないとも言いきれないしな……もしコイツが鉢合わせでもしたら、1人で勝てるわけねーし)


(どうする? 引きずってでも帰るか? いやでもビビってるって思われたら俺の沽券にかかわるし、何よりコイツには一応借りが……!)



 1人悶々と頭を抱える龍之介。


 その時だった。



『ふふふ』


『あはははは』


『クスクスクスクス』



 何処からか幼い子どもの笑い声が聞こえた。

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