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「先週の金曜な、黒銀の奴と揉めへんかった?」


「……先週、黒銀……ああ。ピンク頭の男ならワンパンしたぞ」



 少し考える素振りをして、龍之介が即答する。

 その回答にあちゃーと清洲先生が頭を抱えた。



「ソイツがどうもボンボンで、親がお偉いさんらしくてな。被害届出すだ出さんと警察になんや言うとるらしいんや」



 不機嫌そうに黙って聞いている龍之介。



「……で、だ。単刀直入にいうと、退学になりそうなんやわ」


「はぁ? 何で俺が! あの変態ヤロー、女子に後ろから抱きつこうとしてたんだぞ?」


「……そら変態やわ」


「だろ? 俺は悪くない。じゃあな」


「待て待て待て待て! お前の言うてる事は恐らく本当やろうが、抱きつこうとしてたっていう証拠がないやろ? 未遂であることを証明出来ひんやろ!?」


「襲われるまで見てろってか?」


「そうは言うてへん。あのな、やり過ぎなんや。相手顔ボコボコやったと。何でそこまでやったん?」



 ああいうやつは未遂を防いだ所で、またターゲットやタイミングや場所を変えて繰り返すだけだ。

 だから一回痛い目に合わないとやめない。



(合った所でやめるかわからないけど)



 ましてタイミング良く警察がいる訳でもない……だから龍之介はあえてボコボコにしてやったのだ。



「……」



 でも言ったところで全部理解されるはずがないし、やった事は事実だと龍之介は黙った。



「……あのな、鬼塚。お前が家の為に必死でバイトしとんのも、曲がった奴が許せんだけなのも知っとるけどな、自分の能力やキャパシティっちゅうんか? そーいうのを超えた優しさはな、自分を追い詰めるだけやぞ」



 そんなのわかってる。

 わかってるけど、何か出来るのが自分しかいなかったら、やるしかないだろう。



(本当なら俺だって、誰かに……)



 情け無い考えが一瞬あたまをよぎりブンブンと頭を振る。



「……わかってるっての」



 ブスッと口が微妙にとんがる姿を見て、清洲先生は絶対納得してへんなコイツ、と思った。



「ま、詳しい話は後で校長先生からあるで、校長室で待っとき」



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