幻獣使いの英雄譚

小狐丸

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その後の世界

集落の再生

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 ユキトがこの大陸へ降り立ち一日が過ぎた。

 ユキトは一度ロンバルドへ転移で戻り、小麦の種籾と小麦粉を大量に購入。同じく武具屋で剣、盾、槍、弓と矢を買い込んだ。
 次に雑貨屋で農作業に使う鍬や鋤などを購入して、再び転移で戻る。


「ユキトお兄ちゃーん!」

 ミルモとすっかり仲良くなり、一緒に遊んでいたアメリアが、ユキトを見つけて走り寄る。

 高レベルの身体能力でジャンプするとユキトにしがみつく。

「良い子にしてたかい」

「うん!アメリア良い子にしてたよ!」

 ユーカリの木にしがみつくコアラの如く、ユキトにしがみつくアメリアの頭を撫でる。

「あっ!アメリアちゃん良いな~」

 ミルモもユキトの元に走って来た。
 ユキトはミルモも抱きあげる。

「やったー!アメリアちゃんと同じだー!」

 二人を抱いて集落の広場へ行くと、集落の住民が集まっていた。

「ちょうど良かった。畑に植える麦を持って来たので、皆さんで植えつけて下さい」

 そう言ってユキトが、植える為に持って来た麦を、その場に出した。

 他にも色々な野菜の種を出して行く。

「当座の食糧が必要でしょうから、小麦粉も持って来たので、倉庫を造って入れておきます」

 ユキトはそう言うと、集落の端に土魔法で倉庫を一瞬で造り上げる。
 倉庫の地面を石に錬成して、浄化魔法をかける。その上に小麦粉の入った袋を積み上げていく。

 ユキトは、小麦を収納した倉庫の横に、もうひとつ倉庫を造り、魔石を取り出し即席で冷蔵倉庫を造り出す。
 冷蔵倉庫には、ジーブル達が狩って来た、魔物や野生動物の肉を保存しておく。

 ユキトが、倉庫に食糧を保管して出て来ると、集落の長が待っていた。

「ユキト様、何から何まで、ありがとうございます」

 今にも土下座しそうな勢いで頭を下げる。

「知り合ったのも何かの縁でしょうし、集落が成り立つ位にまではお手伝いします」

「それで、厚かましいお願いなのですが、近隣に同胞の集落が存在するのか、調べて貰えないでしょうか」

 長の言いたい事は良く分かった。
 この規模の集落だけでは、直ぐに人口が限界を迎える。血が濃くなり過ぎる。

「どちらにしても、この大陸は一度調査する積りでしたから、周辺に集落が存在するのかも含めて調べてみます」

 ユキトは早速、バルクを呼ぶ。
 バルクには周辺の探索を任せていた。その報告を聞こうと思ったのだ。

「バルク!」

 ユキトの声を聞き、直ぐにバルクが駆けつける。

「お呼びですか?」

「あゝ、周辺の探索を任せていただろう。何か報告はないかと思ってね」

「この集落の周辺ですが、半径20キロメートルには、人の住む集落は見つけられませんでした。
 ただ無人の廃墟となった集落は幾つかありましたから、探索範囲を広げれば、もしかすると人の集落が見つかるやもしれません」

「ありがとう。一度俺もルドラで探索してみるよ」

 ユキトが偶然見つけて救う事になった、この集落は人族の集落だったが、この大陸に人族以外も存在していたらしい。
 現在、その他種族が生存しているのかは、分からないらしいが、身体能力の高い獣人族なら集落を築いているかもしれない。

 エルフも魔法が廃れた大陸とはいえ、精霊魔法なら使えるのでは、とサティスに聞いてみたのだが、精霊を視れる精霊視を持つエルフは少ないらしい。ただ、精霊との契約の仕方は、代々受け継いでいるので、一定の年齢になると精霊と契約し、精霊魔法を教えて貰えるそうだ。

 魔法適正に長けたエルフが、魔法に頼れず生きるのは大変だろう。
 それでもこの大陸でも、エルフは森に住んでいるらしいが、森の魔物との生存競争は激しいらしい。

 ユキトは集落を見渡し、暫くはこの集落の人達だけでやって行けると判断する。
 後はこの先、長期的には他の集落との交流が無ければ先細るだけなので、その辺りを解決しないといけない。

 自国の人間でもない人達に、何故そこまでと人には言われそうだが、ミルモの様な小さな子供が、平穏に生きる事を選べない状況は見過ごせなかった。

 ユキトは、我ながらバカだと思いながら、ルドラを呼び出し周辺の探索に向かう。
 ユキトがルドラに跳び乗ると、何時の間にかアメリアも乗って来る。それをミルモが羨ましそうに見ている。

「ユキトお兄ちゃん、ミルモちゃんもダメ?」

 アメリアにお願いされて、ユキトが断れる訳もなく、ユキトはルドラにアメリアとミルモを乗せて飛び立った。
 
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