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こんなテンプレはいらない
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岩だらけの地帯を抜けると、草原地帯だった。
街道は遠くに見える森の中を、突き抜ける様に続いている。
ムックを仲間に加えたムサシ達一行は、迷宮都市ボルデルへ向け歩き続けていた。
ムサシ達にムックが加入した効果は絶大だった。
2メートルを超える魔物。ロックリザードに襲われた時、ムックが押さえるだけで、ロックリザードは動けなくなった。後は誰かがトドメをさす簡単なお仕事だ。
お陰で、ムックを始めムサシ達のレベルアップも捗り、フランやマーティンの存在進化が見えて来た。
ただ、ストーンゴーレムのムックは、その巨体故に、常に召喚して街道を連れて歩けなかった。
ムサシがマーティンと並んで街道を歩いていると、後ろから馬車に走る音が聞こえて来た。
邪魔にならない様に、街道を横にズレて馬車が通り過ぎるのを待つ。
馬車がムサシ達を追い越して行く。
ムサシとマーティンは街道に戻ると、再び歩き始める。
ムサシ達を追い越した馬車が、森の近くに差し掛かった時、森から複数の人間が現れ馬車を止めた。
「マスター、おそらく盗賊と思われます。
どうされますか?」
マーティンの問いかけは、ムサシに人間を相手に戦えるのかと、確認していると理解した。
「マーティン、急ごう!」
ムサシはそう言うや否や走りだす。
ムックに手伝って貰い、レベルアップしたムサシの身体能力は、ユニークスキル【魔物との絆】で加算され、上昇したステータスも含めると、人の域を超え始めていた。
馬車の周りでは、護衛の冒険者と盗賊達の戦闘が始まっていた。
盗賊達は10人以上いるが、冒険者の人数は3人しかいない。
盗賊達の中には、弓を使う者も混ざっている。
ムサシが馬車の近くにたどり着いた時、冒険者の最後の一人が血しぶきをあげて倒れる。
ムサシは、馬車の側にムックを召喚する。
『GUOOOOOーー!!』
魔法陣からストーンゴーレムが、雄叫びを上げて現れる。
「なっ!ストーンゴーレム!」
「どこから!」
ムックが腕を振ると盗賊が吹き飛ぶ。
体がくの字に折れまがり飛んで行く。
矢が射かけられるが、表面にかすり傷が出来るも、直ぐにそれも消える。
「なっ!スケルトンだと!」
ムックの影から飛び出した、マーティンが問答無用で、ショートソードの二刀流で斬りかかる。
叫んだ盗賊の喉が斬り裂かれ、大量の血を噴き出し斃れる。
ムサシの手からフランが跳び出し、盗賊を頭から包み込む。
瞬時に人ひとりを覆える大きさに変化したフランが、盗賊の全身を呑み込み、もがく盗賊が動かなくなるのは直ぐだった。
動揺する盗賊に、メイスを振り下ろすムサシ。
マーティン達のお陰で加算されたステータスで、ムサシの身体能力は高いが、そもそも戦いがシロウト同然なので、不意打ちも平気で使う。
ムサシが振るったメイスが盗賊の頭に当たり、その手に人間を潰す感触が伝わる。
「てめぇ!」
ムサシに気付き斬りかかろうとする盗賊が、グシャという音を立てて、バスケットボール大のムックの拳に潰される。
ガキッ、ムックに斬りかかり剣が弾かれた盗賊を、その背後からメイスを叩きつける。
叫び声を上げて倒れる盗賊を確認すると、次の相手を探す。
そこでやっとその場に動く者が、自分達以外いない事に気がつく。
そしてムサシは、自分の手が震えている事に気がつく。
同時に吐き気が込み上げるが、何とか我慢する事が出来た。
「マスター、生存者の確認を!」
「あっ、あゝ」
マーティンに声を掛けられて、再起動する。
倒れている冒険者を確認しようとして、ムサシの足が止まる。
「……なっ!ヒューイ?!」
血塗れになり、無残に倒れていた冒険者の一人は、ムサシと初心者講習で一緒だったヒューイだった。
「まさか!」
慌てて残りの二人を確認する。
「ドルジ!」
人族にしては大柄なその体躯、装備している大盾は、間違いなくドルジだった。
「マスター、こちらの女性はまだ息があります!」
マーティンの言葉に、ムサシは駆け寄ると、相手を確認する前にヒールを掛ける。
「ヒール!」
一度のヒールでは足りないと、ムサシは何度もヒールを掛けていく。いつの間にか、フランも側でヒールを掛けていた。
ムサシとフランの魔力が枯渇しかけた頃、ようやく容態が安定する。
「もう大丈夫でしょう」
そこで緊張の糸が切れその場に尻餅をつくが、力を振り絞り、ヒューイとドルジのもとへ近付く。
「彼等は、お気の毒ですが……」
ムサシは異世界に来て、始めて知り合いの死に直面して動揺を隠せない。
やたらとムサシにキツく当たって来たヒューイ。それもアンナが好きだったからだろうと思うと何故か憎めなかった。
寡黙で真面目なドルジ。大きな体の優しい少年だった。
前世での年齢で考えれば、自分の子供でもおかしくない歳頃の少年達の死に、ムサシの頬を自然と涙が流れ落ちる。
たった三日一緒に行動しただけだが、それでもムサシがこの世界に来て、一番濃く接した人物には間違いなかった。
「マスター、馭者の男性も商人も駄目でした」
馬車の側に二人の男性が血塗れで倒れていた。
ムサシがマーティンと死体の確認をしていると、フランから声が掛かった。
『マスター!お姉さん起きたよー!』
フランがアンナの意識が戻った事を知らせる。
ムサシは急いてアンナに駆け寄る。
「アンナ!分かるか!」
「……ムサシ君?……はっ、そうだ盗賊が、ヒューイとドルジは!」
ムサシは首を横に振る。
「……っ、ヒューイ!ドルジ!」
アンナが必死に起き上がろうとするのを、ムサシは手を貸して、ヒューイとドルジの元へ連れて行く。
「うぅぅぅ~~」
二人の遺体にすがりついて泣き崩れるアンナ。
「マスター、息のあった盗賊からアジトの場所を聞き出して起きました。
あと、盗賊の装備やお金は纏めて起きました」
「死体の始末をムックとマーティンで頼めるか」
「分かりました。一応、ギルドカードを回収して起きます」
マーティンが盗賊の死体処理に向かう。
ムサシはアンナの側へ行く。
「うぅぅぅ、ヒ、ヒューイが、迷宮都市へ行こうって言ったの。迷宮で一攫千金を目指すって」
その後、アンナが落ち着くのを待って、ヒューイとドルジを埋葬する事にした。
街道から離れ、見晴らしの良い丘の上に、ムックに穴を掘って貰い、埋葬して大きめの石を置き、二人のお墓にした。
ついでと言っては悪いだろうが、商人と馭者の埋葬もする。
「さて、アンナはこれからどうする?
俺は、迷宮都市ボルデルへ行く途中だったんだけど、故郷に帰る?」
「……あのね、私とヒューイとドルジは、同じ孤児院で育った孤児なの。
孤児院出身の私達に、成人して仕事なんて冒険者位しか選べなかったの。
もう、私には帰る場所も無いわ……」
「……なら俺と一緒に来るか?」
「いいの?ムサシ君の足手まといにならない?」
「大丈夫だよ。俺には頼もしい仲間がいるから」
ムサシが、そう言ってマーティン達を見る。
「スケルトンとゴーレムが増えたんだね。でも、ゴーレムってテイム出来たかしら」
「実は俺、魔物使いじゃないんだ。俺は召喚術士なんだ」
「召喚術士、そうなんだ。珍しい職業だね」
「マスター、そろそろ出発しましょう」
街道脇に寄せていた馬車を取りに向かう。
ただ、馬車に残る商品が想像以上に問題だった。
「奴隷商人だったのかよ」
「そうなの、迷宮都市へ売られて行く途中だったみたい。……その、言いにくいけど、売れ残って迷宮へ潜る冒険者用のポーター用に売ろうとしたのね」
馬車の中に居たのは、小学生位の女の子と5歳位の女の子の姉妹だった。
本当に姉妹かどうかは、分からないが、同じ特徴を持つことは見て取れた。
「獣人族か」
姉妹は猫の耳と尻尾を持つ猫人族だった。
汚れてボロボロの貫頭衣を着せられ、耳や尻尾も汚れてくすんでいる。
姉妹は今にも泣きそうな顔をして、不安そうにムサシ達を見ていた。
それはそうだろう。
ムサシとアンナはまだしも、スライムにスケルトンとストーンゴーレムを見れば、泣きださないだけ偉いとさえ思う。
「マーティン、馭者出来る?」
「お任せ下さい」
「じゃあ、ボルデルへ向かおう」
ムサシはムックを送還すると、フランを抱き上げて馬車に乗り込む。
「では、出発します。
ただ途中で盗賊のアジトに寄りましょう」
盗賊のアジトへ寄るのは決定事項なようだ。
マーティンが馬車を操り、街道をボルデルへ向け走り始めた。
街道は遠くに見える森の中を、突き抜ける様に続いている。
ムックを仲間に加えたムサシ達一行は、迷宮都市ボルデルへ向け歩き続けていた。
ムサシ達にムックが加入した効果は絶大だった。
2メートルを超える魔物。ロックリザードに襲われた時、ムックが押さえるだけで、ロックリザードは動けなくなった。後は誰かがトドメをさす簡単なお仕事だ。
お陰で、ムックを始めムサシ達のレベルアップも捗り、フランやマーティンの存在進化が見えて来た。
ただ、ストーンゴーレムのムックは、その巨体故に、常に召喚して街道を連れて歩けなかった。
ムサシがマーティンと並んで街道を歩いていると、後ろから馬車に走る音が聞こえて来た。
邪魔にならない様に、街道を横にズレて馬車が通り過ぎるのを待つ。
馬車がムサシ達を追い越して行く。
ムサシとマーティンは街道に戻ると、再び歩き始める。
ムサシ達を追い越した馬車が、森の近くに差し掛かった時、森から複数の人間が現れ馬車を止めた。
「マスター、おそらく盗賊と思われます。
どうされますか?」
マーティンの問いかけは、ムサシに人間を相手に戦えるのかと、確認していると理解した。
「マーティン、急ごう!」
ムサシはそう言うや否や走りだす。
ムックに手伝って貰い、レベルアップしたムサシの身体能力は、ユニークスキル【魔物との絆】で加算され、上昇したステータスも含めると、人の域を超え始めていた。
馬車の周りでは、護衛の冒険者と盗賊達の戦闘が始まっていた。
盗賊達は10人以上いるが、冒険者の人数は3人しかいない。
盗賊達の中には、弓を使う者も混ざっている。
ムサシが馬車の近くにたどり着いた時、冒険者の最後の一人が血しぶきをあげて倒れる。
ムサシは、馬車の側にムックを召喚する。
『GUOOOOOーー!!』
魔法陣からストーンゴーレムが、雄叫びを上げて現れる。
「なっ!ストーンゴーレム!」
「どこから!」
ムックが腕を振ると盗賊が吹き飛ぶ。
体がくの字に折れまがり飛んで行く。
矢が射かけられるが、表面にかすり傷が出来るも、直ぐにそれも消える。
「なっ!スケルトンだと!」
ムックの影から飛び出した、マーティンが問答無用で、ショートソードの二刀流で斬りかかる。
叫んだ盗賊の喉が斬り裂かれ、大量の血を噴き出し斃れる。
ムサシの手からフランが跳び出し、盗賊を頭から包み込む。
瞬時に人ひとりを覆える大きさに変化したフランが、盗賊の全身を呑み込み、もがく盗賊が動かなくなるのは直ぐだった。
動揺する盗賊に、メイスを振り下ろすムサシ。
マーティン達のお陰で加算されたステータスで、ムサシの身体能力は高いが、そもそも戦いがシロウト同然なので、不意打ちも平気で使う。
ムサシが振るったメイスが盗賊の頭に当たり、その手に人間を潰す感触が伝わる。
「てめぇ!」
ムサシに気付き斬りかかろうとする盗賊が、グシャという音を立てて、バスケットボール大のムックの拳に潰される。
ガキッ、ムックに斬りかかり剣が弾かれた盗賊を、その背後からメイスを叩きつける。
叫び声を上げて倒れる盗賊を確認すると、次の相手を探す。
そこでやっとその場に動く者が、自分達以外いない事に気がつく。
そしてムサシは、自分の手が震えている事に気がつく。
同時に吐き気が込み上げるが、何とか我慢する事が出来た。
「マスター、生存者の確認を!」
「あっ、あゝ」
マーティンに声を掛けられて、再起動する。
倒れている冒険者を確認しようとして、ムサシの足が止まる。
「……なっ!ヒューイ?!」
血塗れになり、無残に倒れていた冒険者の一人は、ムサシと初心者講習で一緒だったヒューイだった。
「まさか!」
慌てて残りの二人を確認する。
「ドルジ!」
人族にしては大柄なその体躯、装備している大盾は、間違いなくドルジだった。
「マスター、こちらの女性はまだ息があります!」
マーティンの言葉に、ムサシは駆け寄ると、相手を確認する前にヒールを掛ける。
「ヒール!」
一度のヒールでは足りないと、ムサシは何度もヒールを掛けていく。いつの間にか、フランも側でヒールを掛けていた。
ムサシとフランの魔力が枯渇しかけた頃、ようやく容態が安定する。
「もう大丈夫でしょう」
そこで緊張の糸が切れその場に尻餅をつくが、力を振り絞り、ヒューイとドルジのもとへ近付く。
「彼等は、お気の毒ですが……」
ムサシは異世界に来て、始めて知り合いの死に直面して動揺を隠せない。
やたらとムサシにキツく当たって来たヒューイ。それもアンナが好きだったからだろうと思うと何故か憎めなかった。
寡黙で真面目なドルジ。大きな体の優しい少年だった。
前世での年齢で考えれば、自分の子供でもおかしくない歳頃の少年達の死に、ムサシの頬を自然と涙が流れ落ちる。
たった三日一緒に行動しただけだが、それでもムサシがこの世界に来て、一番濃く接した人物には間違いなかった。
「マスター、馭者の男性も商人も駄目でした」
馬車の側に二人の男性が血塗れで倒れていた。
ムサシがマーティンと死体の確認をしていると、フランから声が掛かった。
『マスター!お姉さん起きたよー!』
フランがアンナの意識が戻った事を知らせる。
ムサシは急いてアンナに駆け寄る。
「アンナ!分かるか!」
「……ムサシ君?……はっ、そうだ盗賊が、ヒューイとドルジは!」
ムサシは首を横に振る。
「……っ、ヒューイ!ドルジ!」
アンナが必死に起き上がろうとするのを、ムサシは手を貸して、ヒューイとドルジの元へ連れて行く。
「うぅぅぅ~~」
二人の遺体にすがりついて泣き崩れるアンナ。
「マスター、息のあった盗賊からアジトの場所を聞き出して起きました。
あと、盗賊の装備やお金は纏めて起きました」
「死体の始末をムックとマーティンで頼めるか」
「分かりました。一応、ギルドカードを回収して起きます」
マーティンが盗賊の死体処理に向かう。
ムサシはアンナの側へ行く。
「うぅぅぅ、ヒ、ヒューイが、迷宮都市へ行こうって言ったの。迷宮で一攫千金を目指すって」
その後、アンナが落ち着くのを待って、ヒューイとドルジを埋葬する事にした。
街道から離れ、見晴らしの良い丘の上に、ムックに穴を掘って貰い、埋葬して大きめの石を置き、二人のお墓にした。
ついでと言っては悪いだろうが、商人と馭者の埋葬もする。
「さて、アンナはこれからどうする?
俺は、迷宮都市ボルデルへ行く途中だったんだけど、故郷に帰る?」
「……あのね、私とヒューイとドルジは、同じ孤児院で育った孤児なの。
孤児院出身の私達に、成人して仕事なんて冒険者位しか選べなかったの。
もう、私には帰る場所も無いわ……」
「……なら俺と一緒に来るか?」
「いいの?ムサシ君の足手まといにならない?」
「大丈夫だよ。俺には頼もしい仲間がいるから」
ムサシが、そう言ってマーティン達を見る。
「スケルトンとゴーレムが増えたんだね。でも、ゴーレムってテイム出来たかしら」
「実は俺、魔物使いじゃないんだ。俺は召喚術士なんだ」
「召喚術士、そうなんだ。珍しい職業だね」
「マスター、そろそろ出発しましょう」
街道脇に寄せていた馬車を取りに向かう。
ただ、馬車に残る商品が想像以上に問題だった。
「奴隷商人だったのかよ」
「そうなの、迷宮都市へ売られて行く途中だったみたい。……その、言いにくいけど、売れ残って迷宮へ潜る冒険者用のポーター用に売ろうとしたのね」
馬車の中に居たのは、小学生位の女の子と5歳位の女の子の姉妹だった。
本当に姉妹かどうかは、分からないが、同じ特徴を持つことは見て取れた。
「獣人族か」
姉妹は猫の耳と尻尾を持つ猫人族だった。
汚れてボロボロの貫頭衣を着せられ、耳や尻尾も汚れてくすんでいる。
姉妹は今にも泣きそうな顔をして、不安そうにムサシ達を見ていた。
それはそうだろう。
ムサシとアンナはまだしも、スライムにスケルトンとストーンゴーレムを見れば、泣きださないだけ偉いとさえ思う。
「マーティン、馭者出来る?」
「お任せ下さい」
「じゃあ、ボルデルへ向かおう」
ムサシはムックを送還すると、フランを抱き上げて馬車に乗り込む。
「では、出発します。
ただ途中で盗賊のアジトに寄りましょう」
盗賊のアジトへ寄るのは決定事項なようだ。
マーティンが馬車を操り、街道をボルデルへ向け走り始めた。
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