幻獣使いの英雄譚

小狐丸

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学院編…三年生

休日のピクニック

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 晴れ渡る空を大小二体の魔物が飛んでいる。漆黒のグリフィンのルドラと青龍の子供のエリンが仲良く並んで飛んでいる。その下に巨大な狼ヴァイスと巨猿ジーブルが競うように走っている。その少し後ろを鋼鉄の鎧のゴーレム馬、アルスヴィズを駆るバルクが続く。

 やがて草原に降りたちルドラからユキトとサティスが降りる。

 やがて、追いついたヴァイスの背中からティアが降りると、ジーブルがそっとイリスを地面に降ろす。最後にバルクがアルスヴィズから降りると、アメリアを抱きあげ降ろした。

「ルドラ、エリンのこと頼むな」

「クルルゥ!」

 ユキトがルドラに声をかけると、任せとけと言わんばかりに返事をする。

 ユキトは今日は学校も休みなので、朝からピクニックがてら皆んなを連れて街の外へ出て、ついでにエリンのレベルアップを兼ねて草原へ来ていた。本当は人数が多いのでアスカロンに乗って来る予定だったが、ドノバンが内装の改造をすると言うので、ルドラ達に乗って来ることになった。

「あまり遠くに行っちゃダメだよ」

 ユキトがルドラとエリンに声を掛ける。

「キュー!」

 今や大型犬よりもひと回り大きく成長したエリンが、分かってるとひと鳴きすると、ルドラと連れだって狩りをする為に飛んで行った。

 後で仲間外れにしたとか五月蝿そうなのでアグニを召喚しておく。

『やっと、呼び出しおったか。もっと我を呼び出すことを要求するぞ』

「アグニは、自分の身体の大きさを考えろよ。その巨体が人目につく場所で簡単に呼び出せるわけないだろう」



 サティスとイリスが大きめの布を敷いて、お茶の準備をする。ユキト達はイリスとティアが用意したお菓子を食べ、サティスの淹れたお茶を飲みながら、久しぶりに何もしない時間を楽しんでいた。

「はぁ~、寝むくなってきちゃたよ」

「少しお休みになってください」

 ユキトがお茶を飲み終えると、サティスがポンポンと膝を叩くので、遠慮なく枕にして少し眠ることにした。

 横では、ヴァイスとジーブルがアメリアの相手をして遊んでくれている。バルクは、アルスヴィズに乗って草原を走り周囲を警戒している。ヴァイスやジーブルが居るので、魔物が側に寄って来ることはないのだから、バルクはアルスヴィズに乗りたいだけだろう。アグニもその巨体を丸めて眠っている。





 ユキト達から少し離れてルドラとエリンはいま、オークの群れを狩っていた。

「キューーー!!!!」

「クルルーーーッ!!!」

 エリンがオークの喉に噛みつき引き千切る。
 ルドラの爪が嘴がオークを葬っていく。

 ルドラの首にポーチが掛けられている。ポーチは、ユキトが作ったマジックバックだ、ユキトのアイテムボックスと比べると収納する容量は、随分と少ないのだが、それでも倉庫位の容量がある。そのポーチにルドラが器用に狩った獲物を収納していく。




「スピ~、スピ~、スピ~」

 身体に感じる重みにユキトが目を覚ますと、可愛らしい寝息を立ててアメリアがユキトに抱きついて寝ていた。

「ユキト様、申し訳ありません」

 イリスが申し訳なさそうに謝る。

「構わないよ。アメリアちゃんも遊び疲れたんだろう、寝かせて置いてあげよう。ルドラとエリンもまだ帰って来てないし」

 寝ているアメリアの頭を撫でながらユキトは、ルドラ達が戻るのを待つことにした。




 あれから幾つかの魔物の群れを狩ったルドラとエリンは、狩りの途中で見つけた川で喉を潤していた。

「クルルゥ!」

「キュー!」

 ルドラから、そろそろ帰ろうとエリンに声を掛けるとエリンも頷いて返事をする。



 その頃、ルドラ達が戻って来るのを察知したユキトがイリスとティアに昼御飯の準備を頼むとユキトの上で気持ち良く寝ているアメリアを優しく揺する。

「アメリアちゃん、お昼御飯の準備をするから、そろそろ起きようか」

「う~~ん」

 ユキトは、伸びをしてから目をこすり起きたアメリアを降ろすと、サティスと一緒にイリスとティアを手伝い食事の準備を始める。アメリアもユキトがアイテムボックスからテーブルや椅子を出すと、椅子を並べたりお手伝いをしている。

 ユキトが釜戸を土魔法で造り、火を起こしてアイテムボックスから鉄板を出してのせる頃になると、ルドラとエリンの声が聞こえてきた。

「クルルゥー!」

「キューー!」

 ユキト達が居る側に、ルドラがふわりと降りたち、エリンがユキトの胸に飛び込んで来る。ユキトは咄嗟に受け止めたエリンを、ひとしきり撫でて降ろすと、ルドラも撫でてねぎらう。

「お疲れさん。おっ、かなり一杯狩ったみたいだね」

 ルドラからポーチを受け取ると中を確認して、ユキトがルドラとエリンをねぎらう。早速、オークを何体か出してルドラとエリンに食べさせる。ヴァイスとジーブルにも何体か出しておく。

「おっ、レイジングホースがあるじゃないか。僕等はこれでいいか」

 ユキトは、レイジングホースを出してサティスと一緒に解体していく。解体された肉をイリスとティアが受け取り、鉄板の上で焼いていく。

「お肉!お肉!お肉!」

 早くも、ひとりテーブルに着いてフォークとナイフを持ったアメリアが、お肉の唄を歌って肉が焼けるのを待っている。

「はい、アメリアちゃん。沢山あるから一杯食べてね」

「おいし~い!」

 アメリアの喜ぶ顔を見てユキトも嬉しくなる。焼けた肉を皿にのせてアメリアに渡すと、ユキト達の分もどんどん焼いていく。

 皆んなで昼食を食べた後、ゆっくりとお茶を飲んでくつろぐ。ユキトもアメリアを膝に乗せてノンビリお茶を飲む。アメリアはイリスが焼いたクッキーを食べるのに夢中だ。ゆったりとした時間が過ぎて行く。

「たまには、こんなノンビリした日も良いね」

『主は忙しすぎますからな、休養も必要だと思いますが』

 ユキトが呟くと、ジーブルがユキトに、ねぎらう言葉をかける。

『確かに、主は仕事を押しつけられる事が多いですからな』

 ヴァイスは遠まわしに、フィリッポス先生の事を非難する。確かにフィリッポス先生は容赦無いもんな。



 陽の光が黄色くなってきて、風が肌寒く感じるようになった頃。

「さあ、そろそろ帰ろうか」

 ユキトが声を掛けると皆んなで片付けを始める。ユキトはアグニを送還して、帰る方法を考える。

 転移して帰るのは簡単だけど、帰りも皆んなでゆっくり帰ろうかな。

「ヴァイス、ティアをお願い。ジーブルはイリスを……」

 ユキトが指示を出していると、アメリアがユキトに抱きついて来る。

「アメリアは、ユキトお兄ちゃんといっしょがいいの!」

 うーむ、アメリアちゃんはバルクに頼もうと思ってたけど、まあいいや。バルクが拗ねそうだけどね。

「分かったよ、ルドラに一緒に乗せてもらおう。おいで、アメリアちゃん」

 アメリアを抱きあげルドラに乗せると、ユキトとサティスも乗り込む。

「さあ、ゆっくり帰ろう」

 ユキト達は、ゆっくり街へ帰りながら、こんな平和な日々が続いてくれれば良いのにと思うのだった。
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